講演会「グローバライゼイションと企業経営」 シリーズその3:「グローバライゼイションの中でのフランスの文化的経済的な魅力-交差した視点」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)共催

日時 2006年7月4日(火)18時30分~21時
会場 メルシャンサロン
スピーカー ■ジャン=ルイ・ムキエリ氏
フランス大使館文化参事官 ソルボンヌ大学経済学教授
司会 ■増渕文規氏
パリクラブ常務理事 三菱商事(株)理事・監査役室長

【ジャン=ルイ・ムキエリ氏 ご略歴】

0704-francebunka-11950年11月生まれ。パリ第一大学の経済学部修士課程終了・国家博士号取得。
1991年より第一級教授、国内外の数多くの大学で教授、研究活動。
2004年9月より在日フランス大使館文化参事官。
著書は国際投資・国際企業論・貿易の分野で多数。
近著は「Multinational firms location and the new economic geography(2004)」
「International Economy(in French, 2005)」

 

7月4日に日仏経済交流会主催、在日フランス商工会議所(CCIFJ)共済で頭書講演会を行いました(於メルシャンサロン)。
講師はフランス大使館文化参事官で、ソルボンヌ大学経済学教授のジャン=ルイ・ムキエリ氏で、50人以上の参加者を得ました。

0704-francebunka-2外国人を惹きつける「国の魅力」とは何かについて、「外資」、「観光客」、「留学生」の3つのアングルで「国のATTRACTIVENESS」を語って頂き ました。グローバライゼーションが進む世の中だからこそ、差別化されたその国のATTRACTIVENESSが益々重要になるし、そのための努力・工夫も 重要だということを分かりやすく説明されました。久しぶりに大学の名講義を聴講したような気持ちになった方も多かったと思います。中立的で冷静なフランス のATTRACTIVENESS分析の前に、もしもフランスのお国自慢ならと反論の機会を窺っていた人(筆者もその一人)には、少々肩すかしだったかも知 れません。よく考えれば経済学の権威が政治家か街のオヤジのようなお国自慢をするわけはありませんね。

0704-francebunka-3二つのキーワードが特に印象に残ります。
一つは「Tyranie de la Distance」。近隣絶対優位の原則とでも訳せましょう。経済関係でも観光でも留学でも結局近い者同士の関係が一番というのが、はっきり統計に出てい るそうです。隣の国とは特に親しくしなければならないところですが、これが出来ないことが日本の近隣外交の泣き所と(筆者は)思っています。(質問を受 け)フランスだってドイツとはいろいろあったけれど過去を乗り越えて関係修復に努めたと、ムキエリ氏はコメントされておりました。
もう一つは「Agglomération」。文化や経済の集積のことです。経済の方は「工業団地」とか「ハイテク団地」で集積の重要性は知られています が、文化でも集積がないと集客できないとのことです。たとえばパリ周辺は集客が増えていますが、アルザスなどは年々落ち込んできています。

0704-francebunka-4_gd活発な質問、コメントが交わされました。特に「Tyranie de la Distance」に関する質問が多かったようです。フランスは文化の国というイメージが定着していて、投資先決定に際し、このイメージがマイナスに働く のではないかという質問がありました。ムキエリ氏は「投資家はイメージには引っ張られず最後は合理的な判断をするし、フランスはEUと一体で、そのトータルの魅力で判断される。又文化大国というイメージは経済的側面を補完・強化するものだ(complémentaire)。」とコメントされました。
ムキエリさんは8月に文化参事官の職を終えて学者生活に戻られるとのこと。

ご多忙にもかかわらず、すばらしいご講演をたまわり、種々質問に丁寧にお答え頂きました。あらためてお礼を申し上げたいと思います。

2006年7月10日
日仏経済交流会 増渕 文規