【レポート】磯村名誉会長時局放談会「2018年は欧州の年 その出足は!」第三部

「ヨーロッパに吹く風」を語る磯村氏は、「逆風」としてドナルド・トランプ政権下のアメリカを筆頭に挙げます。トランプ大統領を巡るメディアの言説は、どうも我が国日本とヨーロッパでは少々温度差があるようなのですが……。

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ブレグジットの交渉での「手切れ金」

ま、そういうことで、外交面でフランスは今順風満帆といった感じなんです。もちろん順風のうちのひとつに、ブレグジットの交渉というのがあります。ブレグジットについはは長くなりますし、予定時間をだいぶ超過しましたので簡単に解説したいと思います。今第一次交渉が去年中に終わっていまして、3つの点が一応の合意を得ています。ひとつはいわゆる人間の婚約関係でいいますと、離婚にあたっての手切れ金みたいなもんですね。実際、「清算金」と呼んでいますけど、これについてテレサ・メイ首相がフィレンツェで行った演説で、イギリスが200億ユーロぐらい払えばいいのかな、と言ったら、EU側がとんでもない、そんなのは話にもならないと。というわけで、最終的にイギリスが600億ユーロ払うという暗黙の合意が出来ました。次の問題が、現在イギリスに暮らす320万人に及ぶEU諸国からの留学生とか学者とかそういう人たちの裁判権や色んな問題をどうするか、という議論になるわけですが、これについてEU側は、ヨーロッパ司法裁判所の規定には従うが、イギリスの法律には従わないと言った。イギリスは、それは主権の侵害だといって突っぱねたんです。昔のイギリスなら巧くいったんでしょうが、何しろ今は閣内が割れているわけですね。メイ首相は選挙を早めてやったりしたんですけど、キャメロンと同じで読みを誤って、今それどころではない。これもEU側の順風の原因となっています。

イタリアの混乱については心配無用

さて、次に逆風のことを考えてみたいと思います。まず、外交面で考えてみますと、たとえばイタリアの選挙では指導力のある政党がいなくて、三すくみみたいな感じになっていますよね。これまでのレンツィ首相が率いた左派が後退して、「30%論」みたいな様相を呈している。いわば現役が惨敗して、中道右派のベルルスコーニが糸を引いている中道右派と、極右のポピュリストが指導者となって勢い付いている五つ星運動それに旧北部同盟との、三すくみの状態なんです。ただ、イタリアが統治困難に陥るというのは、今に始まったことではないんです。クリスチャン・ソテール(ミッテラン大統領時代の経済・財政・産業大臣)が私にメールで言ってきたのは「ヨーロッパの統合は、今『ローマの休日』に入った」と。映画「ローマの休日」は、オードリー・ヘップバーン扮する王女様がローマの休日で楽しい思いをするわけですよね。つまり、“イタちゃんのすることにはいちいち目くじら立てませんよ”というのが、ヨーロッパの大人の解釈であるわけです。だからあまりイタリーの連立がどうだのああだのというのは皆さん、お考えにならなくてよいかと。イタリーっていうのは幸せな国で、天才もおりますしバカも大勢いるので、いろんな意味で大好きな国なんですけど、あまり心配しなくてもいい。むしろ最大の逆風は何か?これはもう皆様の顔に書いてありますが、ドナルド・トランプという大統領率いるところのアメリカであります。

>> トランプの頭脳は8~12歳並み? へつづく