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講演会「グローバライゼイションと企業経営」 シリーズその3:「グローバライゼイションの中でのフランスの文化的経済的な魅力-交差した視点」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

日時 2006年7月4日(火)18時30分~21時
会場 メルシャンサロン
スピーカー ■ジャン=ルイ・ムキエリ氏
フランス大使館文化参事官 ソルボンヌ大学経済学教授
司会 ■増渕文規氏
パリクラブ常務理事 三菱商事(株)理事・監査役室長

【ジャン=ルイ・ムキエリ氏 ご略歴】

0704-francebunka-11950年11月生まれ。パリ第一大学の経済学部修士課程終了・国家博士号取得。
1991年より第一級教授、国内外の数多くの大学で教授、研究活動。
2004年9月より在日フランス大使館文化参事官。
著書は国際投資・国際企業論・貿易の分野で多数。
近著は「Multinational firms location and the new economic geography(2004)」
「International Economy(in French, 2005)」

 

7月4日に日仏経済交流会主催、在日フランス商工会議所(CCIFJ)共済で頭書講演会を行いました(於メルシャンサロン)。
講師はフランス大使館文化参事官で、ソルボンヌ大学経済学教授のジャン=ルイ・ムキエリ氏で、50人以上の参加者を得ました。

0704-francebunka-2外国人を惹きつける「国の魅力」とは何かについて、「外資」、「観光客」、「留学生」の3つのアングルで「国のATTRACTIVENESS」を語って頂き ました。グローバライゼーションが進む世の中だからこそ、差別化されたその国のATTRACTIVENESSが益々重要になるし、そのための努力・工夫も 重要だということを分かりやすく説明されました。久しぶりに大学の名講義を聴講したような気持ちになった方も多かったと思います。中立的で冷静なフランス のATTRACTIVENESS分析の前に、もしもフランスのお国自慢ならと反論の機会を窺っていた人(筆者もその一人)には、少々肩すかしだったかも知 れません。よく考えれば経済学の権威が政治家か街のオヤジのようなお国自慢をするわけはありませんね。

0704-francebunka-3二つのキーワードが特に印象に残ります。
一つは「Tyranie de la Distance」。近隣絶対優位の原則とでも訳せましょう。経済関係でも観光でも留学でも結局近い者同士の関係が一番というのが、はっきり統計に出てい るそうです。隣の国とは特に親しくしなければならないところですが、これが出来ないことが日本の近隣外交の泣き所と(筆者は)思っています。(質問を受 け)フランスだってドイツとはいろいろあったけれど過去を乗り越えて関係修復に努めたと、ムキエリ氏はコメントされておりました。
もう一つは「Agglomération」。文化や経済の集積のことです。経済の方は「工業団地」とか「ハイテク団地」で集積の重要性は知られています が、文化でも集積がないと集客できないとのことです。たとえばパリ周辺は集客が増えていますが、アルザスなどは年々落ち込んできています。

0704-francebunka-4_gd活発な質問、コメントが交わされました。特に「Tyranie de la Distance」に関する質問が多かったようです。フランスは文化の国というイメージが定着していて、投資先決定に際し、このイメージがマイナスに働く のではないかという質問がありました。ムキエリ氏は「投資家はイメージには引っ張られず最後は合理的な判断をするし、フランスはEUと一体で、そのトータルの魅力で判断される。又文化大国というイメージは経済的側面を補完・強化するものだ(complémentaire)。」とコメントされました。
ムキエリさんは8月に文化参事官の職を終えて学者生活に戻られるとのこと。

ご多忙にもかかわらず、すばらしいご講演をたまわり、種々質問に丁寧にお答え頂きました。あらためてお礼を申し上げたいと思います。

2006年7月10日
日仏経済交流会 増渕 文規

公邸ランデブー・フランコジャポネ挙行

日時 2006年5月25日 18:30~20:00、その後ビュフエ
会場 フランス大使公邸

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA5月25日夕、ル・リデック大使にこれで5回目になる公邸ランデブー・フランコジャポネを開いてもらいました。ご挨拶からコーラスへそれからビュッフェ・ ディナトワールへと進んだこのソワレは、ディネ・ド・シャリテ(チャリティ・ディナー)と呼んでよいでありましょう。当会からの参加者にお1人に7000 円の醵出をお願いし、そこから一部コストの分担と日仏青年交流会向け寄付金を賄うからです。当会から100余名およびフランス商工会議所や大使館などから 約30名が参加、合唱団40名を含めて合計200名の方々が集う盛会となりました。

