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講演会「グローバル経済の行方」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)、財団法人日仏会館 共催

【フィリップ・ルフルニエ氏】

ジャーナリスト、Club de l’Expansion 創設者・名誉会長、CAMDESSUS委員会メンバー。
1939年、ルマン生まれ。パリ大学法学部卒業。1967年にクラブ・ドゥ・レクスパンシオンを創設、現在名誉会長を勤める。ユネスコのコンサルタント、 フランス統計委員会メンバー、フランス経済コミッション委員会メンバー、日本経済新聞パネリスト、サルコジフランス経済大臣の諮問に答え、フランス経済の 成長戦略報告書(LE SURSAUT)をまとめた省が推進するCAMSESSUS委員会メンバー(2004年)等を歴任。フランス共和国よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリ エと国家功労勲章シュヴァリエを叙勲。
1968年発行の著書「Les problèmes du développement économique」、1996年発行の「Ecodigest」の他、フランス、アメリカ、日本、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ポーランド 等世界各国のメディアに記事が掲載されている。

日時 2006年10月30日(月)18時30分~21時
会場 日仏会館ホール
ゲストスピーカー フィリップ・ルフルニエ氏
 

1030-global-110月30日(月)夜、日仏会館で50名強の参加者を得て頭書講演会が開催されました。ルフルニエ氏は Expansion 経済予測センターの創設者であり、 Expansion クラブ会長を務めておられる国際的に高名なエコノミストです。最近では2004年にサルコジ仏国経済大臣(当時)の諮問委員会であるカムドゥシュ委員会の メンバーとして、仏国成長戦略レポートの作成に当たられました。

短時間ながら、グローバル経済の主要プレイヤーの現状と課題についての、簡潔且つ丁寧な分析・説明でした。

米国では政府/企業/家計での過剰債務、特に家計の過剰信用が米国の景気を支えてきた消費を減速させる恐れが大であるとの指摘でした。また、製造業の供給力の衰えも大きな懸念材料とのことでした。

成長著しい中国は米国とは逆に、供給サイドが急成長をしているものの、人/物/金の過剰投入により過剰生産体制となっており、世界経済の紊乱要因にもなっているとの説明でした。決して健全な成長とはいえないとの辛口コメントでした。

1030-global-2《 Choc d’offre 》という言葉が何度も出てきました。中国のようなエマージング大国が急速に工業製品の供給力をつけ、生産のためのエネルギーや原材料の国際価格が高騰、一 方で過剰生産のため製品価格は上昇しない。米国を筆頭とする往年の供給大国は、ものづくりはやめて借金しながらの消費大国を決め込む。こんな構図が 《 Choc d’offre 》なんでしょう。大変興味深く伺いました。

先進国クラブの中でも、ものづくりで経済のリバウンドに成功した国があり、それが日本とドイツだということです。超ハイテク分野や、特定の(たとえ ば自動車)高付加価値分野での技術革新により、質的に他の追随を許さない堅固な供給力をつけているとの分析です。少子高齢化や膨大な公的債務という日本経 済の問題点の指摘も当然ありました。

《 Choc d’offre 》現象の中で、独日型の強固な供給体制というのも先進工業国の一つのありかただというのが、ルフルニエ氏の教えだと思います。

ユーロ圏経済については英国、オランダをはじめ、順調な成長を遂げている国が多いこと、またドイツについては上述の通りものづくり大国として外需中心に、回復基調が著しいとの説明でした。

さてわれらがフランスはどうかというと、まず独日型ではなく消費が景気を牽引するアングロサクソン型経済になっているとの説明でした。消費依存型経 済の特性として、政府/企業/家計の夫々の債務が増えているとのことです。フランスの一人当たりの生産性(製造部門)は非常に高い一方、労働力化の弱さが これを相殺しているとの説明がありました。

