【森本真樹氏】
在エチオピア日本大使館一等書記官(政務班長)。2年8ヶ月のパリ勤務(内政担当)を経て、現職。アフリカ情勢、特にエチオピア、ジブチ、ソマリア情勢の フォローに携わり、これら諸国と日本との二国間関係、対AU(アフリカ連合)関係、紛争予防、 平和の定着等で、いかに日本が重要な役割を演じることができるかについて取り組みを行っている。
日時 | 2005年10月24日(月)12時~14時 |
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在エチオピア日本大使館一等書記官(政務班長)。2年8ヶ月のパリ勤務(内政担当)を経て、現職。アフリカ情勢、特にエチオピア、ジブチ、ソマリア情勢の フォローに携わり、これら諸国と日本との二国間関係、対AU(アフリカ連合)関係、紛争予防、 平和の定着等で、いかに日本が重要な役割を演じることができるかについて取り組みを行っている。
日時 | 2005年10月24日(月)12時~14時 |
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日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催
日時 | 2005年10月19日(水)18時30分~ |
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パネリスト | 増渕文規氏 (司会兼 パリクラブ常任理事 三菱商事(株)理事・監査役室長) フィリップ・オルシニ氏 (日本大学大学院アソシエートプロフェッサー) フィリップ・ドネ氏 (アクサ・ジャパン・ホールディング(株)・アクサ生命保険(株)代表取締役社長) |
経済・社会のグローバリゼーションが進む中、フランスに代表される大陸欧州型の社会民主主義的モデルはどう評価されるのかということに、長年強い関心を持ち つづけてきました。米国人に揶揄されるところの「古い欧州」のモデルとして、歴史上の使命を終えつつあるのか、或いは米国型グローバリゼーションに対抗しうる人間系の優しいモデルとして、我々日本人も参考にすべきモデルなのかということです。
欧州では2010年をターゲットに雇用や社会政策を重視した欧州型の経済成長を持続し、世界で最も競争力のある知識経済を実現することをめざしたリ スボン・アジェンダが2000年3月に採択されました。それ以降各国で社会経済モデルの議論が活発に行われています。フランスでは本年5月の欧州憲法批准 を巡っての国民投票の「NON」以降、現政権はフランス・モデルの優越性を喧伝しています。国民のグローバリゼーションに対する反感を考慮してのことでしょう。
10月19日のフォーラムでは、増渕と、日本大学大学院のOrsini助教授、AXA JAPAN HOLDINGのDonnet社長の3人がパネリストとなり、それぞれパワーポイントを使いながら、20分前後のプレゼンテーションを行いました(同時通 訳つき)。その後20分ほど会場と質疑応答が行われました。参加者は総勢48名でした。
増渕は日本人から見たフランス・モデルを図示し、特に国家介入の強さや保護主義、労働市場の硬直性、エリーティズムといったネガティブ・イメージを 指摘しつつも、労働者に優しいことや平等重視・ゆとり重視の姿勢など日本として参考にすべき点は多い旨、どちらかといえばフランス・モデル応援演説を行いました。
Orsini助教授はアングロサクソン・モデル及び北欧モデルとの比較を行い、高福祉・高負担ながら労働市場は柔軟で、失業率も低い北欧モデルの利点を強調されました。北欧モデルになじみが薄い日本人参加者には非常に新鮮な話だったと思います。
Donnet氏はフランス・モデルの「官」の部分は機能不全だが、私企業はグローバル化の波の中で、世界でも高い競争力を発揮している旨説明があり ました。企業負担の重さや労働市場の硬直性など旧来型のフランス・モデルに対しては批判的でした。逆に日本モデルも良いところが多いとのお褒めの言葉を頂 きました。
会場からは、自身の経験を踏まえたコメントや質問等が出て、活発な質疑応答が行われました。
