【レポート】第8回輝く会「暮らしを守るために知っておきたい世界の海洋環境・地球環境」

汚染が進む地球は「有限」との認識を

冒頭、「地球は無限ではなく有限という認識を持つべき」と切り出した貴代子氏。事実、現在の地球は、大気、海洋、土壌と、空も海も陸も深刻な汚染にあえいでいます。「狩猟時代に環境汚染の問題はありませんでした。灌漑を行った農耕時代から汚染の歴史は始まったのです」という言葉通り、汚染の原因を作っているのが、利便性を追い求める人間の行為であることは疑う余地がありません。
大気汚染については、近年、CO2やPM2.5といった問題が世界的な関心を集めています。貴代子氏によれば、大気汚染の記録は、すでにローマ時代から存在していたとのこと。当時の元凶は薪を焚いた際に発生する煤煙で、9世紀のロンドンでは多くの市民が煙害に苦しみ、13世紀に家庭での石炭の使用を禁止した文献も残っているそうです。そのような大昔から、人間が大気汚染と向き合っていたとは多くの人が知りませんでした。また、20世紀になって誕生した「スモッグ」という言葉は、「スモーク」(煙)と「フロッグ」(霧)を合わせた造語だそうですが、これも語源を知らない人が多いのではないでしょうか。
今の時代、大気汚染というと中国の灰色の空が連想されますが、高度成長期の日本も公害病など大きな代償を払ってきました。「あの頃、第一京浜を通ると、工場の炎で空がオレンジ色に染まっていたのを思い出します。五輪に付随したインフラ整備が進められ、便利で快適な暮らしを享受できるようになった一方で、公害問題が発生したのです。その後、公害健康被害補償法が制定されるなど、規制と反省によって空がきれいになりましたが、本当に当時はひどい状況でした。」と回想されていましたが、中国の黄砂やPM2.5は日本にも大量に飛来しており「対岸の火事」では済まされないので、中国も日本の教訓を参考にし、きれいな空を取り戻してほしいものです。

環境問題について詳しく解説する貴代子氏

環境問題について詳しく解説する貴代子氏

続いてのテーマは海洋汚染。魚食文化が根付いている日本にとって、海洋汚染は特に看過できない問題といえます。「日本の場合は、自主規制が厳しく、みなさんの意識が高いこともあり、官民が一丸となって問題を最小限に抑えています」とのお話を聞き、少し安心しましたが、魚を養殖する時代になり新たな問題も。密植などの要因により、これまではみられなかった魚の病気が増えているのです。高価な天然モノだけを食べればいいという話ではなく、世界的に水産資源が減少するなか、日常的に魚を食べている私たち一人一人が考えていかなければならない問題だと感じました。
「海を守る」意識が高い日本とは対照的に、海外、特に中国では大気汚染だけではなく海洋汚染も悪化の一途をたどっており、黄河、長江の二大河川は「魚の棲めない状態どころか、魚の死骸さえ浮いてこない状態」なのだとか。大気汚染の原因でもある工場の排水などが河川を汚染し、その汚れた水が海に流れ出ているわけで、陸・海・空の負のスパイラルを断ち切らなければ、環境改善は望めません。しかし、中国などの新興国の場合は「日本とは違い、規制はあってないようなもの。改善を期待できないのが現状」と、貴代子氏は憂慮されていました。