活発な意見が飛び交った質疑応答
その後、質疑応答に入りましたが、ここでもフランスと日本、そして世界の中の日本を巡って、さまざまな意見が飛び交いました。「果たして今後日本はナンバー1を目指すべきかどうか」という質問には、アベール氏は、ご自身が上海で教えている学生の考え方などを紹介しながら、ナンバー1とナンバー2とかを競うのではなく、この一つの地球で共に暮らす市民として、国家や人々、企業やスタッフたちが、ともに幸せに存続していくことが重要であると説明されました。この「地球市民(Citoyen du monde)」の概念についてより詳しい説明をという声も揚がり、アベール氏は、どこに行ってもそこが自分の家と考え、他の文化を受け入れて慈しむことのできる人ではないかと解説。さらなる分析については、一冊の本が執筆できるくらいの奥深い概念なので、もっと時間をかけて考えたいとのことでした。
「フランスはラグジュアリブランドのイメージが強いが、国のイメージと企業が放つイメージとの関係は」という質問については、アベール氏は、本来、国と商品のイメージは異なると断言。かつて、つくば万博の際、フランスの産業省は最新の技術大国としてフランスをアピールしたかったそうですが、パビリオンのメイン会場にはブランド品ばかりが並び、それがフランス=ラグジュアリブランドというイメージの引き金になってしまったそうです。

フランスにおける日本のマンガ文化の影響について話すエチエンヌ・バラ―ルさん。
現在、フランスの若者文化に大きな影響を与えているのが、日本のマンガ文化。「1980年代にフランスに日本のアニメを輸入しようと努力したものの反応が冷ややかだった。例えば、『キャンディ・キャンディ』は、こんな悲しい物語はダメ、『マジンガーZ』は、こんな残酷なマンガはNGと言われた。しかしなぜ今これほどにもマンガが人気になったのか」といった質問も寄せられました。これについては、参加者のエチエンヌ・バラールさんが詳細に解説。ジャーナリストであるバラールさんは、日本のオタク文化に精通、ヨーロッパに初めてオタク現象を紹介した人としても知られています。バラールさんによれば、1980年代、ミッテラン政権時代に放送の民営化に伴い商業放送局が多く誕生しましたが、コンテンツと予算不足に悩まされる中、低価格で入手できたのが日本のアニメであったため、アニメ放送が増えていったそうです。現在、日本が進めているクールジャパンも日本のイメージの運び役として大きな役割を果たしており、「ジャパン・エクスポ」には23万人もの観客動員があったとのこと。フランスでは、日本のイメージは日本が生み出す「文化」を仲介役として作られていると話されました。
さらに、フランスの中小企業の状況についての質問については、アベール氏は、フランスでは隣国ドイツと比較すると効率的な経営がなされていることが少なく、同族企業で代々成長するドイツの中小企業と比べると、フランスでは代が変わる度に企業経営が悪化する場合が多いとも話しました。