【レポート】第8回輝く会「暮らしを守るために知っておきたい世界の海洋環境・地球環境」

土壌汚染の驚くべきデータ

土壌汚染については、驚くべきデータが例示されました。太平洋側(鹿児島)――70%(日本)・18%(中国)、太平洋側(茨城)――62%(日本)・12%(中国)に対し、日本海側(石川)――28%(日本)・33%(中国)・34%(韓国)、日本海側(長崎)――16%(日本)・28%(中国)・51%(韓国)
太平洋側と日本海側で明らかな違いがみられるこの数字は、何を意味しているか分かりますか? 正解は海岸に漂着したペットボトルの内訳です。中国や韓国でポイ捨てされた大量のペットボトルが海流に乗って日本沿岸に運ばれていることを物語るデータですが、これが沖縄だといっそう顕著で、7%(日本)・82%(中国)・12%(韓国)という、にわかに信じがたい数字になっています。他国の土壌汚染が、日本に海洋汚染をもたらしている由々しきケースといえるでしょう。
ペットボトルは浮遊するだけではなく、沈下してしまうものも多いのが厄介なところ。「探査船『しんかい』が、『どこの海でもみられる』と報告しています。1500~2000メートルの深海に落ちていることもあるそうです」とのお話を聞き、ふだん何気なく手にしているペットボトルが、恐ろしいものに感じられました。
日本人はペットボトルをポイ捨てすることが少ないのですが、中国では当たり前の光景です。余談になりますが、筆者は中国で生活していた時期があり、ペットボトル汚染のひどさを度々目にしてきただけに、貴代子氏から示されたデータがリアルに実感できました。海の向こうに住む人たちのモラルに訴えていくしかないのでしょうが、あまりにも倫理観が違うので、現状においては問題解決の特効薬はない気がします……。

モナコはどんな国?

みなさんがモナコに対して抱くイメージは、おそらくお金持ちが集まる高級リゾート地という感じではないでしょうか。環境問題のあとは、モナコの表も裏も知り尽くす貴代子氏が、ガイドブックには書かれていない「モナコ事情」を紹介してくださり、会場が大いに盛り上がりました。
現在のハイソなイメージとは異なり、元々はイタリアのジェノバ公国の分家だった18世紀のモナコは、めぼしい産業がない貧しい小国にすぎませんでした。転機が訪れたのは、1830年頃、シャルル3世の時代です。人気の温泉保養地として知られていたドイツのバーデンバーデンを真似て、カジノ、レストラン、ヨットハーバーなどを備えた「海のリゾート」を作り上げたのです。温泉こそありませんでしたが、以来、モナコは国際的なリゾート地に変貌を遂げ、多くの観光客が集まるようになりました。水資源のないモナコはアルプスから水を買っているのですが、過去にはフランスのドゴールに意地悪され、水をストップされたことも。こうした苦難にモナコ人は一致団結して挑み、勝利を勝ち取ったのです。
こうしたモナコ人の団結力は現在にも受け継がれており、国が行うイベント時には、国民全員が仕事を休んでボランティアとなるそうです。仕事を休める文化が羨ましい気もしますが、これぞ「観光大国」といった徹底ぶりですね。モナコといえばモナコグランプリが有名ですが、これは大公自ら音頭をとって始めたイベント。このほか、1月最終週の国際サーカスコンクールを皮切りに、12月までさまざまなイベントが続き、観光客を飽きさせません。
そんな魅力あふれるモナコも、テロの影響は避けられず、日本人観光客は減少していますが、貴代子氏は「ほとぼりが冷めたら必ず戻ってくるはず」との見解でした。モナコを訪れる機会があれば、「残念ながら、たいていの観光客は素通りしてしまいます」という海洋博物館もお忘れなく。充実した水族館に加え、荘厳な建物、モナコ大公・アルベール1世が収集した至宝の数々、展望台からの眺望など見どころが目白押しです。
最後に貴代子氏だからこそ語れるモナコの裏話も。毎年、4月に華やかなチャリティーイベント「バラの花の舞踏会」が開催され、貴代子氏も参加したことがあるそうですが、「2度と行かない」と決めたといいます。「着飾った女性が集う欲望の世界。虚構の場と感じたので」と、その理由を説明し、冗談まじりに「それがモナコだと思っていただければ」と笑いを誘っていましたが、どんな国にも光と影の部分があるということなのでしょう。とはいえ、貴代子氏のお話を聞き、みなさんモナコへの関心がいっそう強くなったようでした。

モナコの海洋博物館でウミガメと写真に収まるドゥマンジュ教授

モナコの海洋博物館でウミガメと写真に収まるドゥマンジュ教授