フランスの失業率の高さ、特に若年層や高齢層の雇用率は非常に低く、これを何とか労働力化しないとフランス経済の将来は明るくないとの指摘です。フランス国民は官民挙げてこの問題に取り組んでいるとのことです。

1030-global-3誰がグローバリゼーションの勝者かというような、(我々がひそかに期待していたような)どこかの TV 番組の経済評論家のような話し方はされませんでした。正統派のエコノミストの客観的な分析に基づくお話の中から、グローバリゼーションの流れへの適応力と 技術革新への努力が最低限不可欠であることを汲み取ることができたと思います。

ユーロ高に関する質問や、米国経済の実力評価についてのコメントや質問が相次ぎました。

大変活発な質疑応答で時間一杯となり、(司会者特権で質問しようとしていた)筆者の出番はありませんでした。一般に既得権を重視し変化を嫌うフラン ス国民相手に、痛みを伴う改革を強行できるんですかという質問をしたかったのです。また、ロワイヤル氏の評価についても聞いてみたかったですね

2006年10月31日
パリクラブ 副会長 増渕 文規

※ルフルニエ氏がレジュメとして作成した資料を別添します
1030-resume_interview.doc【フランス語:ワードファイル】

サロンコンサート

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催
パレスホテル 協力

2006年9月27日(水)皇居前和田倉噴水公園内(パレスホテル経営)レストランに於いて「サロンコンサート」を開催されました。二人の新進気鋭 のミュージシャンによるフランスに縁の深い曲目を中心としたコンサートです。和田倉噴水公園内のガラス張りの瀟洒な会場で、コンサートの余韻に浸りながら パレスホテル特製の料理とお酒でご歓談いただきました。お二人とも若手ながら既に多くの公演を通じ、プロの高い評価を得ています。ビッグアーティストへの 更なる成長を期待する激励の場でした。

【佐藤 俊介】

ヴァイオリン パリ在住。1984年生。2000年ニューヨークでデビューリサイタル。2005年出光音楽賞。2006年パリ日仏文化会館でソロコンサート。海外公演多数。

【佐藤 卓史】

ピアノ 1983年生。2004年日本各地でデビューリサイタル。2004年日本ショパン協会賞。2006年東京芸大首席卒業。今秋、ドイツハノーバーへ留学予定

日時 2006年9月27日(水)18時~21時
18:00:受付開始
18:30:サロンコンサート
19:30:ビュッフェ・レセプション
会場 皇居前和田倉噴水公園内(パレスホテル経営)レストラン
東京都千代田区外苑3-1 Tel: 03-3211-5211(パレスホテル代表番号)
http://www.dentan.jp/kokyo/kokyo09.html
曲目 MOZART(Sonate K.306inD-Dur)
BRAHMS(Sonate no.3)
BOULANGER(Nocturne)
IBERT(Le petit ane blanc)
SARASATE(Zigeunerweisen)
ヴァイオリンソロ:COUPERIN(Les Roseaux)
ピアノソロ:ISAYE(Sonate Op27 no.)
参加費 8,000円(ビュッフェ・レセプション代込み)
 9月27日の夜パリクラブ、CCIFJ共催の頭書サロンコンサートを行いました。

会場は岩倉噴水公園レストランというガラス張りの瀟洒な建物です。宮内庁の所有だそうですが、最近運営をパレスホテルに全面委託することになったものです。
昼間の雨もうそのように好天に恵まれ、岩倉噴水公園の噴水を正面に見ながら、二人の若きアーティストの演奏を堪能したひと時でありました。

