【レポート】講演討論会「日仏イノベーション 総括と展望」

「ハイテク大国」でもあるフランス

2月9日、日仏会館ホールにおいて「日仏イノベーションの統括と展望」と題したセミナーが開かれました。2015年10月、日仏両国首相によってキックオフされた「日仏イノベーション年」。これを受け、昨年はさまざまな活動が行われ、12月6・7日に大阪で開催された「日仏イノベーション・イヤー・フォーラム」がその集大成となりました。今回は国を挙げてのイノベーション交流の総括と展望について、在日フランス大使館ピエール・ムルルヴァ経済公使をはじめ、独立法人産業研究所の中島厚志理事長、さらには日仏のスタートアップ企業3社にもご登壇いただき、新技術やイノベーションの成功事例もまじえながら、貴重なお話をうかがいました。

最初の登壇者は、ピエール・ムルルヴァ氏。イスラエルでの在職経験もあるムルルヴァ氏は、自身の豊富な経験も踏まえながら、2015年10月に東京の日本科学未来館でスタートした「日仏イノベーションイヤー」が持続的な取り組みになっていくためのアイデアなどを披歴されました。
2016年に両国が開催したセミナーの内容は、テクノロジーのイノベーション、AI、水素社会など多岐にわたるものであり、政府関係者だけではなく、地方自治体の代表も参加した点が特筆されます。さらにはスタートアップ企業どうしのマッチングや日仏間の引き合わせも行われ、非常に充実したものとなったのですが、「2016年で終わらせることなく、将来的に継続させていくことが重要」と力説。また、クロージングを大阪で開催した理由については、「私たちの力を東京だけに集中せず、地方どうしの出会いの場を創出すること。そして、関西はポテンシャルが高いということもあり、もっと多くの可能性が広がるのではと考えたから」と説明されました。日本の地方自治体が参加することで、フランスの地方自治体も日本へ来てくれ、そこから新たな出会いもあったようです。
一部には「政治的なイベントに過ぎず、ビジネスにつながらないのでは」との声もあったものの、「イスラエルでもオランド大統領とシモン・ペレス大統領(当時)が中心となってオープニングをやり、2つの大きな効果が得られました。そのコンセプトを日本にも広げたいと思ったのです」とイスラエルでの経験を例示し、この点をきっぱりと否定。大きな効果とは「典型的なフランスに対するイメージの打破」と「きっかけ作り」を強調しました。
私たちがフランスと聞いて浮かべるイメージは、主にグルメ、ファッション、アートなど文化的な側面のものが多いのではないでしょうか。しかし、実際には世界有数の「ハイテク大国」でもあり、そのことを広く周知することができたといいます。もうひとつの「きっかけ作り」には、ビッグイベントを通して、スタートアップ企業や研究者が、市長や知事といった「ふだんはなかなか会えないVIP」と直接に会話することができるというメリットが。実際、日仏の同じ分野の研究者が交流を深めたそうです。
今回のイベントは、いわば「フレンチテックの日本版」。その流れは着実に深化しており、フランスの上場企業50社がインターンシップ制度によって、日本の学生を初めて受け入れるなどの成果を上げています。