フランス大使公邸でランデブー・フランコジャポネを開いてもらう目的は、日仏人物交流の深化にありますが、この度はことに、1月に着任されたル・リ デック大使と皆さんが親しくお話しになる機会をと念じた次第です。気さくで日本語をよく解される同大使に忝(かたじけ)のうしたスピーチと接遇に心から感 謝いたします。

磯村パリクラブ名誉会長それに乾杯の音頭取りをして下さったド・メスチエCCIFJ会頭には感銘深いスピーチをいただきました。厚く感謝申し上げま す。また、紐育・東京・巴里男声合唱団と東京はなみずき女声合唱団の歌声は、公邸ランデブー・フランコジャポネに新たな伝統を確立したと評価して異論あり ますまい。

紐育・東京・巴里男声合唱団は、ニューヨークにいた合唱好きのビジネスマンが集り、1991年に誕生。東京花みずきは、やはりニューヨークで結成さ れた花みずき合唱団のメンバーが東京に帰国して1992年に作った女性コーラスグループ。北原白秋作詞「ちゃっきりぶし」やユゴー作詞・アーン作曲の「我 が詩に翼ありせば」など日仏の名曲を熱唱しました。最後にはフランス民謡「フレール・ジャック」会場の皆さんと輪唱し、なかなかの盛り上がりでした。

今回バジョン経済商務公使は公務多端でお越しになれなかったのですが、昨年9月以来同公使から度々頂戴したご指導とご助言がなかったら、第5回公邸 ランデブーはあり得なかったことでしょう。バジョン公使のご親切を称え心からの感謝を捧げます。大使館儀典課のサンピエール1等書記官と玉置館員のお力添 えにも厚く感謝申し上げます。

藤本旬、足立純子、森由美子の各理事と鈴木美香里専門委員には、コーラスの編成を含むプログラムの作成と当日の采配につきたいへんにご苦労いただきました。深謝します。

ご挨拶で行われたスピーチについては別のページでご覧になれるよう目下手配中です。

(関本記)

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第48回ランデブー・フランコジャポネ

4月27日夕、神田錦町学士会館201号室で行われたパリクラブ第13回定時総会に引続き、磯村名誉会長の音頭とともに、48回目になるランデブー・フランコジャポネが開催されました。
題して「ワインセミナー:これから人気が出そうなワインの予測」。

日時 2006年4月27日

Minolta DSCqualite prixの双方を踏まえての人気を予測し、次のワインをズバリと紹介されたのは、当会常任理事の三浦一雄氏と小阪田嘉昭氏。三浦さんは輸入ワイン商の (株)西岡寅太郎商店の副社長で、早くからプロバンスワインをてがけられ、現在ではフランス全域の銘醸ワインを厳選して本邦に紹介されています。小阪田さ んはメルシャン(株)の醸造顧問であられますが、フランス共和国ワイン醸造士として著された『ワイン醸造士のパリ駐在記』(2001年6月出窓社刊)はワ インを志す人のバイブルとして珍重され、ジュンク堂の在庫はあと1冊と伝えられています。

Baron Charcot, blanc 2004 (vdp* de lユHerault, Cave de Languedoc Roussillion)
Chateau Villegly, rouge 2004 (AOC Minervois, Cave de Languedoc Roussillion)
Josephine de Boyd, rouge 2000 (AOC Margaux, Hebrard:Chateau Boyd-Cantenacのセカンドワイン)
シャトー・メルシャン・甲州きいろ香 白
シャトー・メルシャン・長野メルロー 赤
* : vin de pays 指定された葡萄の品種を使い限定された地域の葡萄のみを使用した地ワインであると保証する呼称

