イベントレポート 『「グローバル化社会における名門ENAの役割」~その課題と展望~』

ENAに吹く新しい風、ロワゾー学長がめざすイノベーション

131120_006

pc131031_018

ナタリー・ロワゾー氏 略歴

フランスのグランゼコールのひとつであるパリ政治学院を卒業。仏外務省の高級官僚として、インドネシア、セネガル、アメリカなど数多くの国で在外勤務を歴任されてきました。そして、2012年にENA学長に就任。プライペートでは、4人の子どもたちのお母さまでもあります。

 

フランスのENAといえば、1945年に元フランス大統領シャルル・ド・ゴールが設立した、首相直属の幹部公務員官僚養成機関。学生たちは、フランスの他のグランゼコールや大学を卒業後入学するという、日本の博士後期課程に相当します。卒業生には、ジャック・シラク元大統領、フランソワ・オランド現大統領など名を連ね、フランスのエリートたちのそうそうたるメンバーを輩出しています。そしてロンドンの「THE TIMES」誌で、世界のリーダーとなる一流企業のCEOを輩出する世界で6番目の教育機関と評されるほど、ビジネス界の多くのCEOたちもENAの卒業生です。

そんな世界中のトップ校の中でも最も優秀とされる教育機関の学校の学長、しかも女性!となるとどんなスーパーウーマンなのだろうかと、少々身構えて講演が始まるのを待っていると、ロングヘアーのにこやかで素敵な女性が登場。同日午後の人事院での国際シンポジウムに出席された後、休む間もなく今回の講演会場であるフランス商工会議所までかけつけてくださったロワゾー学長ですが、疲れた様子などまったく感じさせず、磯村尚徳初代パリクラブ会長の司会でなごやかに講演は始まりました。

アグレッシブな司会で会場を魅了する磯村尚徳初代パリクラブ会長。

アグレッシブな司会で会場を魅了する磯村尚徳初代パリクラブ会長。

2012年に、ENAの学長に任命されたロワゾー氏。ENAのOBではなく、外交官、さらに女性という立場でこの大きな任務に挑まれたロワゾー学長の言葉は、ひとつひとつが力強く感じられました。閉鎖的でエリートの再生ゆりかごなどと、時として非難されているENAですが、彼女が真っ先に取りかかったのは、イノベーションと世界に目を開いたグローバル化。私たちの日常生活や価値観などは、科学技術やバイオロジー、ITなどの大きな飛躍によって、フランスだけでなく世界的にも著しく変化してきています。ロワゾー学長は、それにともなって行政のありかたにも既存のノウハウだけでなく新たな側面からの能力が要求されていくだろうと強調されていました。

そして将来の官僚たちにとって必要とされるのは、過去の古いエリート意識を払拭して、国民の生の声に耳を傾ける能力を持つこと。そのためにも、公の機関だけではなく、民間企業への学生たちの研修体験を勢力的にとりいれているそうです。そうすることで、学生たちは授業で学ぶ専門的な知識だけではなく、現場で経験することで得られる、将来直面するだろう世界レベルの競争力やさまざまな課題に備えられる豊かな職業倫理と能力を学ぶことができます。現場を知ることで、リーダーとしての管理力、スタッフの統率力につながり、行政の複雑な政策を推進できる人材育成に大いに役立っているようです。