初代会長 磯村尚徳からのメッセージ

名誉会長 磯村尚徳設立の当事者と致しましてパリクラブがこれほどの盛況を見ていることは、感無量です。もちろん私の後任の歴代会長、それと理事の皆さん、そして会員の皆さんのご努力によるほか、なんと言っても大使閣下ご夫妻を始めとする大使館の皆さまの物心両面にわたる援助と、そしてまた私どもの母体といってもよい在日フランス商工会議所のたいへんなご援助があったおかげであり、たいへん感謝しております。

創立のころは、どうも日本人はフランスの文化の偉大さに目がくらみ、そのほかの面のすばらしいところにあまり関心がない、それをなんとか改めたいというのが目的のひとつでありました。ところが、私が十年のフランス滞在を終えて帰ってまいりますと、フランスのいわゆるリュクス産業はもう完全に日本に定着しており、たいへんパラドクサルなことに、そのことがまた再び今度は逆にリュクス産業の背後にあるフランス文化への日本の大衆の関心事も失わせております。そろそろパリクラブもまた原点に帰って、文化面にも力を入れていただきたいと思います。

とくに、フランス語でものを言うということは、日本人に最も関心の薄い問題ですが、現在世界の潮流となっている文化の多様性を守るという意味でたいへん重要なことであり、イージーに英語で表現するというような安易な道をとることなく、つたなくてもよいからフランス語で表現しようとしていただきたい。そうすることが必ずやフランス文化の真髄に触れることにつながります。したがって、とくに若いメンバーの方々に向けてですが、ぜひフランコフォニを大事にしてほしいということをお願いして、初代会長としてのつたない挨拶を終わります。

(本文は、2006年5月25日にフランス大使公邸で行われたランデブー・ フランコジャポネの際のスピーチの記録です)