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【レポート】第15回パリクラブ輝く会&第4回日仏経済フォーラム共同講演会「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」

6月26日、恵比寿の日仏会館で、日本安全保障危機管理学会の上席フェローでもある新田容子氏による講演「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」が開催されました。電子的な手法を用いて、政府や企業の情報を盗み出すサイバーエスピオナージが日々その脅威を増しつつある現在、我々はどうしたらよいのか。新田氏は、激烈を極める諸外国の諜報戦の一端を明かすと共に日本人の意識変革の必要性を訴えました。

今、全世界がサイバーエスピオナージの標的に

今回「あなたも狙われている」というタイトルが付けられていますが、実はサイバーエスピオナージは、個人を狙ったものより、むしろ外国が国主導で ハッカーを養成し、わが国の企業を標的に情報を盗むといったものに対して警鐘を鳴らさねばならない段階に来ている――。と話す新田氏。現在、貿易情報の窃盗を目的としたサイバーエスピオナージ(情報通信技術を用いた諜報活動)の応酬は、国家間で熾烈を極めており、その発端は、2001年に起きたアメリカの同時多発テロに遡るといいます。当時、安全 保障の名の下に、官民一体となり、「テロ情報」として自国民の個人情報ばかりか諸外国の機密情報をも秘かに収集していったアメリカは、そうした国家機密をエドワード・スノーデンという国家安全保障局の一職員によって持ち出され、それが世界に向けて暴露された際に、 G7内では激しい対立が起きたといいます。このとき、 フランスもアメリカを公然と非難しましたが、それは、アメリカがフランス国内の企業情報までも収集していたからでした。その後、サイバーエスピオナージが世界的にかくも殷賑を極めるに至った理由は、それが、所謂「ヒューミント」という、諜報のための人材を外国に送り込んでの活動よりも、遙かに安上がりであり、しかも仮に露見しても責任の所在が曖昧であることによるといいます。確かに、先のアメリカ大統領選では、ロシアがドナルド・トランプを勝たせるため、政党や個人にサイバー攻撃を仕掛けていた事実がアメリカの情報機関によって明らかになっていますが、ロシアは未だに否定し続けています。また、中国の多くの企業は、共産党と繋がっており、ドイツなどは、中国のサイバーエスピオナージを脅威として、最近では公然と挙げるようになりました。中国やロシアのそうした行為に対し法的な措置を講じることが出来ないのは、現在国連にすらサイバーエスピオナージの規範が存在しないからに他ならず、最近国連として規範を定める目的で出来たGGE (Group of Governmental Experts)というワーキンググループも、数年かけて議論した末、昨年の会合で決裂したそうです。どの国も、情報を抜くことで経済的アドバンテージにより他国より抜き出ようとしているわけです。一方、日本の状況はどうかというと、2011年に三菱重工の潜水艦、原子力発電プラント、ミサイルなどの研究、製造拠点でウィルス感染が確認された事件によって、企業も徐々に意識が変わったものの、都内で講演をしてもまともに取り合って貰えないことが多く、新田氏も暗澹たる気持ちに陥ったといいます。しかし、この2年ほどで、警察白書や防衛白書にもサイバーエスピオナージという言葉が明記され、かつてとは隔世の感がある、と新田氏は話すのでした。

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【開催済】第15回パリクラブ輝く会&第4回日仏経済フォーラム共同講演会「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」

2018年6月26日(火)開催
講師:新田容子氏 司会:瀬藤澄彦氏

講演の内容

エスピオナージの歴史は12世紀のイタリア半島に遡ります。

サイバー空間の到来により、従来のエスピオナージ活動に加え、そのアプローチは大きく様変わりしています。サイバーエスピオナージは国家レベルでの知的所有権やビジネス機密情報の窃盗の目的としてのツールになっています。

自国のイノベーションを達成するためにデジタルトランスフォーメーションを国家の戦略とし、サイバーエスピオナージを利用している国も出ています。

AI、データ、IOTなど、今世紀の技術革新がもたらすデジタルな経済効果のインパクトは大きい。しかしその反面、イノベーションに潜むセキュリテイの脆弱性には今まで経験したことがないものであり、各国手をこまねているのが実情です。

本講演では、サイバーエスピオナージとは何か、誰がいかにして行なっているのか、国家、企業に多大な被害をもたらすサイバーエスピオナージの背景、現状(日本を含む各国の事例)、また、経済コストの視点から世界にもたらすインパクトについて解説をしていただき、また今後のインプリケーション展望についても言及していただきます。

場所 日仏会館501会議室(日仏会館ホールから変更となりました)
日時 2018年6月26日(火)
 18時00分 受付開始
 18時30分 講演
 19時30分 質疑応答
 20時00分 懇親会
 21時00分 終了
主催 パリクラブ輝く会、日仏経済フォーラム
共催 在日フランス商工会議所、TMF日仏メディア交流協会
協力 公益財団法人日仏会館、ALFI、日仏芸術文化協会、日仏経営学会、日仏関連団体(申請中)
参加費 主催・共催・協力団体会員 1000円
一般 2000円
締め切り日 2018年6月24日

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新田容子氏 略歴

新田容子氏

日本安全保障・危機管理学会・主任研究員・ロシア動向及びインテリジェンス担当 
防衛大学 アドバイザリーボード・サイバー戦概論戦略担当

英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)国際安全保障チームメンバー
G7サイバー専門家会合委員  EU-日本安全保障プロジェクト・サイバーセキュリティ担当  欧州連合・イスラエル・ドイツの「世界のリーダーズプログム」のメンバーに選出される