【レポート】講演討論会「アベノミクスと日本経済〜フランス日刊紙特派員の診断」開催

イベントレポート

日本経済の専門的な話から雇用まで、活発な質疑応答に

講演が終了し、質疑応答になると、何人ものかたから手が挙がり、活発な質問が飛び交いました。「通貨政策は本当に非効率なのか?」「公的債務(国債)は、外国の企業はそんなに保有していないので、日本国内への影響は少ないのでは?」「日銀と政府での意見の乖離がこれから起こるのではないか」という質問に対しては、「日本の債務は崩壊しないと思うが、アメリカの経済政策を真似してマイナス金利が長く続くと、日本経済にとってよくない」という意見をルソーさんは示しました。
「日本政府はこれから非正規雇用や、パートを守る改革を始めるのではないか」「また、完全雇用になった場合、企業は給与を上げていくのではないか」という質問に対しては、「企業は正規雇用を最低限にまで落とし、非正規雇用やパートを多数採用した結果、現在、失業率は完全雇用に等しい3.5%の失業率に落ちた。しかし、企業側はコスト負担の大きい終身雇用を守りたくない。非正規雇用が増えて失業率が落ちても、消費は伸びない」と語り、企業側の姿勢は変わらないという見通しを示しました。
これ以外にも様々な質問が飛び交い、質問時間をオーバーするほどの熱気が会場に広がっていました。

続いての懇親会では、フランスワインとチーズを味わいながら、参加者の方々が和やかな雰囲気の中で会話を楽しまれていました。そのなかで、談笑されておられた方々に今回の講演の感想を伺いました。

福田健司さん

福田健司さん

「日仏会館にはよく来ています。今回の講演は大変クオリティの高い内容でしたね。日本の大手メディアが伝えないような内容だったので、大変参考になりました。この機会に、フランスのメディアにも注目していきたい」と福田健司さん。「ルソーさんの仰るように、公共事業だけではなく、人的資源の活用や職業支援に対して予算を使って欲しい。日本の教育システムが、グローバル化に対応していないことも問題ですし、いろいろと考えさせられました」

永田真一さん

永田真一さん

一方、「大変厳しい意見が多かった」と永田真一さん。
永田さんは、官邸国際広報室に勤務されており、ルソーさんが内閣官房の官僚とのミーティングを行うきっかけを作られた方です。あくまでプライベートな発言としたうえで、「ルソーさんの見解は、意見の分かれるところです。長く日本を蝕んだデフレからの脱却を目指し、アベノミクスに取り組んだ結果、株価は1.4倍ほどまで上昇しました。また安倍首相は、外遊に多くの企業を同行するなど、すでに49もの国々にトップセールスを行っている。
また女性が輝く社会を実現するための政策を打ち出し、ヒラリークリントンからも「前進あるのみ!」との手紙が届くなど高い評価を受けています。アベノミクスが始まって2年でこうした一定の成果を出してきたのは事実で、ルソーさんのネガティブな発言だけにとらわれて欲しくないですね」

エドモン・プスマールさん

エドモン・プスマールさん

「10年前の日仏交流事業で、日仏会館に来て以来です。大変懐かしい」と話すのはエドモン・プスマールさん。「日仏商工会議所の案内で今回の講演を知り、本当にタイムリーなテーマに惹かれて来ました。たくさんの人が集まり、真剣に講演を聴くだけではなく、質問も多く大変勉強になりました。ルソーさんの話は、経済というともすれば難しく語られがちな内容を、裏付けのある数字と、わかりやすい説明をされておられたので、現在の日本の経済状況の一端がよくわかりました。こんな活気のある講演なら、またぜひ参加したいと思います」

ウェストファル・アレックサンドルさん

ウェストファル・アレックサンドルさん

最後は、2010年に慶応大学へ短期留学し、それ以来日本が好きになったというウェストファル・アレックサンドルさん。「今回、パリクラブ会員の紹介で初めてきました。もともと父がフランスの銀行に勤務しており、経済の話は好きだったので、このテーマならと参加しました。日本在住2年目ですが、このような講演会に出会えたことは大変ラッキーでしたね」と大変うれしそうに語っていただきました。「ルソーさんの言うことには賛成ですが、フランスにも利権団体や労働組合などがあり、改革は簡単ではありません。でも在日フランス人として日本の経済を知る良いきっかけをパリクラブが作ってくれましたので、次回の活動にもぜひ参加したいと思っています」

続いて「進行係・パリクラブ会長の見解」です。