ヒントは、ヨーロッパのどこかの国。官能を使った推理ゲームのよう
テイスティングが始まると、しばし静寂が会場を包みます。真剣勝負としていらっしゃっている方、そしてワインの見識を広げようといらっしゃっている方など様々ですが、それぞれのスタイルでワインに向き合い、その味わいを己が官能を使って引き出そうとしているのです。
照明にワインをかざし、その色を確かめる人。口に含み、そのアロマを広げながら味わう人。そして深く悩む人、同伴者と相談しながら味わう人。さまざまなスタイルでブラインドテイスティングの世界を楽しんでいるようです。
ふと会場を見回すと、その一角には一枚の大きな地図が貼られています。そこには、ヨーロッパ各国の都市の名前が記載されています。ところが、この地図は東西ドイツが統一する前の少し前の時代の地図。「これは、古い地図をあえて貼ったのでしょうか?」と質問が。まるで、推理小説の一幕のような雰囲気を醸し出しています。
楽しんでいらっしゃいますか? と声をかけると「すごく楽しい時間ですが、この問題はとても難しいですね」と参加者のご婦人が。選択形式とは言え、そこには日本ではワイン生産国としてはなじみのない国もあります。
そこで、今回のワインを選んだサントリーワインインターナショナル(株)企画管理本部の柳原さんにこのラインナップに隠されたメッセージをうかがってみました。
「ブラインドテイスティングはあくまでゲームですから、これができないとワインの味が分からない人なのかというと、それは誤解です。ただ、ブラインドテイスティングに挑戦することで、今までの自分の評価がラベルなどの情報に左右されていることが分かったり、自分の本当に好きなアロマや味わいをフラットな状態で発見できたりするのではないでしょうか。
今回選んだ15本は、フランス、イタリア、ポルトガル、スペイン、オーストリア、ドイツ、クロアチア、ブルガリアの8カ国から選んでいます。それぞれの国の味わいの特徴を表現したワインを選んでいますし、日本人には馴染みの薄い東欧のワインも加えました。このブラインドテイスティングを通じてより多くの国の味を知って欲しいと思ったからです。今日は新しい発見を持ち帰って欲しいですね」
と柳原さん。選択肢にはひっかけ問題も潜ませるなど、ゲーム性を高める要素も盛り込んだそう。お話を伺っている間に会場は、賑わいを見せてきました。ワインが少しずつみなさんの体に入って、会話の花を広げてきたようです。