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【レポート】第16回パリクラブ輝く会 講演会「松平家から学ぶ和のおもてなし」

7月26日、東京有楽町の保険サービスシステム・セミナールームにて、松平洋史子氏による講演「松平家から学ぶ和のおもてなし」(主催・パリクラブ輝く会)が開かれました。松平氏の祖父は讃岐国高松藩松平家と井伊直弼の血筋で、祖母は、鹿鳴館の幹事長として欧州文化の移植に尽力した鍋島直大の娘である、松平俊子(元昭和女子大校長)です。まさに氏は、近現代における海外との政治外交や文化交流の開拓者たちの薫陶を全身に受けて育ったといっても過言ではありません。松平家直伝“和のおもてなし”哲学に、来場者もじっくり聴き入りました。

関係性から広がる、作法の美しさ・心の優しさ

この日、松平氏の講演は、森由美子パリクラブ副会長の開会の挨拶のあと、紹介者である山木美香氏による松平氏の略歴紹介の後始まりました。

司会を務めたパリクラブの岩間初音理事

司会を務めたパリクラブの岩間初音理事


開会の辞を述べる森由美子副会長

開会の辞を述べる森由美子副会長


松平氏のプロフィールを紹介する山木美香氏

松平氏のプロフィールを紹介する山木美香氏

「私たちはまず、美しくなくてはなりません」松平氏が開口一番発したのはそんな言葉でした。美しさの中で最も大切なのは、立ち居振る舞いとも言う松平氏。「美しい」という彼女の言葉には身体的な姿勢という意味合いと同時に、常に他者との関係性というニュアンスが込められています。たとえば、複数の「お客様」に対する挨拶の手本を、弧を描くような動きと共に見せるとき、確かにそれは、誰もが“ああ、これが武家のしきたりの中で培われた美しさか”と納得してしまう所作なのですが、その一挙手一投足は、一人でも目線から外れてしまう「お客様」がないようにという心遣いの顕れでもあるのです。
それは、人間の営みの中で最も個人的なものである「食」について語るときも変わりません。松平氏は幼少時、「私は、家の主人がお代わりをしたとき以外は、けっしてお代わりをしていけないと教えられて育ちました」といい、松平家ではそのことを、「腹八分目」と呼んでいたそうです。これは、“残りの二分は人のためにお残しなさい”という意味であり、 “自分の人生の二分を人のために役立てた喜びは、渡した以上の喜びとなって自分の元に戻ってくる”という教えである、といいます。同様に、「無駄なものを買わない」という教えについても、それは我慢することで、「本当に必要なものを見付ける」ことであり、そうすることで「人にも物にも余裕を持つことが出来て、優しさが広がるのです」と話します。

「松平家の挨拶は、『これからあなたとお話するんですよ』と、相手を懐にお迎えすることなんです」と話す松平氏

「松平家の挨拶は、『これからあなたとお話するんですよ』と、相手を懐にお迎えすることなんです」と話す松平氏

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【開催済】第16回パリクラブ輝く会 講演会のご案内「松平家から学ぶ和のおもてなし」

日本人だから知っておきたいホスピタリティの技術

この度、徳川御三家の一つ 水戸徳川家の流れを汲む讃岐国高松藩松平家の末裔である松平洋史子様による講演会を開催致します。

2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。
それは、全世界の人々に日本のものに触れ日本の心を知って戴き、日本伝統文化であるおもてなしの心を深く理解して戴くチャンスです。
美しく・優しく・逞しく限られた空間と時間を共有する人間同士が美しく自分を磨き優しく人の為に尽くし、逞しく、謙虚に感謝の心で生きていく事は、万国共通の願いと思います。
時代は進化していきますが、人と人との付き合い方はどんな時代でも創造力を持つ事が大切だと思います。

講演内容

  1. 和のおもてなしとは
  2. 日本人なら知っておきたいホスピタリティの技術
    • 美しい 立ち居振る舞い
    • 清らかな 食の営み
    • 優しく 感謝の心
    • 豊かな ものに触れる
    • 穏やかな 節度

