【レポート】フランスワインの品質を守り抜くAOC法を学ぶ

AOC設立の背景にはより良いワインを作り続けるための闘いがあった

講義は、まず世界のワイン市場とフランスワインの現在についての考察から。世界のワイン消費が増えている中においても、古代ローマ時代からワインは過剰生産と戦ってきたそうです。AOCの根底にあるのは「できるだけワインを造らせない」ことだったそうです。つまり、ワインの生産調整をするための法律でもありました。

講師の蛯原健介先生。ブルゴーニュワイン騎士団シュバリエ、日本ワイン協会理事なども務めワインに関する造詣の深さは圧巻です。

講師の蛯原健介先生。ブルゴーニュワイン騎士団シュバリエ、日本ワイン協会理事なども務めワインに関する造詣の深さは圧巻です。

生産が過剰になるということは、まがい物が流通するということ。ここで蛯原先生の講義はフランス第3共和国時代のワイン事情になります。この時代にフィロキセラによる被害でワインの生産量が激減。そこに不正なワインや輸入ワインが市場に出回ってしまいました。被害を克服した後に待っていたのはワインの生産過剰。さらに不正ワインや輸入ワインは本当のワインを造っている生産者を苦しめることになりました。砂糖やレーズンを混ぜたようなものもワインとして売られていたそうです。そこでワインの定義を確立し、まがい物を市場から追い出そうとした動きも後のAOC法につながることになります。

蛯原先生の講義に聞き入るみなさん。

蛯原先生の講義に聞き入るみなさん。

そして、次に出てきたのは産地偽装問題。これは現代の日本でも抱える問題だと言えます。1905年には、原産地を偽って販売した者への罰則規定を定めるなど100年以上前にフランスはこの問題を解決しようとしていたと言うから驚きです。その産地を確定させるためのルール作りの歴史を蛯原先生は詳しく解説していただきました。産地偽装を防ぐための原産地呼称制度の誕生には何十年もの議論が必要だったことがよく分かる内容です。さらに、品質向上を担保するための制度についても解説。この長年の努力の結晶としてAOC法があり、それがEU全体のルール作りに大きな影響を与えることが分かりました。講義中にはワインも出され、その香りと味わいを楽しみながら聞くことができました。

途中、フランスワインを試飲しながらのレクチャーとなりました。

途中、フランスワインを試飲しながらのレクチャーとなりました。

最後は、日本の動き。特に山梨ワインにフォーカスし「山梨」を表示するための厳しい基準を解説。その品質の高さを語っていただきました。そして、お話は農産物の地理的表示制度にも言及。これからの日本の農業においても地理的表示は重要視されていくだろうと解説しました。