フランス人の参加者が少なかったのは少々残念でしたが、総勢60人近い参加者を得て、盛況のうちに会を終えることができました。
演奏者はパリで活躍中のヴァイオリニスト佐藤俊介氏と、今秋ハノーヴァーに居を移して研鑽に努めようというピアノの佐藤卓史氏のお二人でした。当会会員で パレスホテルの松本恵子さんのご紹介です。何度もこの種のコンサートを一緒に行っており、息のピッタリ合った優雅かつエネルギッシュな演奏だったと(素人 ながら)感じています。
演奏の質の高さと、22歳と23歳というアーティストの若々しい魅力が参加者のだれをも魅了したようです。もっと多くの方に楽しんでいただきたかったとい える、すばらしい演奏でした。お二人にはコンサート後のビュフェパーティーにも参加願い、参加者と懇談の時を持ちました。
佐藤俊介氏がフランスで活躍中であることや、フランスに関連する曲目を多く選んでいただいたこともあり、日仏文化交流にふさわしい行事になったと思います。

ビュフェの冒頭に磯村パリクラブ名誉会長にスピーチを頂戴いたしました。(フランス在住のヴァイオリニスト佐藤俊介氏と知己あり)佐藤氏の紹介 方々、日本の若きアーティストがフランスを足場に世界に羽ばたいていくことやそれを支援する活動が、日仏文化交流にとりいかに重要であるかについて強調さ れました。パリクラブの文化委員会としてかかる催しをすることの意義をわかりやすく説明いただいたものと、大変感謝しています。

企画の段階から参加のお誘い、参加者の確定、当日の運営・会計に至るまで、多くの方に大変お世話になりました。この場を借りて心よりお礼申し上げます。

文化委員会 増渕 文規(2006年10月2日)

講演会「グローバライゼイションと企業経営」 シリーズその3:「グローバライゼイションの中でのフランスの文化的経済的な魅力-交差した視点」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

日時 2006年7月4日(火)18時30分~21時
会場 メルシャンサロン
スピーカー ■ジャン=ルイ・ムキエリ氏
フランス大使館文化参事官 ソルボンヌ大学経済学教授
司会 ■増渕文規氏
パリクラブ常務理事 三菱商事(株)理事・監査役室長

【ジャン=ルイ・ムキエリ氏 ご略歴】

0704-francebunka-11950年11月生まれ。パリ第一大学の経済学部修士課程終了・国家博士号取得。
1991年より第一級教授、国内外の数多くの大学で教授、研究活動。
2004年9月より在日フランス大使館文化参事官。
著書は国際投資・国際企業論・貿易の分野で多数。
近著は「Multinational firms location and the new economic geography(2004)」
「International Economy(in French, 2005)」

 

7月4日に日仏経済交流会主催、在日フランス商工会議所(CCIFJ)共済で頭書講演会を行いました(於メルシャンサロン)。
講師はフランス大使館文化参事官で、ソルボンヌ大学経済学教授のジャン=ルイ・ムキエリ氏で、50人以上の参加者を得ました。

0704-francebunka-2外国人を惹きつける「国の魅力」とは何かについて、「外資」、「観光客」、「留学生」の3つのアングルで「国のATTRACTIVENESS」を語って頂き ました。グローバライゼーションが進む世の中だからこそ、差別化されたその国のATTRACTIVENESSが益々重要になるし、そのための努力・工夫も 重要だということを分かりやすく説明されました。久しぶりに大学の名講義を聴講したような気持ちになった方も多かったと思います。中立的で冷静なフランス のATTRACTIVENESS分析の前に、もしもフランスのお国自慢ならと反論の機会を窺っていた人(筆者もその一人)には、少々肩すかしだったかも知 れません。よく考えれば経済学の権威が政治家か街のオヤジのようなお国自慢をするわけはありませんね。

0704-francebunka-3二つのキーワードが特に印象に残ります。
一つは「Tyranie de la Distance」。近隣絶対優位の原則とでも訳せましょう。経済関係でも観光でも留学でも結局近い者同士の関係が一番というのが、はっきり統計に出てい るそうです。隣の国とは特に親しくしなければならないところですが、これが出来ないことが日本の近隣外交の泣き所と(筆者は)思っています。(質問を受 け)フランスだってドイツとはいろいろあったけれど過去を乗り越えて関係修復に努めたと、ムキエリ氏はコメントされておりました。
もう一つは「Agglomération」。文化や経済の集積のことです。経済の方は「工業団地」とか「ハイテク団地」で集積の重要性は知られています が、文化でも集積がないと集客できないとのことです。たとえばパリ周辺は集客が増えていますが、アルザスなどは年々落ち込んできています。