皆様と、I for You 宙を通して、皆様と心の糸を結んでまいります事が出来ましたらそれもご縁です。
皆様のご参加をお待ちしております。

開催場所 千代田区有楽町1-1-2東宝日比谷ビル17階
保険サービスシステム セミナールーム
日時 2018年7月26日 木曜日 18時開場
 18時30分 開演
 20時    質疑応答
 20時30分 終了
募集人数 60名
主催 パリクラブ
共催 在日フランス商工会議所
参加費 パリクラブ会員 2,500円
一般 3,000円
(共に松平洋史子様の著書付き)
締め切り 7月25日 水曜日

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松平洋史子

松平洋史子:まつだいらよしこ

1949年京都生まれ。水戸徳川家の流れを汲む讃岐国高松藩松平家の末裔。
祖母・松平俊子が昭和女子大学の校長時代にまとめた松平家に代々伝わる生き方教本『松平法式』を受け継ぐ。
大日本茶道協会会長(三代目)、広山流華道教授、茶懐石・宋絃流師範、一般社団法人日本おもてなしコンシェルジュ協会名誉理事を務める。
おもてなしの講師として講演活動を行っている。

家系図拡大する

【レポート】講演シンポジム「ル・コルビュジエの浮かぶ建築」〜セーヌ川洪水による災害を克服しようとする桟橋プロジェクト~

さる7月11日、恵比寿の日仏会館にて講演シンポジウム「ル・コルビュジエの浮かぶ建築」が開かれました。世界救世軍の依頼でル・コルビュジエが設計した難民収容船アジール・フロッタン(直訳すると、「浮かぶ避難所」)。パリ市内の女性難民の収容を目的に1929年に完成、難民たちの居住施設となっていましたが、老朽化が進み、長らくセーヌ川左岸に係留されたままになっていました。2005年より有志による補修が行われ、今年、新たな“船出”となるはずだったこの船は、2月に起きたセーヌ川の氾濫で、川底に沈みました。引き揚げを経て、新たな局面を迎えたこのプロジェクトについて、再設計の担当者である遠藤秀平神戸大学大学院教授と、桟橋の製作を手掛けた株式会社アロイ西田光作社長、建築家でもあるマニュエル・タルディッツ明治大学特任教授の3名をお招きし、アジール・フロッタンを巡る興味深いエピソードや、プロジェクトの経緯と展望についてお話を伺いました。

司会進行はパリクラブの瀬藤澄彦氏

司会進行はパリクラブの瀬藤澄彦氏

エコール・ド・パリの時代、人々の思いを繋いだ「浮かぶ避難所」が現代に甦る

「現在世界を水の話題が席捲しています」司会の瀬藤澄彦氏がそんなふうに切り出した今回のシンポジウム。確かに、タイの洞窟遭難や西日本の豪雨災害にまつわるニュースが世界を駆け巡った折も折り、セーヌ川氾濫の受難を被ったアジール・フロッタンのシンポジウムが開かれるのは奇遇という他ありません。まずは、2004年からアジール・フロッタンの修復プロジェクトに関わる遠藤教授による講演が行われました。元々アジール・フロッタンは、セーヌ川の石炭を運ぶ船だったといいます。第一次大戦の頃ドイツから石炭が入らなくなり、イギリスから石炭を入れようということになった際、戦時中で鉄が使えずコンクリートの平底船が導入されました。これらは大戦後、廃棄船となってセーヌ川に放置されることになります。そうした船を主に女性難民の救済のために活用しようというアイディアを出したのは、マドレーヌ・ジルハルドという女性でした。そして、船の改装資金が、彼女の同性パートナーであったルイーズ・カトリーヌの遺産であったこともあり、当初ルイーズ・カトリーヌ号と名付けられたのです。ちなみに、今一人の資金提供者は、シンガーミシンの創業者として知られるアイザック・シンガーの娘であり、芸術家のパトロンとして知られたウィンナレッタ・シンガー=ポリニャックでした。彼女は、自身の主宰するサロンの常連であるコルビジェをデザイナーとして指名したのです。船の改装が始まった1929年は、コルビジェの代表作であるサヴォア邸の工事が始まったのと同時期で(ちなみに、この時期のパリには、コルビジェの愛弟子である前川圀男も暮らしていました)、サヴォア邸同様、アジール・フロッタンにも、コルビジェが提唱した近代の建築における5つの理念(屋上庭園、ピロティ、水平連続窓、自由な立面、自由な平面)が濃厚に反映されているといいます。内部は、いかに沢山の人を収容するかを考えて設計されているといい、そんな徹底した機能性にも、コルビジェの刻印を感じさせます。このアジール・フロッタンには、普段作品に自身の署名を残さないコルビジェの署名が残されていたことでも知られており、それを、愛弟子の前川國男が書いたとも伝えられています。署名そのものは間もなく消えてしまったそうですが、その署名の写真を、遠藤教授はスライドで見せてくれました。

