【レポート】磯村名誉会長時局放談会「2018年は欧州の年 その出足は!」第三部

囁かれる大統領交代の噂

ヒヤッとするのは、どうやらトランプに認知症の兆候が少しあるということを、流石にこの暴露内幕物もはっきりは書いてないですけど、読み様によってはすぐ判ります。そのことが実は、世界の心ある人たちの最も気になるところなんです。この間私が聞いた講演会で、ヘッジ・ファンドの間で今東京の兜町でも話題になっているのは、合衆国憲法修正条項の25条の第4項というのに、大統領が認知症にでもなったら副大統領をはじめとする人が取って代わることが書いてあるそうで、それをヘッジ・ファンドは真剣に検討している、ということなんです。今トランプが当面する可能性は3つあって、一つはまずテロですね。それから軍事衝突(北朝鮮との衝突)、そして株の暴落。この3つのうちのどれかがあったら、第25条第4項の発動をして止めないと――という話になっている。何しろ彼は、核のボタンを持っているわけですからね。これは、フランスのマスコミでも真剣に取沙汰されていることなんです。日本だけが、民放さんもNHKも遠慮しておられるのでしょうか。三井物産の寺島実郎さん(現・日本総研会長)という、割合はっきり仰る方がいますが、彼によると、トランプは不動産屋さんなので、世の中をディールによって考えるんだということでしたけど、どうやら事態はもっと深刻なところに来ている。

マクロンの国鉄改革案は成功するか?

トランプの話はそれくらいにして、ヨーロッパに吹く内政の逆風に話を戻すと、時間の関係で詳しくは言いませんが、フランス国鉄の改革ということを「決断力のマクロン」は、エドワール・フィリップ首相に命じまして、既に首相は改革に乗り出すと述べています。マクロンの判断によれば、1995年の暮れ、シラク大統領・ジュペ首相のときに似たような国鉄改革案を出したんです。それに対して200万の動員を共産党がかけまして、国内の交通網が麻痺してしまって苦労した覚えがございます。68年の五月革命のときも、クレベール通りの国際会館で行われたベトナム和平交渉の取材で私当時NHKのワシントン支局長でパリに飛びましたら、五月革命が起こってストで全部麻痺してしまったんですね。飛行機がないものだからしめしめと思ったら、そこはちゃんと東京で見抜かれまして、磯村の奴フランスが好きだから喜んでいるんだろうというわけで、よく調べると、ちょっとブリュッセルまで車で行けばブリュッセルから飛行機は飛んでる。ジュネーブまで行けばスイス国も飛行機は飛んでる。……ということで、泣く泣く帰った覚えがあります。ま、そういう怖れがあるわけですが、今度の場合も、国鉄の改革は厳しいものがある。ただ、マクロンの見立てでは世の中は変わってきて、95年の再来は考えられない。もう労働党同盟自体、共産党との緊密な関係が崩れてきている。しかも共産党は、政党としての体をなしていませんしね。

国鉄の既得権益にメスを

そういうこともあって、国鉄の改革は大丈夫だという方向に世論も変わっている。……ということなんですが、国鉄労働者のことをシュミノーっていいますね。これは誇りある職業なんですね、フランスにおいては。それだけに特権が多い。まず終身雇用、年功序列、豊かな年金というようなことの他にも、色んな特権を持っている。そのため、この権利だけは手放すわけにはいかないと国鉄職員の間では考えられている。それで今考えられているのは、フランスのテレコムを民営化してオランジェに再編した時のように、これから採用する人はシュミノーの特権は享受しない、しかし今の人の特権は奪わない、ということをマクロンは提案しているわけであります。そして前のエアフランスの社長をしていたスピネッティという人に頼んで手を打って、審議会でもまた色んな手を打っていますので、この夏にかけて大変見物の攻防になるだろうと。既に労働組合は、今回の国鉄改革に対する第一回の反対デモをやると言っておりまして、これは一体どうなるのか?つまり労働法制のときはですね、Le Nouvel Observateur (L’Obs=オブス)というジャン・ダニエルというジャーナリストが立役者となって現在に至る左翼の雑誌があるんです。そのオブスが表紙にこういうことを書いているんですね。オブスの一番最初のアーティクルで、しかもストを打つその日に発行された号にこんな言葉が出ました。「フランスは議会よりも町で、つまりデモなどで物事が決することが多かった、しかも町の言い分に正しさがあったが、町の言い分にいつも理屈があるとは限らない」……ですから、今回どんな展開をみせるか見物です。

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