0704-francebunka-4_gd活発な質問、コメントが交わされました。特に「Tyranie de la Distance」に関する質問が多かったようです。フランスは文化の国というイメージが定着していて、投資先決定に際し、このイメージがマイナスに働く のではないかという質問がありました。ムキエリ氏は「投資家はイメージには引っ張られず最後は合理的な判断をするし、フランスはEUと一体で、そのトータルの魅力で判断される。又文化大国というイメージは経済的側面を補完・強化するものだ(complémentaire)。」とコメントされました。
ムキエリさんは8月に文化参事官の職を終えて学者生活に戻られるとのこと。

ご多忙にもかかわらず、すばらしいご講演をたまわり、種々質問に丁寧にお答え頂きました。あらためてお礼を申し上げたいと思います。

2006年7月10日
日仏経済交流会 増渕 文規

公邸ランデブー・フランコジャポネ挙行

日時 2006年5月25日 18:30~20:00、その後ビュフエ
会場 フランス大使公邸

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA5月25日夕、ル・リデック大使にこれで5回目になる公邸ランデブー・フランコジャポネを開いてもらいました。ご挨拶からコーラスへそれからビュッフェ・ ディナトワールへと進んだこのソワレは、ディネ・ド・シャリテ(チャリティ・ディナー)と呼んでよいでありましょう。当会からの参加者にお1人に7000 円の醵出をお願いし、そこから一部コストの分担と日仏青年交流会向け寄付金を賄うからです。当会から100余名およびフランス商工会議所や大使館などから 約30名が参加、合唱団40名を含めて合計200名の方々が集う盛会となりました。

フランス大使公邸でランデブー・フランコジャポネを開いてもらう目的は、日仏人物交流の深化にありますが、この度はことに、1月に着任されたル・リ デック大使と皆さんが親しくお話しになる機会をと念じた次第です。気さくで日本語をよく解される同大使に忝(かたじけ)のうしたスピーチと接遇に心から感 謝いたします。

磯村パリクラブ名誉会長それに乾杯の音頭取りをして下さったド・メスチエCCIFJ会頭には感銘深いスピーチをいただきました。厚く感謝申し上げま す。また、紐育・東京・巴里男声合唱団と東京はなみずき女声合唱団の歌声は、公邸ランデブー・フランコジャポネに新たな伝統を確立したと評価して異論あり ますまい。

紐育・東京・巴里男声合唱団は、ニューヨークにいた合唱好きのビジネスマンが集り、1991年に誕生。東京花みずきは、やはりニューヨークで結成さ れた花みずき合唱団のメンバーが東京に帰国して1992年に作った女性コーラスグループ。北原白秋作詞「ちゃっきりぶし」やユゴー作詞・アーン作曲の「我 が詩に翼ありせば」など日仏の名曲を熱唱しました。最後にはフランス民謡「フレール・ジャック」会場の皆さんと輪唱し、なかなかの盛り上がりでした。

今回バジョン経済商務公使は公務多端でお越しになれなかったのですが、昨年9月以来同公使から度々頂戴したご指導とご助言がなかったら、第5回公邸 ランデブーはあり得なかったことでしょう。バジョン公使のご親切を称え心からの感謝を捧げます。大使館儀典課のサンピエール1等書記官と玉置館員のお力添 えにも厚く感謝申し上げます。

藤本旬、足立純子、森由美子の各理事と鈴木美香里専門委員には、コーラスの編成を含むプログラムの作成と当日の采配につきたいへんにご苦労いただきました。深謝します。

ご挨拶で行われたスピーチについては別のページでご覧になれるよう目下手配中です。

(関本記)