我が結婚披露宴はここで何十年前のことだったと感慨にふける人も含め、70名からの方が神田錦町学士会館の201号室に集い、精養軒のお料理とともに試飲からやはりいつもの飲み方へと進みました。参会者の中には佐原秋生氏ら斯界の人の顔も見えました。

駐日フランス大使のご名代としてカワベ経済・商務参事官も来て下さいました。昨年のナノテクノロジーに関する日仏混合会議の開催責任を果たされた気 鋭のポリテクニクシャンです。同校(エコール・ポリテクニーク:理工科学校)の教授でもあられる磯村名誉会長との歓談が弾んでいました。

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講演会「グローバライゼーションと企業経営」 シリーズその1:「エアバスの戦略と日本」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

エアバスは日本ではあまり知られていないようです。フランスでよく乗ったエアバスは日本国内ではほとんど目にしません。フランスで組み立てていることを知っている人も、部品の製作国になると自信がないようです。日本企業もその一部を作っています。

最近ではグローバルな市場でエアバスがボーイングと激しく競争し、中国やインドなどでの大量受注が大きく報道されています。グローバル化が進む世界 の中で、エアバス社がどのような経営や活動をおこなっているのか、また日本市場での販売や産業協力の今後はどのようになっていくのか。日仏のパートナー シップ促進のための障害と課題は何か。日本が航空機製造を強化するには何が必要か。

昨年2月にエアバス・ジャパン社長に就任された米国出身のグレン・フクシマ社長とフランス出身で日本企業との産業協力を担当しているJAMES氏にこうした問題意識に答えたお話をしていただきます。

日時 2006年4月17日(月)18:30~21:00
会場 メルシャンサロン
スピーカー ■グレン・S・フクシマ氏
エアバス・ジャパン(株)代表取締役社長(講演は日本語)
■ブリュノ・ジャム氏
エアバス・ジャパン(株)サプライヤ・コーディネーター担当ディレクター(講演は日本語)
モデレーター ■上田忠彦氏
パリクラブ理事 元丸紅フランス会社社長 現東京都環境衛生公社参事
スピーカー略歴

グレン・S・フクシマ氏:米カリフォルニア出身 ハーバード・ビジネス・スクールおよびロー・スクール卒。USTR(米国大統領府通商代表部)、日本AT&T副社長、日本NCR共同社長、在日米国商工会議所会頭などを経て、05年2月より現職。

ブリュノ・ジャム氏:フランスSUPAERO卒 日本航空宇宙技術研究所,SNECMA(エンジンメーカー)を経て、エア バス社に。SNECMAで日本企業とのエンジニアリング協力、エアバスでA380についてのアジアでのパートナーシップ、エンジン調達などに従事し、 2004年9月より現職。

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1.グローバライゼーションは様々な形で企業や個人の活動に影響を及ぼしています。中国、インド、東欧などにおける経済の高成長によって、世界の企 業市場はグローバルに急拡大し、世界的なベストセラーのタイトルで有名になりましたが、ITの発達の結果「世界は平ら(The World Is Flat)」になっています。国境を越えた合弁やM&Aが活発化し、フランス企業はその先端を行き、日本企業も今後はM&Aを積極的に活用しようとしてい ます。われわれの関心は、国際的な企業の国籍とは何か、投資先国の多様な文化をどのように考慮するべきかなどにも及んでいます。

0417-airbus-2_gd2. パリクラブでは、「グローバライゼーションと企業経営」とのタイトルのもとで、企業はどのようにグローバルな戦略を展開しているのか、そしてよりひろくグ ローバル化を理解し、日仏のパートナーシップを考える参考にするために、シリーズでの講演会を企画しました。今回はその第1回目として、エアバスの戦略と 日本での活動について、エアバス・ジャパン(株)代表取締役社長のグレン・S・フクシマさんと同社サプライヤ・コーディネーター担当ディレクターのブリュ ノ・ジャムさんに講演をお願いいたしました。お二人からは日本語で、たくさんのスライドを用いて、エアバスの歴史、エアバス航空機の特長、日本市場での販 売状況や日本企業との生産協力について、体系的でたいへん分かりやすい説明をしていただきました。その後、共催者であるフランス商工会議所メンバーや航空 産業関係者も含めた50名の参加者が、エアバスの本社に近いラングドックのワインを片手にお二人を囲み、質問や歓談をするうちに、メルシャン・サロンでの 夜はふけました。