遠藤秀平神戸大学大学院教授

遠藤秀平神戸大学大学院教授

さて、こうして1960年頃までセーヌ川を季節によって移動しながら、また1995年頃まではルーブル美術館付近に係留されて、難民たちに寝所や温かいスープを提供していたアジール・フロッタンですが、老朽化による浸水の恐れがあるとして、パリ市より廃船または撤去の要請が救世軍に出されることになります。これを防ぐため、有志が救世軍より購入、修復を始めたのが、今回のプロジェクトの始まりでした。修復後のアジール・フロッタンは、展覧会など文化活動の拠点として新たな生命を得ることになります。工事中の船体を覆うために必要なシェルターそのものも、発信力のあるものにしたいというのが5人の有志の間における共通の希望であり、遠藤さんは、らせん状の帯が船を巻いた大胆なデザインを提案。こうして、リーマン・ブラザーズ・ショックによる中断を挟み、長い年月をかけての修復がようやく終わろうとしていた矢先の洪水でした。リノベーションがスタートした当時5人いた有志のうち2人は既に故人となり、残る3人が現在手を尽くして引き揚げ計画を進めているといいますが、作業自体は、さほど大変ではないとみられているようです。水中の杭にぶつかって穴が開いた部分さえ塞げば再び浮かび上がるという話ですから、不幸中の幸いという他ありません。

株式会社アロイ西田光作社長

株式会社アロイ西田光作社長

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【開催済】講演シンポジム「ル・コルビュジエの浮かぶ建築」〜セーヌ川洪水による災害を克服しようとする桟橋プロジェクト~

日時 2018年7月11日(水)
場所 日仏会館(恵比寿)ギャラリー
アクセス https://goo.gl/maps/FPcLUy47E2z
主催 日仏経済交流会(パリクラブ)
共催 日本建築設計学会、在日フランス商工会議所(CCIFJ)、TMF日仏メディア交流協会、ルネッサンス・フランセーズ
後援 在日フランス大使館
協力 ASJ (アーキテクツ・スタジオ・ジャパン)、株式会社アロイ、旭ビルウォール、日仏経営学会、ALFI、日仏芸術文化協会、日仏経済学会、その他関連団体(学会や団体)など
プログラム

写真展示
 午後6時頃より会場にて本講演に関する写真を展示します。是非ご覧ください。

講演会の部
 司会 瀬藤澄彦・パリクラブ
 開場 18時00分
 挨拶 18時30分 西田光作・アロイ社長

討論の部
 講師 18時40分 遠藤秀平・神戸大学教授
        「歴史遺産、避難民救助船アジールフロッタンの受難」
        アジールフロッタンについては下記をご参照ください。
         http://www.asileflottant.net/index.html
    19時20分 討論対談 ディスカッタント:遠藤教授を囲んで
        マニュエル・タルディッツ・明治大学特任教授
        西田・アロイ社長
 質疑応答 会場からのご質問
    20時00分 まとめ 遠藤秀平・瀬藤澄彦

懇親会 ネットワーキング

申込期限 2018年7月10日 但し定員で締め切り
参加費 会員及び関連団体等の方 1000円、 それ以外の方 2000円 を申し受けます。

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パリセーヌ河オーステルリッツ河畔接岸中のルイーズ・カトリーヌ号