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第48回ランデブー・フランコジャポネ

4月27日夕、神田錦町学士会館201号室で行われたパリクラブ第13回定時総会に引続き、磯村名誉会長の音頭とともに、48回目になるランデブー・フランコジャポネが開催されました。
題して「ワインセミナー:これから人気が出そうなワインの予測」。

日時 2006年4月27日

Minolta DSCqualite prixの双方を踏まえての人気を予測し、次のワインをズバリと紹介されたのは、当会常任理事の三浦一雄氏と小阪田嘉昭氏。三浦さんは輸入ワイン商の (株)西岡寅太郎商店の副社長で、早くからプロバンスワインをてがけられ、現在ではフランス全域の銘醸ワインを厳選して本邦に紹介されています。小阪田さ んはメルシャン(株)の醸造顧問であられますが、フランス共和国ワイン醸造士として著された『ワイン醸造士のパリ駐在記』(2001年6月出窓社刊)はワ インを志す人のバイブルとして珍重され、ジュンク堂の在庫はあと1冊と伝えられています。

Baron Charcot, blanc 2004 (vdp* de lユHerault, Cave de Languedoc Roussillion)
Chateau Villegly, rouge 2004 (AOC Minervois, Cave de Languedoc Roussillion)
Josephine de Boyd, rouge 2000 (AOC Margaux, Hebrard:Chateau Boyd-Cantenacのセカンドワイン)
シャトー・メルシャン・甲州きいろ香 白
シャトー・メルシャン・長野メルロー 赤
* : vin de pays 指定された葡萄の品種を使い限定された地域の葡萄のみを使用した地ワインであると保証する呼称

我が結婚披露宴はここで何十年前のことだったと感慨にふける人も含め、70名からの方が神田錦町学士会館の201号室に集い、精養軒のお料理とともに試飲からやはりいつもの飲み方へと進みました。参会者の中には佐原秋生氏ら斯界の人の顔も見えました。

駐日フランス大使のご名代としてカワベ経済・商務参事官も来て下さいました。昨年のナノテクノロジーに関する日仏混合会議の開催責任を果たされた気 鋭のポリテクニクシャンです。同校(エコール・ポリテクニーク:理工科学校)の教授でもあられる磯村名誉会長との歓談が弾んでいました。

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講演会「グローバライゼーションと企業経営」 シリーズその1:「エアバスの戦略と日本」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

エアバスは日本ではあまり知られていないようです。フランスでよく乗ったエアバスは日本国内ではほとんど目にしません。フランスで組み立てていることを知っている人も、部品の製作国になると自信がないようです。日本企業もその一部を作っています。

最近ではグローバルな市場でエアバスがボーイングと激しく競争し、中国やインドなどでの大量受注が大きく報道されています。グローバル化が進む世界 の中で、エアバス社がどのような経営や活動をおこなっているのか、また日本市場での販売や産業協力の今後はどのようになっていくのか。日仏のパートナー シップ促進のための障害と課題は何か。日本が航空機製造を強化するには何が必要か。

昨年2月にエアバス・ジャパン社長に就任された米国出身のグレン・フクシマ社長とフランス出身で日本企業との産業協力を担当しているJAMES氏にこうした問題意識に答えたお話をしていただきます。

日時 2006年4月17日(月)18:30~21:00
会場 メルシャンサロン
スピーカー ■グレン・S・フクシマ氏
エアバス・ジャパン(株)代表取締役社長(講演は日本語)
■ブリュノ・ジャム氏
エアバス・ジャパン(株)サプライヤ・コーディネーター担当ディレクター(講演は日本語)
モデレーター ■上田忠彦氏
パリクラブ理事 元丸紅フランス会社社長 現東京都環境衛生公社参事
スピーカー略歴

グレン・S・フクシマ氏:米カリフォルニア出身 ハーバード・ビジネス・スクールおよびロー・スクール卒。USTR(米国大統領府通商代表部)、日本AT&T副社長、日本NCR共同社長、在日米国商工会議所会頭などを経て、05年2月より現職。