3.主催者の立場で印象深く聞いた点を以下まとめておきます。

  • 1970年にエアバスが仏独のコンソーシアムとしてフランスに設立された時点では、欧州市場は米国のボーイングやダグラスなどの寡占状態 で、欧州メーカーのシェアは16%でしかなかった。74年にA300がデビュー、その後88年に出したA320、次の A330,A340が電子機器を使った操縦性、座席の広さなどで評価され、95年にはエアバス機の受注残シェアは世界の3分の1に、そして最近では受注・ 引渡し・受注残いずれでも50%を上回り、ボーイングを抜きトップに。
  • 会社の形態は企業連合から株式会社(EADS80%,BAE SYSTEMS20%)に変わり、フランスなど欧州各地で計16箇所の製造 拠点、設計技術センター7箇所、事務所は82カ国で160箇所。従業員数は5万5千人。80カ国以上の国籍で、20の言語を使用。経営陣はCEOがドイツ 人、COOは2名でフランス人とアメリカ人、ボードメンバーは欧州4カ国と米出身。このように人種・文化的な多様性に富んでいる。
  • 最新の超大型機A380は座席数450-550(全部エコノミーだと853)、21世紀の航空機として、開発後37年たっているボーイン グのB747に比べて、広く、高い運航性能で、経済的で、静か。現在16社から159機を受注済みで、2006年にシンガポール航空に2機引渡し予定で、 その後シドニー・ロンドン・成田を飛ぶ。アジア太平洋では他にインド・タイ・マレーシア・韓国・中国・オーストラリアから受注済みだが、日本からはまだ注 文がない。2010年には成田に週60便のA380が乗り入れてくる予定。エアバスでは現在新型のA350を開発中。高性能素材の採用で軽量化をはかって おり、今後B787との競合機になろう。
  • エアバスの日本市場でのシェアは2000年から2004年で4%。中東アフリカ83%、欧州62%、アジア太平洋55%、アメリカ(北中 南米)49%と比較して、極めて低く、ミステリーである。2005年の受注機数をみても、インド・マレーシアから288機(マーケットシエア75%)、中 国から219機(62%)を受注したのに対して、日本は全部で94機発注しているうちエアバスは4機でしかない(4%)。内訳はANAにA320を3機、 佐川急便にA300-600を1機。
  • エアバスは日本市場開拓のために2001年にエアバス・ジャパン社を設立し、USTRで活躍し、米国企業の日本法人トップや在日米国商工 会議所会頭の経験のある米国人のフクシマ氏が昨年2月より社長に就任している。フクシマ氏によれば、4%のシェアはノーマルではなく、今後引き上げの可能 性が期待されている。エアバスはコスト・パフォーマンスの高さが着目されており、既に佐川急便が購入したほか、最近ではスターフライヤーがA320で羽田 と北九州空港のサービスを開始した。同氏は、日本の航空会社は長くボーイングを使い、ボーイングを評価しているが、エアバスの持つ技術的な高さも考慮し て、ふたつを使用していくべきであろうと述べている。
  • 日本の航空宇宙産業は110億ドルの規模で、その8割を宇宙と機体とエンジンの3分野をてがける重工業4社(三菱・川崎・石川島播磨・富 士)が占め、そのほかに機体、装備品、内装部品・タイヤ、素材メーカーがいる。これらの会社は独自の技術で国産機(YS11やF2)を開発しているほか、 エンジンや航空機の国際プロジェクトで共同開発をし、一定の割合のリスクを分担している(ボーイングB787では翼などで日本企業のシェアは35%)。
  • エアバスは欧州4カ国が中心だが、それ以外の国のメーカーとリスクを分担し、またエンジンや設備・装備品・部品・素材を外部(9割以上は 欧米メーカー)から調達している。日本企業はA380では21社が装備品・部品・素材などを供給している。今後欧州と協力体制を確立することで、日本企業 は文化の差を認識しつつ、アメリカ中心主義から離れ、リスク分散を図り、新しい技術を培うことが期待される。そのためにはエアバス側としても下請けから パートナーシップ育成という考え方に変え、部品だけではなくより大きなコンポーネントを外注する必要がある。なお、日仏の航空宇宙工業会の間では昨年6月 に超音速旅客機に関する研究協力が開始している。