3パネリストの論点・視点がそれぞれ異なるだけに、もっと色々な質問やコメントが出てくる気配でしたが、残念ながら時間の関係で打ち切らざるを得ま せんでした。会場の皆様にも申し訳なく、この点は心残りであり、反省点でもあります。私からは、たとえばOrsiniさんには、北欧型 Flexicurity(労働市場はFlexibleで、Social Securityは厚い)は何故可能なのか、もう少し突っ込んでお聞きしたかったですし、Donnetさんには、硬直的な労働市場と高い企業負担のなか で、仏企業が高い国際競争力を保ち得ている秘訣をお伺いしたかったと思います。
フランス・モデルについては、フランス社会のなかでも特に実業界からは批判の声も多いようですが、世界中が強者の論理のアングロサクソン・モデル一 辺倒というのは、やはり寂しいですね。フランスびいきの私、増渕としては、時代遅れの部分を修正しながら21世紀型のフランス・モデルを目指して欲しいと 思っています。
2005年10月31日
パリクラブ常任理事 増渕 文規
日仏経済交流会(パリクラブ) 主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ) 共催
日時 | 2005年7月6日 |
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場所 | メルシャンサロン |
去る7月6日、パリクラブの初代会長でこのほどパリ日本文化会館館長の任を終わって帰国された磯村尚徳氏の帰国歓迎会「お帰りなさい磯村さん」(CCIFJ と共催)がメルシャンサロンで開催され、同氏を懐かしむ大勢の出席者でにぎわいました。最終的に来場者は135人を越え、会場は活気に満ちあふれました。 その中には名誉会員の稲村光一氏、鈴木忠雄氏、豊島格氏、ヴァイオリニストの千住まり子氏、ファッション・音楽界で著名な永滝達治氏のお顔もありました。
このときの講演で磯村さんは、日本の食べ物や漫画などがフラン人の日常生活に浸透しているなど、日本への関心が広がりを見せていることを紹介されました。
磯村さんは同時に物質的豊かさ、便利さに浸りきって過去の歴史体験を忘れがちであることが日本人の危うさであると指摘され、「自由」に軸足を置いたアメリカのグロ-バリゼイションの時代にこそ、「公正」を追求するヨ-ロッパの民主主義が意味をもつと述べられました。
お話の概要は以下のとおりです.
三度目、十年にわたるフランス滞在を終えてこのほど帰国した。ヘンリ-・ミラ-が矢張り十年のフランス滞在の後1940年に帰国して書いた「冷房の悪夢」と同じような感懐に浸っている。その顰に倣って言えば日本は「楽園」である。それも「完全空調の楽園」だ。
と言うのも、日本では、24時間営業のコンビニや2分間隔で走る電車などしごく 実用的で便利この上ないからだ。しかしその便利さは少しばかりわざとらしく、不自然に思える。
フランスと言った場合日本人の頭にはルイ・ヴィトンやエルメスしか浮かばない。「啓蒙の世紀」や「革命」が何であったのか判ろうとしない。日本の若者はこの天国でぬくぬくと育ち国際関係の現実を知らない。これが日本の脆さである。
他方フランスは「約束された楽園」を追い求めてやまない。ヨ-ロッパは幾多の浮沈を繰り返してきた。そのヨ-ロッパ統合を思い描いてフランスは自分の楽園を捜し求める。
アメリカ流のモデルに代わり得るのは唯一ヨ-ロッパのそれである。今こそヨ-ロッパは強くなければならない。フランスと日本は素晴らしい相互補完関 係にある。経済では長期戦略から具体的な企業活動に迄いたる。その及ぶ範囲は狭いかもしれないが外交分野においてすら相互補完の関係が見られる。
いまや日仏の調和と協力が求められる。それはフランスの叡智と説得力、日本の具体化処理改善能力、この二つの共働である。
【磯村尚徳氏略歴】
日仏経済交流会(パリクラブ)設立発起人代表で初代会長。パリ日本文化会館の設立に携わり、館長を務める。ユネスコ事務総長特別顧問。既往にNHK特別主 幹(専務理事待遇)、報道局長、ヨ-ロッパ総局長、ワシントン支局長。著書に『日本人はなぜ世界が読めないのか-カルロス・ゴーンの成功の秘密』 (2003年、旭出版社)、『ちょっとごぶさたしましたが』(1991年、講談社)、『ちょっとキザですが』(1982年、講談社)ほか。
日時 | 2005年4月25日 |