ブリュノ・ジャム氏:フランスSUPAERO卒 日本航空宇宙技術研究所,SNECMA(エンジンメーカー)を経て、エア バス社に。SNECMAで日本企業とのエンジニアリング協力、エアバスでA380についてのアジアでのパートナーシップ、エンジン調達などに従事し、 2004年9月より現職。

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1.グローバライゼーションは様々な形で企業や個人の活動に影響を及ぼしています。中国、インド、東欧などにおける経済の高成長によって、世界の企 業市場はグローバルに急拡大し、世界的なベストセラーのタイトルで有名になりましたが、ITの発達の結果「世界は平ら(The World Is Flat)」になっています。国境を越えた合弁やM&Aが活発化し、フランス企業はその先端を行き、日本企業も今後はM&Aを積極的に活用しようとしてい ます。われわれの関心は、国際的な企業の国籍とは何か、投資先国の多様な文化をどのように考慮するべきかなどにも及んでいます。

0417-airbus-2_gd2. パリクラブでは、「グローバライゼーションと企業経営」とのタイトルのもとで、企業はどのようにグローバルな戦略を展開しているのか、そしてよりひろくグ ローバル化を理解し、日仏のパートナーシップを考える参考にするために、シリーズでの講演会を企画しました。今回はその第1回目として、エアバスの戦略と 日本での活動について、エアバス・ジャパン(株)代表取締役社長のグレン・S・フクシマさんと同社サプライヤ・コーディネーター担当ディレクターのブリュ ノ・ジャムさんに講演をお願いいたしました。お二人からは日本語で、たくさんのスライドを用いて、エアバスの歴史、エアバス航空機の特長、日本市場での販 売状況や日本企業との生産協力について、体系的でたいへん分かりやすい説明をしていただきました。その後、共催者であるフランス商工会議所メンバーや航空 産業関係者も含めた50名の参加者が、エアバスの本社に近いラングドックのワインを片手にお二人を囲み、質問や歓談をするうちに、メルシャン・サロンでの 夜はふけました。