4.最後に報告者として感じたことを述べます。日本企業によるエアバス購入拡大は、長年の間フランスを中心とする欧州側の強い希望でした。欧州側は 技術的にも優れた航空機が何故日本にだけは売れないのか不思議に思っていたものの、木内元大使がコメントされたように、これまで政府のトップ・レベルでは 強く働きかけをしなかったようですし、企業としての販売姿勢もいまひとつだったようです。日本側では米国との外交・軍事関係を重視してきたことや、日本企 業が開発・製造に参加するボーイングを優先したという事情もあったようです。米国企業は早くから日本市場に重点を置いた強力な営業活動をおこなってきたこ とも聞きました。フランスをベースにエアバス機を頻繁に利用してその快適性や良さを感じた一人のビジネスマンとして、今後日本でもコスト・パフォーマンス や利用客の快適さ、環境への影響などを考慮に入れた航空機の選択がおこなわれ、エアバスの最新機にのれる機会が増えることを期待したいと思います。それが 開発・製造面での協力拡大にもつながっていくのではないでしょうか。 これまでエアバスは日本のなかでは知る人が限られていたのも事実でしょう。フクシマさんが最後に述べられていたように、今後エアバス社が3つ の”relations”、すなわちgovernment・public・human relationsを強化することで日本市場でのエアバスの認知度が高まり、具体的な成果につながることを祈りたいと思います。

(文責 経済社会委員長 久米五郎太)

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瀬藤澄彦氏との昼食懇談会

日時 2006年4月14日(金)
会場 シーボニアメンズクラブ

0414-seto-3_gd4月14日(金)にジェトロ・リヨン事務所長の瀬藤 澄彦氏を囲んで、昼食懇談会を開催しました(於 シーボニアメンズクラブ)。出席者は瀬藤さんを入れて14名でした。
瀬藤さんのお話は後掲レジュメに沿って行われ、2時間半近く活発な意見交換の場となりました。7項目ともに大変興味深いテーマで、それぞれどれをとっても数時間はかかりそうなところを、要領よく判りやすくご説明いただいて大変勉強になりました。
天候の違いからか瀬藤さんはのどを痛めておられて、普段の美声とは打って変わってかすれ気味の声を絞り出しての熱演でありました。本当にありがとうございました。
丁寧なレジュメで、内容の見当はつくことと思いますが瀬藤さんのお話の中で、特になるほどと思ったポイントを補足します。

「2006年の欧州政治経済情勢」
欧州の相対的地位の低下は皆が認識しており、各国とも構造改革に取り組んでいるが、なかなか苦労している。それでもやはり日本として欧州モデルから学ぶところは多い。

0414-seto-1_gd「2007年のフランス大統領選挙の予測」
選挙の実施時期が重なり、大統領選挙の勝者(政党)が国民議会選挙も制する可能性が高い。Cohabitationにはならないだろう。勝者の予測は困難だが、ロワイヤル女史の人気は本物になってきた。シラクがまた候補として出てくるという冗句のような話もある。

「競争優位時代の産業クラスター」
産業クラスターという言葉が流行り言葉になっている。官が指導しているのはフランスらしいが、競争相手の民間企業が相互に協力しあう図式は新鮮だ。

「敵対的買収に揺れる欧州」
ダノン、アルセロール、スエズ等フランスを代表する企業が海外からの買収対象になると、政府が阻止策に躍起になる。経済愛国主義などという言葉も普通に使われている。フランス企業は世界で買収を行っており、勝手な論理にも見える。

0414-seto-2_gd「新規雇用契約(CPE)反対の背景」
若年失業率がイタリーに次いで高く、企業の雇用意欲を高めるために打ち出した政策として、決しておかしな内容ではないが、方法論の失敗か。就任以来失業率を下げてきた、ドビルパン首相の(自信に裏打ちされた)強攻策が裏目に出た。