パリセーヌ河オーステルリッツ河畔接岸中のルイーズ・カトリーヌ号

20世紀初頭、ルーアンーパリ間で石炭を輸送していた貨物船は一旦、世界的建築家であるルコルビュジエの手によって160人の避難民を収容する船に改造された。その後、船は歴史遺産とされながらもパリ・オーステルリッツ河岸に接岸されてままになっていたが、日本人建築家・遠藤秀平教授による再設計とアロイ西田社長等による桟橋の製作によってセーヌに浮かぶ船としてよみがえろうとしている。しかし本年2月10日、1929年ル・コルビュジエによって改造され歴史的建造物の指定を受けたこの船「ルイーズ・カトリーヌ号」はセーヌ川に呑み込まれてしまった。ル・モンド紙 (2018年2月12日付)は「ほんの20分足らずで船は水中に消えた。本年2月10日土曜日17時頃、ル・コルビュジエに よって改造された鉄筋セメント製の平底船「ルイーズ・カトリーヌ号」が繋留されている13区 オーステルリッツ橋のたもとでセーヌ川に呑み込まれた」と報じた。

すべてが順調に運べば、今年10月、日仏通商条約締結160周年を記念するイベントとして「ルイーズ・カトリーヌ号」で日本建築展が予定されている。その数ケ月後には、船の誕生100周年を迎える。

講演会では遠藤教授よりこの船の歴史と現状の全貌、西田社長よりその桟橋の製作についてお話しいただき、その意義と今後の見通しについて語っていただきます。巨匠ル・コルビュジエの改造にかかわるこの船に対する哲学とはなにか、現代建築、社会的側面、企業の社会的責任、国際的意味合い、などについてこの船が私たちに問いかけるものは何かをパネリストの方々と語っていただきます。そして会場の参加者との対話を通じてこの日仏協力プロジェクトへの理解を深め、それが日仏両国間の相互交流が一層、深まることを期待するところです。

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講演者

遠藤秀平

遠藤秀平神戸大学大学院教授  建築家 / 神戸大学大学院教授 滋賀県生まれ 京都市立芸術大学大学院修了(美術博士)
遠藤秀平建築研究所設立 ザルツブルグサマーアカデミー教授 神戸大学大学院教授 東北(潘陽)大学客員教授 天津大学客員教授

マニュエル・タルディッツ

マニュエル・タルディッツ建築家 明治大学特任教授 フランス建築学校NO.1 東京大学修士号・工学博士課程 みかんぐみ設立 ICSカレッジアーツ副校長

西田光作

西田光作アロイ社長

司会

瀬藤澄彦

瀬藤澄彦パリクラブ参与 早稲田大学法学部卒 パリ・リヨン・モントリオール・アルジェ・ジェトロ所長次長 パリ仏経済財政省DREE出向勤務 帝京大学経済学部教授 諏訪東京理科大非常勤講師 パリクラブ前会長 ルネッサンス・フランセーズ会長

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【開催済】THE HEART OF BUNRAKU in Tokyo -大阪の庶民が愛した“文楽”の魅力に迫る-

THE HEART OF BUNRAKU

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太夫、三味線、人形 の3要素で成り立つ“文楽”。
人形遣いの吉田勘彌氏が実演を交えて解説します。
人気の演目「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)」も披露!
今秋のニューヨーク開催に先駆けた東京公演です。
The puppet master, Kanya Yoshida, will guide us in appreciating the sound of the shamisen,
instruct us in how it takes three people to bring one puppet to life,
and enlighten us about the Joruri chanting.
Get a first look at this event scheduled for New York in the fall of 2018!