3.主催者の立場で印象深く聞いた点を以下まとめておきます。

  • 1970年にエアバスが仏独のコンソーシアムとしてフランスに設立された時点では、欧州市場は米国のボーイングやダグラスなどの寡占状態 で、欧州メーカーのシェアは16%でしかなかった。74年にA300がデビュー、その後88年に出したA320、次の A330,A340が電子機器を使った操縦性、座席の広さなどで評価され、95年にはエアバス機の受注残シェアは世界の3分の1に、そして最近では受注・ 引渡し・受注残いずれでも50%を上回り、ボーイングを抜きトップに。
  • 会社の形態は企業連合から株式会社(EADS80%,BAE SYSTEMS20%)に変わり、フランスなど欧州各地で計16箇所の製造 拠点、設計技術センター7箇所、事務所は82カ国で160箇所。従業員数は5万5千人。80カ国以上の国籍で、20の言語を使用。経営陣はCEOがドイツ 人、COOは2名でフランス人とアメリカ人、ボードメンバーは欧州4カ国と米出身。このように人種・文化的な多様性に富んでいる。
  • 最新の超大型機A380は座席数450-550(全部エコノミーだと853)、21世紀の航空機として、開発後37年たっているボーイン グのB747に比べて、広く、高い運航性能で、経済的で、静か。現在16社から159機を受注済みで、2006年にシンガポール航空に2機引渡し予定で、 その後シドニー・ロンドン・成田を飛ぶ。アジア太平洋では他にインド・タイ・マレーシア・韓国・中国・オーストラリアから受注済みだが、日本からはまだ注 文がない。2010年には成田に週60便のA380が乗り入れてくる予定。エアバスでは現在新型のA350を開発中。高性能素材の採用で軽量化をはかって おり、今後B787との競合機になろう。
  • エアバスの日本市場でのシェアは2000年から2004年で4%。中東アフリカ83%、欧州62%、アジア太平洋55%、アメリカ(北中 南米)49%と比較して、極めて低く、ミステリーである。2005年の受注機数をみても、インド・マレーシアから288機(マーケットシエア75%)、中 国から219機(62%)を受注したのに対して、日本は全部で94機発注しているうちエアバスは4機でしかない(4%)。内訳はANAにA320を3機、 佐川急便にA300-600を1機。
  • エアバスは日本市場開拓のために2001年にエアバス・ジャパン社を設立し、USTRで活躍し、米国企業の日本法人トップや在日米国商工 会議所会頭の経験のある米国人のフクシマ氏が昨年2月より社長に就任している。フクシマ氏によれば、4%のシェアはノーマルではなく、今後引き上げの可能 性が期待されている。エアバスはコスト・パフォーマンスの高さが着目されており、既に佐川急便が購入したほか、最近ではスターフライヤーがA320で羽田 と北九州空港のサービスを開始した。同氏は、日本の航空会社は長くボーイングを使い、ボーイングを評価しているが、エアバスの持つ技術的な高さも考慮し て、ふたつを使用していくべきであろうと述べている。
  • 日本の航空宇宙産業は110億ドルの規模で、その8割を宇宙と機体とエンジンの3分野をてがける重工業4社(三菱・川崎・石川島播磨・富 士)が占め、そのほかに機体、装備品、内装部品・タイヤ、素材メーカーがいる。これらの会社は独自の技術で国産機(YS11やF2)を開発しているほか、 エンジンや航空機の国際プロジェクトで共同開発をし、一定の割合のリスクを分担している(ボーイングB787では翼などで日本企業のシェアは35%)。
  • エアバスは欧州4カ国が中心だが、それ以外の国のメーカーとリスクを分担し、またエンジンや設備・装備品・部品・素材を外部(9割以上は 欧米メーカー)から調達している。日本企業はA380では21社が装備品・部品・素材などを供給している。今後欧州と協力体制を確立することで、日本企業 は文化の差を認識しつつ、アメリカ中心主義から離れ、リスク分散を図り、新しい技術を培うことが期待される。そのためにはエアバス側としても下請けから パートナーシップ育成という考え方に変え、部品だけではなくより大きなコンポーネントを外注する必要がある。なお、日仏の航空宇宙工業会の間では昨年6月 に超音速旅客機に関する研究協力が開始している。

4.最後に報告者として感じたことを述べます。日本企業によるエアバス購入拡大は、長年の間フランスを中心とする欧州側の強い希望でした。欧州側は 技術的にも優れた航空機が何故日本にだけは売れないのか不思議に思っていたものの、木内元大使がコメントされたように、これまで政府のトップ・レベルでは 強く働きかけをしなかったようですし、企業としての販売姿勢もいまひとつだったようです。日本側では米国との外交・軍事関係を重視してきたことや、日本企 業が開発・製造に参加するボーイングを優先したという事情もあったようです。米国企業は早くから日本市場に重点を置いた強力な営業活動をおこなってきたこ とも聞きました。フランスをベースにエアバス機を頻繁に利用してその快適性や良さを感じた一人のビジネスマンとして、今後日本でもコスト・パフォーマンス や利用客の快適さ、環境への影響などを考慮に入れた航空機の選択がおこなわれ、エアバスの最新機にのれる機会が増えることを期待したいと思います。それが 開発・製造面での協力拡大にもつながっていくのではないでしょうか。 これまでエアバスは日本のなかでは知る人が限られていたのも事実でしょう。フクシマさんが最後に述べられていたように、今後エアバス社が3つ の”relations”、すなわちgovernment・public・human relationsを強化することで日本市場でのエアバスの認知度が高まり、具体的な成果につながることを祈りたいと思います。

(文責 経済社会委員長 久米五郎太)

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