「地域経済活性化に資するニュービジネス」
パリと南を結ぶ第二の幹線オートルートにかかるミヨー大架橋は迫力満点で、観光名所になっている。ご訪問をおすすめする。

「女性に職業と家庭を両立させる欧州モデル」
昨年11月にドービルでダボス会議の女性版という形の会議が行われた。米国モデルと違い欧州モデルは地味ながら女性に職業と家庭を両立させるという議論が印象的だった。

文責 増渕 文規(2006年4月14日 記)

 

【レジュメ『欧州の最近の政治経済をどう考える』瀬藤澄彦】

1 2006年の欧州政治経済展望
―世界3極のなかで後塵 地球劇場の舞台裏
―欧州型福祉国家モデルの限界
―自由でもない平等でもない博愛 

2 2007年のフランス大統領選挙の予測
―絶対王政を手にした大統領・遠のく保革共存の可能性
―2002年の16人を凌ぐ史上最高の立候補者数か
―期待される大統領像 50才台の誠実で市民の声を聞く内政重視型
―第1回投票はロワイヤル女史の圧勝 決選投票は組合せ次第

3 競争優位時代の産業クラスター
―全国に66ヶ所のPo^les de compe´titivite´
―300ヶ所の小型地方クラスターも発足へ
―グローバリゼーションの逆説 「経済の領土化」

4 敵対的買収に揺れる欧州
―敵対的買収はどこまで有効か
―経済愛国主義
―国の競争優位とはなにか

5 新規雇用契約(CPE)反対の背景
―雇用改革とビルパン
―青少年の不安定雇用・階層資産格差 中間階層社会の終焉
―第5共和制の機能不全 

6 地域経済活性化に資するニュービジネス
―世界最大のつり橋 ミヨー大架橋
―リヨン 自転車が都市交通を変える
―リヨン 12月8日の光の祭典

7 女性に職業と家庭を両立させる欧州モデル
―女性ダボス版ドービル世界会議
―男女の新たな共生関係を目指して

デバ「中国、その機会とリスク:日本の視点、フランスの視点」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

0308-chine-1急速かつダイナミックな成長を続ける中国。2005年のGDPはフランス、イギリスを抜いて世界第4位になった模様であり、2008年の北京オリンピック、 2010年の上海万博などを控え、今後も高い成長率を維持するものと期待されている。日中関係は現在ややデリケートになっており、事実日経や読売新聞の調 査によれば、現在約70%の日本人は中国を信頼できないと言っている。一方仏中関係は良好に推移しているようである。今回のデバでは、こうした中国の「機 会とリスク」は何かと言うテーマで日仏の二人の専門家、みずほ総合研究所、チーフエコノミストの中島厚志氏、在日フランス商工会議所会頭でトタル社北東ア ジア代表のユベール ド・メスティエ氏にそれぞれの視点でお話頂いた。基本的な問題意識は次の二点である:「既に表面化している経済成長制約条件、例えば 環境問題、資源不足、著しい地域間格差などを踏まえても、中国は2010年以降、引続き高度成長を維持できるか?」「現在『世界の工場』といわれている中 国は今後『世界の市場』となり得るか?」

日時 2006年3月8日
モデレーター 沢田義博氏
パリクラブ理事、富士投信投資顧問、常勤監査役
 

【みずほ総合研究所、チーフエコノミストの中島厚志氏のプレゼンテーション】

0308-chine-2まず、中島氏は、現在中国が抱える問題点を次のように指摘された

  1. 大幅な対米、対EU輸出超過。今後、貿易摩擦の先鋭化が予想される。なお。対日輸出入はほぼバランスしている。
  2. 中国国内の大幅な地域間格差。例えば上海と貴州省の一人当りGDPは15倍の差がある。また都市部内でも貧富の格差は年々拡大している。
  3. 中国経済の外資系企業への過大な依存。特に貿易の60%、工業生産の40%は外資系企業が行なっている。
  4. 人民元については、依然として管理された相場であり、資本移動も認められていない。先進国並みの変動相場制、資本移動の自由化移行までには、まだかなりの時間を要する。
  5. 日本企業の対中投資は鈍化傾向にある。従って、中国の成長力は潜在的には十分あるものの、上記の問題点を解決して行かないと、今後、特に2010年以降、高い成長率の維持は困難であると思われる。

