イベントレポート“海苔の美学(おいしさ)とワインとの体験”開催

良い海苔の見分け方とは?

良い海苔というと、黒くてツヤがあって穴がない、というイメージを持つ人も多いですが、久保井会長いわく「全部ウソ」。それは海苔の持つ色素と生育方法に理由があります。

在日フランス商工会議所の会議室をお借りして開催。みなさん熱心に耳を傾けます。

在日フランス商工会議所の会議室をお借りして開催。みなさん熱心に耳を傾けます。

海苔は赤い色素をもつ紅藻類で、ほかにも青、黄色、緑色の色素成分が含まれます。海苔は、赤い色素が多くても青い色素が多くても黒く見えるそうです。潮の満ち引きを利用した昔ながらの伝統的な製法で海苔を育てると、干潮時に乾燥することで赤い色素が作られると同時に、太陽の光によって光合成が進み、うまみ成分が多く作られます。しかし最近では、ずっと海の中に浸けたままの製法で作られることが多く、赤い色素の代わりに青い色素が多くなります。従来の生育方法と比較すると収穫率が5割ほどアップしますが、硬くて黒い、味の薄い海苔に。「現在、市場ではこの二つのタイプが混在していて、見た目では判別がとても難しい。一番いい判別方法はやはり食べてみることです」。

焼くと緑色に変化する訳は?

海苔を光にかざして色の違いを確認。

海苔を光にかざして色の違いを確認。

下半分が焼いた部分。緑色に変色しているのがわかる。

下半分が焼いた部分。緑色に変色しているのがわかる。

海苔の色素にもそれぞれ性質があります。緑の色素は熱に強く水に弱いのが特徴。そのため湿気ると緑の色素が退化して、赤と青の色素が強くなりそれらが混ざった紫色っぽくなります。また赤と青の色素は熱に弱いため、焼くと退化して緑色の色素が残り緑色に変わるのです。色の違いは、光にかざすとよくわかるとのことで、久保井会長は、半分だけ焼いた海苔のサンプルを参加者に配り、みなさん電灯の光にかざして確認。そのあとは 試食して味と食感を比較しました。

最後に、久保井会長は、大森の地場産業として発展した海苔の歴史についても簡単に解説。江戸時代、商業の中心地は浅草で、近隣で採れた海苔を浅草紙職人がシート状の海苔を作っていたそうです。5代将軍綱吉の時代になると、1687年の「生類憐れみの令」によって禁漁になった浅草近隣の漁民が、規制の緩かった大森へ移住して海苔の養殖を始め、それが地場産業へと発展したという説を披露して、久保井会長の講演は終了しました。