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場所 | シーボニア メンズクラブ |
講師 | パリクラブ常任理事 三浦一雄氏 |
参加者 | 72人 |
フランスワインと言えば、ボルドー、ブルゴーニュを思い浮かべることでしょう。ところがフランスワインとして最も歴史が古いのは、プロヴァンスであることを ご存じでしょうか。しかもお値段が手頃であることも、魅力の一つです。それではお味の方はどうでしょうか。それを知る絶好の機会が訪れたのです。
講師の三浦氏は自ら、ルベロンを始めとし、プロヴァンス各地の美味しいワインを探し求めて来られた方です。氏はその中から選び抜かれたワインを日本に輸入し、着実に愛好者を増やして来られました。そうした豊富なご経験と、プロヴァンスワインに対する深い愛情により、大変に楽しいレクチャーが実現致し ました。
今回は白ワイン2種類、ロゼ-1種類、赤ワイン3種類が選ばれ、デグユスタシオン(聞き酒)が行われました。 プロヴァンスの地図を背景に、三浦氏 のご説明が始まりますと、いずれもワインに一家言を持つ多くの参加者達、熱心に三浦氏のお話に耳を傾けました。そしてお話が進むにつれ、皆さん思わず唾を ごくりと飲み、ウズウズした気分になりました。百聞は一見に如かず、待望のデグユスタシオンが始まるや、参加者達は堰を切ったように、白ワインとロゼの試 飲テーブルに押し掛けました。秋山、蘆野両理事は黒のヴェストと黒エプロンに身を固め、俄かギャルソン、否、ソムリエに扮し、甲斐甲斐しくサービスに努め ました。悲しや素人の冷や水?汗だくのテンテコ舞いでした。
ここで特別参加のクルワン氏が三浦講師によって紹介されました。フランス食品振興会日本代表を務める同氏は、ご自身がサント・ヴィクトワール山近く のご出身だけに、プロヴァンスワインに対する愛情には並々ならぬものを感じました。氏はマルセーユ訛り?の流暢な日本語で、今やロゼの人気はフランスを始 め世界的に急上昇してます。皆さん大いにロゼを飲みましょう!この嫌味のないコマーシャルに、拍手喝采が送られました。
次に今夕の真打ちとも言うべき、赤ワインの試飲会が始まりました。参加者は怒濤のごとく赤ワインテーブルに押し寄せました。俄かギャルソンの苦戦を見かね、畔柳、小野里両理事も助っ人となり、どうやら無事に試飲会を終えることが出来ました。
Astrosは味もしっかり、ドライで旨い!Luberonってイケルじゃないですか!Chateau de Pibarnonはなかなか深みがありますねー、と楽しい会話の花が一気に咲き乱れました。パリクラブ特有のRendez-vous Franco-Japonaisの和やかな雰囲気に、一同時間の経つのも忘れておりました。
お店の支配人高中さんから、お時間は気になさらぬように、とのご親切なお言葉を頂戴し、ホット胸を撫で下ろしました。何とも楽しい夕べでした。何時 ものように会の運営を支えて戴いたフランス商工会議所の吉田さん、それに特別参加で手助け戴いた三浦講師のご令嬢、有難うございました。
フルザ教授の講演、ディスカッションは、著書の淡々とした書きぶりからは想像がつかないAgressive 且つ熱のこもったものであり、時の移りを感じさせませんでした。あらゆる意味でレヴェルの高い優れた会合でした。質疑も講壇に立って述べられるのではな く、参加者一同の真ん中に席を占められて応対されると云う、あたかもゼミのような和やかな雰囲気でした。新年度から社会経済委員会管掌副会長を依嘱され、 今回司会を務められた久米五郎太氏の解説紹介記事を下記掲載します。
日時 | 2005年4月20日 |
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講師 | ドニーズ・フルザ教授 |
4月20日、バンク・ド・フランス金融研究財団代表(前通貨評議委員会メンバー)のドニーズ・フルザ教授をお招きし、日本経済についてのディネ・デバを開 催しました。教授は、フランス外務省の派遣員として今般来日、翌日には日仏会館で「ヨーロッパの視点:日本経済「永続」再生論」という題で講演される多忙 なスケジュールのなかで、貴重な時間を割いていただきました。