出 演 | Performer

豊竹希太夫、鶴澤清志郎、吉田勘彌、桐竹紋臣、桐竹勘次郎
Toyotake Nozomidayu, Tsuruzawa Seishiro, Yoshida Kanya,
Kiritake Montomi, Kiritake Kanjiro

日 時 | Date

2018年6月30日(土)
午後2時半開演
Saturday June 30th, 2018 at 2:30PM

場 所 | Venue

日本財団ビル2 階 大会議室 東京都港区赤坂1−2−2
The Nippon Zaidan Building 1-2-2 Akasaka, Minato-ku Tokyo

入場料 | Tickets

[ 一般(Adult)] 3,500円
[ Paris Club 会員] 3,000円
[ 学生(Student)] 2,000円
▶ Peatix( チケット販売サイト)
http://heartofbunraku.peatix.com
▶ 能ソサエティー ホームページよりお申し込み
http://www.nohsociety.org

主催:能ソサエティー、笹川日仏財団、日仏経済交流会(パリクラブ)
助成:公益財団法人東芝国際交流財団
後援:能ソサエティー後援会 協力:JSPS科研費 JP17K02401
Organized by Noh Society, Fondation franco-Japanaise Sasakawa, Groupe
Economique Franco-Japonais (Paris Club)
Supported by TOSHIBA INTERNATIONAL FOUNDATION, Noh Society Koenkai
Co-Operation : JSPS KAKENHI Grant Number JP17K02401

【レポート】第15回パリクラブ輝く会&第4回日仏経済フォーラム共同講演会「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」

6月26日、恵比寿の日仏会館で、日本安全保障危機管理学会の上席フェローでもある新田容子氏による講演「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」が開催されました。電子的な手法を用いて、政府や企業の情報を盗み出すサイバーエスピオナージが日々その脅威を増しつつある現在、我々はどうしたらよいのか。新田氏は、激烈を極める諸外国の諜報戦の一端を明かすと共に日本人の意識変革の必要性を訴えました。

今、全世界がサイバーエスピオナージの標的に

今回「あなたも狙われている」というタイトルが付けられていますが、実はサイバーエスピオナージは、個人を狙ったものより、むしろ外国が国主導で ハッカーを養成し、わが国の企業を標的に情報を盗むといったものに対して警鐘を鳴らさねばならない段階に来ている――。と話す新田氏。現在、貿易情報の窃盗を目的としたサイバーエスピオナージ(情報通信技術を用いた諜報活動)の応酬は、国家間で熾烈を極めており、その発端は、2001年に起きたアメリカの同時多発テロに遡るといいます。当時、安全 保障の名の下に、官民一体となり、「テロ情報」として自国民の個人情報ばかりか諸外国の機密情報をも秘かに収集していったアメリカは、そうした国家機密をエドワード・スノーデンという国家安全保障局の一職員によって持ち出され、それが世界に向けて暴露された際に、 G7内では激しい対立が起きたといいます。このとき、 フランスもアメリカを公然と非難しましたが、それは、アメリカがフランス国内の企業情報までも収集していたからでした。その後、サイバーエスピオナージが世界的にかくも殷賑を極めるに至った理由は、それが、所謂「ヒューミント」という、諜報のための人材を外国に送り込んでの活動よりも、遙かに安上がりであり、しかも仮に露見しても責任の所在が曖昧であることによるといいます。確かに、先のアメリカ大統領選では、ロシアがドナルド・トランプを勝たせるため、政党や個人にサイバー攻撃を仕掛けていた事実がアメリカの情報機関によって明らかになっていますが、ロシアは未だに否定し続けています。また、中国の多くの企業は、共産党と繋がっており、ドイツなどは、中国のサイバーエスピオナージを脅威として、最近では公然と挙げるようになりました。中国やロシアのそうした行為に対し法的な措置を講じることが出来ないのは、現在国連にすらサイバーエスピオナージの規範が存在しないからに他ならず、最近国連として規範を定める目的で出来たGGE (Group of Governmental Experts)というワーキンググループも、数年かけて議論した末、昨年の会合で決裂したそうです。どの国も、情報を抜くことで経済的アドバンテージにより他国より抜き出ようとしているわけです。一方、日本の状況はどうかというと、2011年に三菱重工の潜水艦、原子力発電プラント、ミサイルなどの研究、製造拠点でウィルス感染が確認された事件によって、企業も徐々に意識が変わったものの、都内で講演をしてもまともに取り合って貰えないことが多く、新田氏も暗澹たる気持ちに陥ったといいます。しかし、この2年ほどで、警察白書や防衛白書にもサイバーエスピオナージという言葉が明記され、かつてとは隔世の感がある、と新田氏は話すのでした。

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