【レポート】講演会『フランス料理の視点での日仏間の経済的緊密化とその発展』

講演会『フランス料理の視点での日仏間の経済的緊密化とその発展』

ナポレオン時代の終焉以降、フランスが優れた外交と食文化により、祖国に、欧州に果たした役割。その後の万国博覧会や近代オリンピック開催を通じ、民主主義の意義、平和的世界化への取り組みとともに、フランスは文化大国、「観光立国」となっていく。19世紀後半から、セザール・リッツの活躍でホテル業が高く評価されるようになり、パートナーであったシェフのオーギュスト・エスコフィエにより、フランス料理・レストランにおいても、質高く、多くのお客様を迎える必要性からの近代化が図られ、美食の大衆化につながっていく。この優れた食文化・産業は、人と文化の交流とともに、「海外需要」にまで広がりをみせ、国際化が進むこととなる。また、交通や情報技術の発達とも大きく関わり、自動車社会の到来と関わるミシュランガイドブックの登場に例をみるように、ホテルやレストランの格付け、人々の行動を支える、促す情報における重要な役割を果たしてきたこと。三ツ星レストランとは、わざわざ足をのばしてまで訪れるべきお店として評価されることからは、自然敬愛と地方性、食材における地産地消等、伝統文化の継承と観光資源としても、「地方創生」と関連している。

講演会『フランス料理の視点での日仏間の経済的緊密化とその発展』

戦後のフランスでは、60年代の学生と「女性の自立」、70年代以降は、ヌーベル・キュイジーヌ、その後に世界と関わりを持つシェフの挑戦、21世紀に入り、エレーヌ・ダローズ、アンヌ・ソフィ・ピックなど「女性」シェフの活躍で、フランス料理はさらなる美意識の高まりへとつながっていく。近年は欧州経済の危機を経験し、料理そのものは、主材料重視の味本位傾向が強くなり、コストパフォーマンスを評価し、味覚としては、油脂分や塩分は控えめとなり、「健康」意識に向いている。国際交流が進む中で、日本の長所である、完璧主義と卓越した技術力、素材の見極め、衛生観念の高さや食文化的な健康志向、コンパクトミニマリズムは、近年のフランスや欧州の景気変動、嗜好変化においても、有用に活かせる特性であり、フランスで日本人シェフによって仕上げられるフランス料理がもてはやされていることで証明されている。それに伴い、ゆず、わさび、和牛など日本食材が取り入れられ、日本の食器、包丁なども高い人気となり、フランス料理における日本化が垣間見られるように感じている。

Le+point

Le Pointというフランス誌の表紙の紹介は非常に面白かった。キュリー夫人、ルイ・パスツール、ココ・シャネルなど著名フランス人を紹介する特集の表紙であるが、中央にカラーで一人大きく映っているのはポール・ボキューズであった。フランスではいかにシェフの地位が高いかを見せている。