イベントレポート 『浦田良一さん(在仏日本人会会長・パリクラブパリ支部長)を囲むデジュネ・デバ』

洗練された共通の味覚が、両思いを長続きさせるコツ。

そして「和食」も、フランス人を魅了するもののひとつとして大きな力を発揮してきているそうです。ユネスコ無形文化遺産となった「和食」ですが、パリの若者たちにはラーメンが大人気。ここでもあのフランス人たちが、ラーメン1杯のために列をつくるですから、フランス暮らしが長い浦田さんこそがびっくりなさっているようです。理由は、パリもやはり物価が高くなった中、サンドイッチにコーヒと同じ金額で、満足感が得られるラーメンが、味はもとより若者たちの胃袋も満足させているからなのだそう。

ヘルシー志向もあり、ラーメン以外にも「和食」はますます見直されていて、最近ではなんとBENTOのメニューも普及しつつあるそうです。パリ日本文化会館は、5、6年前から日本食を教える料理教室も開催していて、募集をかけるとあっという間に定員になってしまうという盛況ぶり。パーティの多いパリでは、食べやすさと美味しさで寿司はもう定番化。海苔を食べるのは、フランスのごく一部の地方だけだったのに、今ではMAKIとして覚えられ人気の食材になっているそう。「フランス人と日本人は、美味しいと感じる味の味覚がかなり似ている」と、浦田さん。そう、「違いがわかる」数少ない国民たち!のようです。食の味覚だけではなく、日本映画が受け入れられるのも、感情の琴線がひびきあうところで共通の部分があったり、時には「日本人でさえわからない微妙な心の動きを、フランス人がわかってしまうという繊細さにびっくりすることがあります」とのこと。映画通の浦田さんをうならせるほど、豊かな感情を持った国民性も、浦田さんがフランスに住むということにこだわる要因のひとつなのかもしれません。

パリ日本人会のこれから

パリの日本人会は、50年の歴史があるそうですが、最近は残念ながらずっと赤字が続いているのだそうです。運営は、会員からの会費でなりたっていますので、個人や企業の数も大きく減っているという時代の流れの中ではやむを得ないようです。当時は、パリに来たら「まず日本人会に入る!」という駆け込み寺的な存在。インターネットのない時代ですから、情報収集はまず日本人会という貴重な場所でした。しかし今は、日本に居ながらにしてインターネットでアパルトマンも見つかるし、いろんな事が簡単に処理できます。そうなると「日本人会は必要なのか?」という疑問につきあたることもあるようですが、実は50年を経た今、新たな活動が必要とされているようです。それは、パリ在住の日本人たちも高齢者が増えてきていて、一人暮らしも多く、孤独になりがち。そういった人たちに集まってもらって、お話したり、相談にのったり、交流の場を提供するという役割。浦田さんたちは、このアクションを「マロニエ会」と名づけて、若者たちのボランティアの参加もよびかけ活動しています。この現象はフランスだけではなく、ヨーロッパ全土での問題になっているそうです。

そして浦田さんは、パリ日本語補習校の校長先生でもいらっしゃいます。経営者がお亡くなりになり閉校になりかけた補習校を、保護者たちの熱い思いから日本人会で活動することになりました。パリ在住になった家庭は、最近の傾向としてインターナショナルスクールに入学させるケースが多いそうですが、「外国に住みながら一番大事なことは、母国語を忘れないこと」と、浦田さん。さまざまな環境の家庭が集まる中、当初は予期せぬ問題もいろいろあったようですが、「教員スタッフたちにも恵まれ、チームワークよく子どもたちのためにがんばっていますよ」と、笑顔でお話になる浦田さん。異国でサポートを必要としている人たちのために、日々活動を続けてくださっています。

今後も、パリクラブパリ支部長としてご活躍くださいます。

今後も、パリクラブパリ支部長としてご活躍くださいます。

フランスで魅力的なのは、若い頃から変わらない映画館通い。年間パスを購入して、時間があれば映画三昧を心ゆくまで楽しまれるのだそうです。そして日本で、映画にかわるのが麻雀。今回のご帰国でも、麻雀大会でスケジュールはいっぱいだそう。「お元気ですか?おいくつですか?」と聞かれたら、「37歳です」と答えるようにしていらっしゃいます。「そう、2回目の37歳」。そして、来春には75歳になられるので、日本でいえば後期高齢者の仲間入り、、、、はしたくないので、「好奇心旺盛な、”好奇”高齢者と名をかえていくつもりです」、とますますエネルギッシュな浦田さんでした。