フルザ教授は1977年の学会で初めて日本を訪問したとき以来、日本経済に興味を持ち、その後も来日、日本企業を多数訪問し、ソルボンヌ大学では日 本経済、アジア経済について教えていらっしゃいます。2002年には“Japon, eternelle renaissance”を著し(PUFYORI.この時点でいち早く日本経済の再生を予測)、2003年末に発刊した第2版は愛知万博の機会に来日した シラク大統領にも献呈されています。なお、日本語版は、パリクラブ会員の瀬藤澄彦氏(ジェトロ・リヨン事務所長)が監訳し、『日本経済「永続」再生論』の タイトルで本年1月彩流社から刊行されています。
デバでの教授の論点は、日本経済は90年代からの長期不振を脱し、その構造が変化し、その結果は03-04年の回復に現れ、再生(renaissance) の途上にあるというものです。1960年代以来の日本型発展モデルの有効性が90年代以降問われており、日本は今後どのようなシナリオのもとで発展してい くかを明らかにする時期にきていると論じています。その際に採用すべきシナリオは、スイス型幸福(自国のみの繁栄をめざす)ではなく、社会を冷静に変革 (revolution)していくシナリオであるべきであり、既にそうした動きがすすんでいると教授は述べます。日本企業はリストラの一方でイノベーショ ン投資を進め、海外投資を受け入れ、中国への生産拠点の移転なども行っている。金融機関の不良債権処理や再編も進み、政府は円高を抑え、金融や貿易投資の 面でアジア地域との連携を深めているなど、日本経済の変革を可能にする条件は備わってきている。そのなかで日本でも資本市場の役割が増し、雇用形態が変化 してきているが、日本がめざす経済社会はアメリカとは異なった形であろうと教授はいいます。そして、教授は興味深い主張をしています。すなわち、日本は鎖 国を含む長い歴史のなかで、「集団の文化」「調和の重視」「プラグマティズム」といった特性を培ってきたので、静かに深いところで、時間をかけて変革をす すめていくことができるのだと。
こうした教授の見方に対しては、多くの企業でリストラが進んだものの競争戦略が充分に展開できていないことを知り、財政赤字拡大と少子高齢化が進む なかで、国民の不安感も強く、長期的に成長率が低いとの予測がでており(日本21世紀ヴィジョンでは1-2%台)、また最近では中韓との関係がギクシャク しているのに直面している日本側の出席者にとっては、おおいに勇気を与えてくれるものであり、日本の将来をもっと楽観してもよいという気持ちを与えてくれ ました(ただし、筆者は少し買いかぶられているような居心地の悪さも感じました)。教授は質問に答えて、日本は少子高齢化に対しては技術進歩を加速するこ とで対応すべきであり、今後潜在成長力を引き上げるべきであるとのコメントで、その点には大いに同感いたしました。
この他、日中台の関係、5月29日のEU憲法国民投票で若しnonが多かったら、バンクドゥフランスの人員削減といった、アクチュアルな問題についても話題が及び、アットホームな雰囲気の中で、論理的でかつずいぶんと踏み込んだ教授のコメントをきくことができました。
4月にはパリクラブ主催のデバが2件続き、沢田さんがフランス経済を論じ、フルゾさんが日本経済を論じました。議論では日仏相互の見方や関心が交差 し、相互に学ぶapprendre l‘un a l’autreというパリクラブのひとつの狙いが果たせたように思われました。
(文責 久米五郎太)
日仏経済交流会(パリクラブ) 主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ) 共催
フレンチパラドックスは、受付期限終了に併せて直ちに締切にする盛況でした。新年度から社会経済委員会管掌副会長を依嘱され、司会を務められたた久米五郎太氏の報告とデバのレジュメを下記に掲載します。
日時 | 2005年4月11日 |
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場所 | 京橋 メルシャンサロン |
発表者 | 沢田義博氏 (富士投信投信顧問 常任監査役、元富士銀行 パリ支店長、元JETRO パリ/DREE(仏経済財政産業省) シニア・アドバイザー) |
特別参加 | 在日フランス商工会議所会頭 ユベール・ドメスティエ氏 |
