【レポート】磯村名誉会長時局放談会「2018年は欧州の年 その出足は!」第四部

Euro, Yes They Can!

それからもう一つ、現在ドイツ語というものをやっている人が少なくなって、マスコミですらドイツを専門にする人が非常に少なくなっています。そんな中で、NHKの後輩で、NHKに愛想を尽かしたというわけでもないんでしょうが、10年ほどでフリーになって、今ミュンヘンにフリージャーナリストとして生活している熊谷徹さんが、二つふるった題名の本を出しています。一つは「ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか」。そして近著では、「5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人」。2015年の12月に自殺した電通の高橋まつりさんは、1ヶ月の残業がなんと105時間。フランスやドイツだったら、経営者は監獄行きですね。NHKだから電通の悪口を言うわけではありませんが、電通のような大きな顔をしている会社でそんな非人道的なことが行われていて、何が世界に威張れるかと思うわけです。まずドイツに学ぶべきことは、生活の実力もある上に、生産性でも日本の1.5倍ということ。やがて我が国は、GDPでも追い抜かれるかもしれません。最後に、私の一番言いたいことを申し上げます。フランソワ・ド・カリエールというルイ14世の外交指南番が述べた、私も大変好きな言葉があるんです。「異文化を理解しなくても好きになることは出来る。しかし異文化を好きにならない限り異文化は絶対に学べない」これは異性の場合でも同じですね。フランスが嫌いだったり、ドイツがSPDがダメだと言ったり、イタリアはダメだと言ってヨーロッパ大陸を嫌っているうちは、ヨーロッパ大陸のことは判りません。ですから皆さん、Euro, Yes They Can!ということで、是非ヨーロッパのことを考えて頂きたいと思います。ご静聴ありがとうございました。

講演終了後は、テーブルを囲んでささやかな立食パーティが開かれました。この日の来場者は、いつもよりややジャーナリストやアーティストといった文化人の方の比率が高く、和やかでちょっとディープな雰囲気が会場には漂っていました。今回も最後に、皆さんの感想をお伝えします。

20年フランスに住んでいるピアニストの成嶋さんは、「パリクラブでの演奏会の合間に、友人に連れてきて貰いました。95年からフランスが毎日毎日めまぐるしく変わるのを目の当たりにしているので、磯村さんのお話には凄く引き込まれました。95年のデモの話では、三週間交通マヒになって船でレッスンに通っていたことを思い出したりしましたね。マクロンさんはピアノをやっていたこともあって、私も興味を持っていたので、とても面白かったですね」と話してくれました。

シャンパーニュ委員会日本事務局の川村さんは、「磯村さんには、国境を越えて活躍している方に私たちが差し上げている『生きる喜び賞』の審査員をお願いしていました。私はフランスの公共放送を毎日観たり、ル・モンドも読んだりしていますが、そこで得た知識って頭の中でばらばらになっているじゃないですか。それが今日のお話では、ひとつの綺麗な絵になっているっていうんでしょうか。うん、なるほど!と思いました」と声を弾ませました。

経済学者の小林さんは、フランスに40年住み、現地の大学で教鞭を執っています。「歴史・哲学・芸術……とあらゆる分野で、フランスは世界を引っ張ってきたわけですが、磯村さんは現在そのことを理解する数少ない日本人ではないでしょうか。私たちは、国力とか経済力の面からフランスをだんだん意識しなくなっています。これは日本人の側の問題だと思う。フランスのインテリ層は日本の文化を理解し意識しているんです。だから少なくとも日本は、フランスをもっと意識する必要があると改めて感じました」と感想を話してくれました。