【レポート】磯村名誉会長時局放談会「2018年は欧州の年 その出足は!」第二部

マクロン政権への追い風を語る磯村氏の話は、さきごろフランスとドイツで交わされたエリゼー条約改定へと広がります。極めて野心的な連携を約したこの条約改定の報は、ビッグニュースであるにも関わらず、日本ではほとんど伝えられておらず、要注目です。

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日本とEUに大自由貿易圏が誕生する

実は日本とEUは、EPA協定(ヨーロッパ経済連携協定)というのを去年の暮れに大筋合意しまして、今年細かい詰めをやって、来年1月1日から効力を発します。これによって工業製品の多くは即時撤廃ですし、皆さんもご承知のようにワインの関税が撤廃されるとか、ソーセージやハムやチョコレート、パスタ、さらにはハンドバッグなども関税が取れる。日本からの輸出としては、今自動車には10%の関税がかかっていますけど、7年でこれが全廃される。安部さんのいう大自由貿易圏が出現するわけです。日本とEUのGDPを足しますと、全世界のGDPの28%になります。そして貿易量でいうと、これは私も意外だったんですが、40%近いんですね。専門家の見通しによると、日本とEUのEPA協定によって、かなり貿易量が増大していく状況にあります。今年は2019年の発効を前に、まさに日本にとっても「ヨーロッパの年」といえるわけです。

イギリスのEU脱退

今年はEUの前身であるEEC(ヨーロッパ経済共同体)が出来て (1957年条約調印、1958年発効) 、60年ほどになるわけですが、丁度私は1958年、NHKの若い特派員としてパリに参りました。そのときはヨーロッパ総局特派員ということだったのですが、総局といっても総局長と私と2人しかいなかった。2人になってやっと総局らしくなったというんですが……(笑)。そんなような時代を経験しましたけども、その初仕事のうちの一つがEECの発足を報ずることでありました。その原六カ国はご承知のようにフランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグという六カ国ですね。これによって彼らは、ロベール・シューマンやジャン・モネら先達の意向を汲んで、二度とフランスとドイツが戦争をしない、そしてヨーロッパは一カ国ではとてもアメリカやソビエトといった超大国には対抗出来ないから、一種の第三勢力としてヨーロッパ合衆国的なものを徐々に作っていく――という夢のために一緒になったのです。このEECは、六カ国のうちは良かったんですが、67年からECになりますね。それから92年には今のEUになります。これは28の国なんですけど、来年3月からはイギリスが抜けて27になります。大所帯ですし、広がれば広がるほど色んな問題が出てくる。

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