Q1(沢田氏):現在中国は「世界の工場」と言われているが、今後「世界の市場」になり得るか?
因みに、野村資本市場研究所の関志雄氏は、2004年の中国の市場規模は北米市場の28%であるが、2010年には38%まで拡大すると予測している。

A(中島氏):今後は内陸部の貧困層(9億人)と沿海部の中間層(4億人)以上の層の二極分解が強まり、後者について言えば、相当程度の消費マーケットになり得るのではないか。

 

【在日フランス商工会議所会頭、ユベール ド・メスティエ氏のプレゼンテーション】

ド・メスティエ氏はご自身の中国駐在経験、その後の中国とのビジネス経験をベースに中国に対する視点を説明された:中国は改革開放政策が奏効し、順 調に高度成長を続けており、世界経済及び世界貿易におけるシェアは近時益々増大中。2001年にはWTOにも加盟し、グローバル経済に参画する努力をして いる。しかし一方では、貧困層も拡大。失業者は1億人超である。

更に、フランス企業の具体的な成功例として、TOTAL社(大連の精油所等で、総投資額10億ドル、年商10億ドル以上等々)等のケースが取り上げ られた。失敗例として、広州のLNGターミナルプロジェクトがあり、このプロジェクトは土壇場で、政治的な理由で中国政府により一方的にキャンセルされ た。

次に中国のエネルギー事情について、詳細な説明がなされた:

  1. 現在は石炭の消費が圧倒的に多く、エネルギー消費全体の3分の2を占めている。
  2. 今後は石油と天然ガスの消費シェアが徐々に高まる傾向にある。2000年の両者合算ベースの27.2%から2020年には32.2%に高まると考えられる。
  3. 今後のエネルギー消費量については、原油換算で2010年には2000年の1.5倍、2020年には2.2倍に急増する見込み。
  4. 電力については、2003年より発電所の増加を急速に進めており、電力不足の緩和に努めている。

結論としては:中国を飛行機にたとえると、有能なパイロットは確かに存在しており、外貨準備高は今後も急速な増加を続け、日本の水準に近づくだろう。また、中国経済は2010年までは好調を維持し、エネルギー消費の増加は外国企業に対しビジネスチャンスをもたらす。

一方問題も多い、政治の経済に対する影響が依然として大きすぎ、地域間の格差も余りに大きい。今後も共産党一党独裁の政治体制が続けられるか?或いは、貿易及び外国からの対内投資の増加が今後も続けられるか?さらに環境汚染問題、特に飲料水不足も深刻である。

Q1(沢田氏): 中国は今後も高度成長を維持できるだけのエネルギーを確保できるか?

A(ド・メスティエ氏):原油の輸入が今後益々問題となろう。アジア最大の輸入国である日本にとっても供給先確保と言う点では競争相手になるだろ う。中国の原油輸入システムはまだ不完全で、今後原油輸入ターミナルやパイプラインの建設を急がねばならない。いずれにせよ、世界経済にとってはインフレ 要因となる。

Q2(沢田氏):英国の雑誌“The Economist”の元編集長ビル・エモット氏は最近の著書「日はまた昇る」(”The Sun Also Rises”)の中で、中国と日本をイソップ寓話のうさぎと亀にたとえ、もし日本が堅実で、繁栄を続け、かつ信頼できる亀である事を示せば、将来の中国と の競争に勝利するだろうと言っています。 コメントは?

