イベントレポート 『欧州から見た日本のイメージ ~過去、現在、未来~フランスのアジア専門家の診断~』開催

国のイメージは時代の出来事によって作り上げられる

国のイメージは、その国で起こった歴史的出来事によって作り上げられる場合が多いとのことで、アベール氏は日本のイメージ作りに寄与した出来事や時代の社会状況などについて8つの例を揚げて解説されました。一つ目は将軍がいた封建時代。日本の将軍は武士道を重んじる行政官であり平和の構築者として機能していたにもかかわらず、西欧では戦争の指揮官や侵略者としてイメージされやすく、この点が一つの誤解を生んでいるそうです。2つ目は明治時代。日本は数多くの西洋文化を取り入れ西欧化を目指していましたが、それは表面的なことに過ぎず、実際は日本の文化が西欧文化へ多大な影響を与えていた時代であったと説きます。3つ目は第二次世界大戦。世界大戦時、ヨーロッパではヨーロッパ独自の問題を抱えていたため日本や東アジアへの関心は薄く、当時の日本のイメージは真珠湾を攻撃した国、原爆の犠牲国、というのが大方だったそうです。そして4つ目が1964年の東京オリンピック。敗戦から20年も経たないうちに見事に復興し近代化された日本の姿を見て、数多くのヨーロッパの専門家が日本の奇跡の秘訣について調査・研究したそうです。その結果、総合商社の存在、労使制度、生産性向上のためのトヨタ方式など、ユニバーサルな経営戦略が確立されていたことが、日本経済の復興を果たした要因と考えられました。

ヨーロッパにおける日本のイメージについて熱心に語るダニエル・アベール氏。

ヨーロッパにおける日本のイメージについて熱心に語るダニエル・アベール氏。

5つ目が1980年代のバブル経済時期。日本は経済大国へなりつつある時代で、『Japan  as No1』も出版され、アメリカ、ヨーロッパ各国が日本に対して脅威を感じていました。しかし、その後バブルが崩壊。これが6つ目の出来事。日本は経済超大国から脆弱な国へと一気にイメージダウンし、ヨーロッパ企業の日本進出の機会を拡大しました。そしてその後約20年間、経済成長の低迷期が続くと、日本はヨーロッパの企業にとって興味の対象外に。その代わりに台頭したのが中国です。