【レポート】第65回Rendez-vous franco-japonais

これからのパリクラブが進むべき道は

続いては池上氏。三菱商事時代の1974年、突然のフランス赴任が決まり、大学時代にドイツ語しか専攻していなかった池上氏にとってはまさに青天の霹靂だったうえ、オルリー空港での日本赤軍逮捕、日本赤軍によるオランダ・ハーグのフランス大使館襲撃など、大変な出来事が続いていた時期でした。
その後、パリクラブ会長を務められた2000年からの4年間は、かつての日仏摩擦とは対照的に双方が協力しあわなければやっていけない状況であり、日本へ来たフランス企業の数がアメリカに次いで2位になるなど、明るい雰囲気に満ちていたそうです。「会長在任中に10周年を迎え、記念の会報を作ったのですが、いま改めて見直すと、楽しいことばかりあったのだなと思い出します。また在日フランス商工会議所ベルナール・アンケ会頭とパリクラブ会長の連名で、日仏政府に対し日仏社会保障条約の早期締結の要望書を提出したこと、フランス商工会議所の招きでパリにミッションを送って、日仏経済交流について話し合ったこと等が思い出に残っています。」と、懐かしそうに振り返られていました。

池上氏

池上氏

久米氏は関本会長時代に会長代行を2年間担当され、主に日仏修好条約150年の記念行事に携わり、財政金融、投資、三国協力、ワインを巡る交流などの報告書をまとめ、日仏経済関係のあり方につき提言もされました。(サイトのパリクラブヒストリー、出版物からアクセス出来ます)会長就任後は、東日本大震災があったり、リーマンショック後の経済危機に見舞われたりと社会全体が沈みがちだったうえ、当時のサルコジ大統領があまり日本への愛着を持っていなかったこともあり、池上会長時代のような明るいムードではなかったようです。
パリクラブ20周年を迎えるにあたり、「もっと若い人に入会してもらいたい」との思いを抱いており、それはフランス大使館も希望していることでした。そこで、それまでの活動をまとめて広報する意味も込め、2012年に『フランス人の流儀―日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』を上梓。ビジネスを通じてのフランス文化の紹介に尽力されました。
今後のクラブの在り方については、「ビジネス以外のフランスの楽しさも伝え、間口を広げる時代になるのでは」と提言されていました。

久米氏

久米氏

瀬藤氏は、この25年をグローバリゼーションが激しかった時期と位置づけ、中国の台頭により日本の地位が低下していると指摘。この見解については、このあと磯村氏が「フランスの優秀な学生は、中国語よりも日本語を第二外国語に選択していますし、幼いころから日本のポップカルチャーに親しんでいることもあって、本能的な親近感が強い。日本の地位低下などということはあり得ません」と、嬉しいフォローをしてくださったのですが。
瀬藤氏によると、近年は新入会員の10人に8人が女性とのこと。「革命的な構造の変化が起きており、もっと女性の登用を考えるべき。女性会長が誕生してもいいと思っています」との考えを示されました。
また、今後の方針として、①総会と幹事の所掌範囲を広げる②海外や地方もフォローする③会則の目的に「社会的貢献(CSR)」を追記する――ことを提案され、「一国に対してこれだけの団体が存在する国はフランス以外にありません。それだけフランスが愛されている証明といえますが、他団体との連携、そして差別化も重要」と力説されていました。

瀬藤氏

瀬藤氏

参加者の声

歴代会長のお話を拝聴したのちは、懇親会が開かれました。磯村氏の発声による乾杯のあと、2017年度と18年度に入会された方々の自己紹介が行われました。今回は18年度に入会されたばかりの3名に感想をうかがいました。なお、3名の方々の入会のきっかけなどは、「メンバーズボイス」でもご紹介しているので、そちらもあわせてご覧ください。

懇親会の様子

懇親会の様子

村上さん

村上さん

まずはお着物姿が艶やかな村上さん。それもそのはず、きもの教室の校長をされています。「歴代会長のお話は、あまりに凄くて、頭が真っ白になりそうでした(笑) 10年前に他界した父が磯村名誉会長の大ファン。テレビで解説されているような明快な語り口で、レベルの高いお話を面白おかしく伝えてくださり、私ももっと勉強しようという気持ちになりました。本日は参加してよかったです。日本とフランスのことをいろいろ学び、自分に出来ることを掘り下げていきたいと思います」

関口さん

関口さん

2人目は関口さん。ここでは紹介を控えさせていただきますが、自己紹介ではフランスの警官のびっくりエピソードを披露され、会場を沸かせていました。「参加されているみなさんは、フランスに対する愛着が深く、とても素晴らしいと思いました。私もとにかくフランスが大好きという世代。共感できることがたくさんありました。磯村さんは、さすがにお話がお上手でしたね。そして歴代会長のみなさんが話すフランス語の格調高いこと!レベルの高さにびっくりしました」

鈴木さん

鈴木さん

3人目の鈴木さんは、NHK福島放送局の局長。磯村氏は大先輩ということになります。
「やはり磯村さんは特別な存在。磯村さんがなさっていることを、微力ながらお手伝いできれば、と思っています。ずいぶんと女性の会員が増えているそうですが、女性や若い会員を増やすための取り組みは、これからのクラブの運営において大事なことだと感じました」

今日までパリクラブを支えてこられた歴代会長のお話は興味深く、25年の歴史を刻むなかで、多くの困難やドラマがあったことを知りました。そして、今回はフランス人の新入会員もいらっしゃったため、関口さんのお話にもあったように、みなさん発言のあとに流暢なフランス語を披露してくださりました。私もフランス語を勉強してみたい!と触発された方も多かったのではないでしょうか。新入会員の方々とともに、30年、40年とクラブがさらに成長していくことを願ってやみません。