2005年4月11日、京橋のメルシャンサロンを会場に開催されたパリクラブのデバ・スペシャル「日本経成長への選択肢 – フレンチ・パラドックス?」に57名が参加した。発表者に、富士投信投資顧問 常任監査役、元富士銀行パリ支店長、元JETRO パリ/DREE(仏経済財政産業省)シニア・アドバイザーの沢田義博氏をお招きした。沢田氏の発表に引き続き、特別参加者の在日フランス商工会議所会頭ユ ベール ド・メスティエ氏にコメントをいただいた後、質疑応答を行った。
日本人はフランス人よりはるかに長く働き、国としての投資比率や研究開発額などもフランスを上回っているのに、何故経済成長率では年平均で1%も低 いのだろうか。講師の沢田義博氏(パリクラブ)は、フランスが対外直接投資と外国人観光客の受け入れで日本を大きく引き離していることにその要因があると 注目した。
コメンテーターの在日フランス商工会議所会頭ユベール ド・メスティエ氏は、日本は近年成長率が低かったが、そのなかで省エネルギー化が大きく進 み、海外投資による海外生産比率が高まっていると指摘。また、直接投資受け入れでは外国企業にとって日本のパートナーが必要な市場であり、観光客は地理的 な位置から今後アジアに多く依存していくのではないかとコメント。
フランスのマクロ経済については、アストリ財務公使より、成長率は米・英より低く、労働市場の硬直性やイノベーションへの投資の遅れが問題であり、 人口の高齢化、財政赤字の拡大、公的部門の改革などの課題は日本とも共通しており、今後改革を進めざるをえない状況にあるとの説明があった。会場からは、 移民労働力の活用、民営化の進展、中国向け投資などについての質問もでて、仏日両国経済のトピックスに話題が及んだ。
司会として聞いていて以下のようなことを結論として思った。フランス人はワインをあれだけ飲んでいるが、長生きなのがパラドックスだといわれる。海外投資受け入れでも、国際投資家は立地先としてのフランスは英独に比べの魅力が少ないと評価しているが、実行される投資額は英国に並んでいる。この調査を したERNST&YOUNG社はレポートをフランス・パラドックスと題している。日本の将来を考えると、少子高齢化が進みフランスより潜在成長力が低いと 見られている。その中で日本としても構造改革やイノベーション投資などを着実に進めることが必須である。それと同時に、もっと外に国を開き、直接投資や観 光客、さらには海外の労働力を多く受け入れることで活力を高めるべきであろう。フランスの政策に学ぶところは多い。
(パリクラブ理事:久米五郎太氏)
フランスに滞在した日本人の多くは「夏には約1か月の休暇を取り、週35時間労働で、何故この国の経済は回っているのか?」と感じるのではないだろうか? 事実フランス製造業の年間労働時間は約1,500時間で、日本に比べ約400時間少ない。失業率は日本の2倍以上の9.9%。ストも多い。それにも拘ら ず、過去10年間の平均経済成長率は2.1%と日本より約1%高いのである。何故か?バブルの後遺症などに長期間悩まされた日本に原因があるのは間違いない。又、日本の労働生産性はG7では最下位である。
しかし、それだけだろうか?そこで日仏の経済指標などを比較すると、対内直接投資及び外国人観光客数についての大きな差に気がつく。
まず対内直接投資だが、フランスの対GDP比率は累積残高ベースで 22.2%である。日本は1.3%に過ぎない。フランスは投資対象国としての魅 力を向上させる為、30年近く前から歴代政府が音頭をとり、対投資庁を中心に外国企業誘致に向け不断の努力をしている。外国企業の意見にも積極的に耳を傾け、問題点の解決に努めている。
外国人観光客については、フランスを訪れる観光客は世界一で、年間約7,600万人。その消費額は約4兆5千億円に達する。GDPの2.3%であ る。一方日本の数字は約6百万人、約9千億円に過ぎない。フランスではパリ観光局を始め、各地方が頻繁にキャンペーンを催し、文化省は文化遺産の保護に余念がない。
更に、シラク大統領の強力なリーダーシップの下、各省庁は国益をしっかり見据えた戦略を立案、実行している。この辺りにも原因がありそうだ。日本も 小泉首相の指示により、遅ればせながら対日直接投資額及び外国人観光客数の倍増を図るべくキャンペーンを開始した。どうやらワインのフレンチ・パラドック スとは異なり、これは政府の戦略の問題と言えそうだ。