A(中島氏):日中両国とも大きな課題がある。中国は今後、現在の高度経済成長を維持するのは難しいかもしれない。特に地域間の大きな格差から生じ る社会不安を回避しつつ、経済構造を内需中心に変えて行かざるを得ないだろう。一方、日本は人口減少社会にはいり、企業は技術進歩による生産性の向上を今 まで以上に図る必要がある。

A(ド・メスティエ氏):中国の成長率は確かにうさぎのように速いが、それは発展途上段階の低い水準からの成長だからであって、成熟経済の日本の場合は低成長でも、増加額は極めて大きい。従ってまだ比較にならない。

Q3(沢田氏):中国において、日仏両国は今後どのように協力を更に深めて行けるだろうか?

A(中島氏):過去、日本企業は中国とのビジネス経験の深い台湾企業と共に中国進出を行なったが、今や、同じ事をフランス企業が日本企業と組んで行なえるのではないだろうか? 更に販路を有する日本企業と技術力のあるフランス企業の連携も考えられる。

A(ド・メスティエ氏):既に1980年代にTOTAL社と出光等の日本企業との中国南部での油田開発の成功例がある。同様の連携を中国における生産などで行なう事は十分に可能である。

 

【フロアとの質疑応答】

Q1(ESSEC大学、ローラン・ビバール氏):今後、中国が“世界の市場”になる為にはどうしたら良いか?

A(中島氏):中国全体が世界の市場となる事はあり得ない。一つの方法は、内陸部の貧困層に移動の自由を与え、沿海部に住まわせる事であるが、これ はそう簡単ではないだろう。また、現在の共産党の一党独裁下では、連邦制も難しかろう。また、今後「世界の工場」としての中国の機能が益々発達すると、結 果的に人民元の切上げを余儀なくされ、輸出が難しくなり、内需を大幅に拡大せざるを得なくなるのではないか?

Q2(東京大学、池上久雄氏):中国の法制度や会計制度の未整備のため、多くの日本企業は困難を経験してきたが、TOTAL社は成功を収めている。TOTAL社の場合そうした困難には遭遇しなかったのか?

A(ド・メスティエ氏): 奇跡をもたらすような秘訣は特にない。中国でのビジネスは大変難しいと考えている。失敗しているフランス企業の例も数多くある。中国で巨富を築いたフラン ス企業は未だないと思う。これが現実である。ただ、自動車や船舶の製造は今後徐々に中国で行なわれるようになるのではないか?

Q3(ドイツ証券、高橋衛氏):ベルリン・オリンピックの8年後、モスクワ・オリンピックの8年後にはそれぞれ大きな政治的な変化が起きている。北 京オリンピックの8年後にも大きな変化があると仮定するならば、また既に指摘されている様々な課題を解決する為には、現在の市場経済的共産主義の中国型と 民主主義かつ資本主義の日本型のどちらがより適当か?

A(中島氏):中国のような発展途上国と異なり、先進国の殆どが民主主義国家であり、比較的高い成長率を維持している。中国の場合もある時点で政治 体制を民主化することが必要となろう。そうすれば、社会的な不満もより吸収しやすくなるはずであり、かつ相応の経済成長も期待できるだろう。

 

【在日フランス大使館経済部 経済公使 ジャン-イヴ・バジョン氏によるまとめ】

1.日本:強みとしては、

  1. 対中輸出、対中投資はフランスの10倍である。
  2. 歴史的には総合商社が市場開拓に努めてきた。
  3. 資本財に強い。
  4. 日本製品の品質は高い評価を得ている。などが挙げられる。

弱みとしては、

  1. 政治、外交関係
  2. 日中国民の気質が著しく異なる事。

2.フランス:強みは、

  1. 政治、外交関係が良好。従って航空機、通信、輸送などの面で成功を収めている。
  2. フランス人の気質と似ていて、よく理解できる。

弱みは、

  1. 資本財に弱い、
  2. 中国の市場は未だ、フランスが強みを持つ消費財市場にはなっていない事である。

本日のデバで、中国には多くのリスクや課題がある事が分かった。例えば環境問題、通貨制度等である。我々皆が中国に対しては懸念を持っている。しか し、中国は当面成長を続けるであろうし、その潜在力は依然として大きく、引続き様々な機会を提供してくれるだろう。日仏両国はその相互補完性に着目し、今 後も大いに協力できるのではなかろうか?

レポート:パリクラブ理事、沢田義博氏