【レポート】講演会『フランスはなぜショックに強いのか?』~持続可能なハイブリッド国家

フランス社会の強みと問題点

瀬藤氏と対談した伊藤氏

瀬藤氏と対談した伊藤氏

瀬藤氏の基調講演に続いては伊藤氏に登壇いただき、フランス経済の専門家お二人による活発な意見交換が行われました。伊藤氏は「日本でのヨーロッパに対する関心が非常に高くなっているのですが、関心の高さの理由が必ずしもビジネスチャンスであるとか、理想モデルとしてのヨーロッパ社会ではなく、リスクの源泉としてのヨーロッパという部分になってしまっている状態があります。今回、フランス大統領選挙が象徴した通り、ユーロという通貨、EUという制度が非常に危ういものであり、それが崩壊するのではということが、どうしても人々の脳裏に焼きついてしまう」「リスク視されるヨーロッパのなかで、大きなポイントになっているのが、国家間の格差であって、国家の経済力や所得水準などの格差が狭まるどころか、むしろ広がっています。その原因のひとつが、やはりドイツが強すぎることにあると思います」といった懸念材料を指摘。また、出生率の高さ、生産年齢人口の高い伸びが「先進国のなかでも本来の人口動態の面からみると、非常に成長に有利な立場にある」とする一方で、「なかなか人口要因の有利さを活かしきれていないのが今のフランスではないか。その結果が、なかなか下がらない失業率、とりわけ、若者の失業率が高いところにあるのかなと感じております」との課題点を挙げられました。
失業率についていえば、ドイツを含むドイツ語圏では若年失業率が低いという傾向がみられるとのこと。先の大統領選で、フランスの非エリートとされる階層がルペン候補を支持しましたが、伊藤氏は「エリートではない人たちの教育とか、職業訓練という部分は、弱さとして残っているのではないかと感じました」と、大統領選の感想を述べられていました。

一方、瀬藤氏は「ドイツの人口は減少しており、ドイツが移民大国になった理由はそこにあるわけです。なかなか人口が増えないドイツ、それはやはり女性の地位の低さがかなり大きいと思うのです。製造業はほとんど男性が従事しております。ところが、スーパーマーケットなど第三次産業は、ほとんどがパートタイムの女性。フランスと比べると、男女差別がかなり目立つ労働力の構成になっています」とドイツ社会の問題点を指摘。「フランスは能力に合わせて人を育てている国。ドイツは技術に合わせて人を育てている国」と、このように両国の違いを表現されていました。