【レポート】磯村名誉会長時局放談会「2018年は欧州の年 その出足は!」第四部

銃撃事件と渡航禁止令

たとえば、ヨーロッパで企業活動をしている日本の大企業は現在1380あるそうですけど、ほぼ全てがヨーロッパでの本社機能をロンドンに置いております。1,2例外がありまして、我がNHKは――私もだいぶ頑張ったんですけど――、ヨーロッパ総局はずっとパリに置いております。日銀だけはパリ、ロンドン、フランクフルト三点をヨーロッパの拠点としてやってらっしゃる。さすが中央銀行は違う!というところですね。パーセプション・ギャップという言葉がありますが、私はヨーロッパと英米について、日本にはパーセプション・ディスクリミネーションがあると思うんですね。たとえばフランスでテロがあると、日本では全部渡航禁止になります。丁度パリの文化会館で理事会が予定されていたんですけど、企業の人はパリには行くなと社命が出ています。だけど、皆さんご存じの通り、今年になってからアメリカの大学のキャンパスで18件もの銃撃事件があったのに、アメリカに出張をやめろという企業はありません。これはもう完全なる差別です。つまりヨーロッパを軽視して渡航禁止にしている。このことは、是非改めてほしいと思います。

間もなくGDPで日本はドイツに抜かれるか

この間、外語大学の渡邊 啓貴さんというフランスのことを非常によく研究してらっしゃる学究の方が主宰された、ユーラシアの戦略問題を考える会がホテル・オークラでありました。そのときの長期展望というのが、2025年というのを里程標として置いていましたが、私はあえて2030年をひとつのターゲット・イヤーとして考えてみたいと思っています。その間の12年間に、大国の力関係が大きく変わることだけははっきりしていますからね。誰が考えても判るのはGDPで、もちろんアメリカが一位ではない。ほぼ中国が一位になる。今のGDPの順序でいうと、アメリカ、中国、日本、ドイツ、イギリス、フランスなんですね。ところが、この間先述のユーラシア関係の会に招かれて改めてびっくりしたことがあります。2010年に中国が日本を抜いて第二位になったとき、中国は日本と同じ4兆ドルくらいのGDPになったわけですね。今どれくらいだかご存じですか?中国は、日本のGDPの三倍になってしまいました。つまり一位のアメリカ、二位の中国、そしてずーっと下がって今の三位を日本はかろうじて保っていますが、もう2,3年でドイツに抜かれる可能性が高い。第三位の地位も危なくなってきているわけです。それから今年中にはっきりすることは、おそらくインドが、かつての宗主国であるイギリスの地位を奪って第五位になることがほぼ確実です。

世界からリーダーとして期待されるドイツ

それからもうひとつ、ギャラップという老舗の世論調査社が、この間134カ国1000人を単位に行いまして、これからの国際的なリーダーの国は何かということで、アメリカについてどう思うかという質問では、オバマ時代に世界の48%の人がアメリカに寄せていたリーダーとしての信頼が、この1年間で18パーセントポイントこの1年間で失って、今や30%です。アメリカの極端な地盤沈下は、どう親米派の人が仰ろうと、紛れもない事実です。それよりも、米中露独四カ国のうちでどの国が世界のリーダーになってほしいかという質問に、41%の人がドイツと答えたんです。そして2位は何と31%の中国。アメリカにリーダーになってほしいと答えたのは、ロシアと共に、4位と5位を占めるというふうになっているのです。私が今日色々申し上げたのは、日本人の中でバブルでちょっと調子がよかったとき、もうヨーロッパに学ぶものはなしと言う人がいました。「フランスが好きな磯村君なんかは、もうちょっと英語を勉強しておくべきだったな」などと余計な御世話を言われたものであります(笑)。しかし皆さん、神様は公平な采配をしてくださる。

>> Euro,Yes They Can! へつづく