第11回バス旅行のご案内(山梨日仏協会との交歓) 「世界文化遺産・富士山」を訪ねて

fuji10月23日の富士バス旅行に参加した。例年の如く、日仏会館の主催、パリクラブ・在日フランス商工会議所の共催行事である。富士山は今春、ユネスコの世界遺産認定を受けたので、それを記念し山梨の富士吉田市を訪れ、山梨日仏協会と交流するという企画であった。あいにくアベック台風が本土に接近し、途中中央高速の左手の雲がきれたように見えたが、富士の山麓に到着すると、雲も厚く、ときたま小雨が落ちてきた。

富士山のユネスコによる世界遺産認定は、自然遺産としてではなく、宗教性と芸術性を持つ文化的な景観としてだった。松浦日仏会館理事長(前ユネスコ事務局長)の解説で初めてそれを知った。謡にもよくでてくる「草木国土悉皆成仏」という日本の本覚思想は古くから山を信仰の対象にしてきた。最近訪れた出羽三山や一足先に世界遺産になった熊野とくらべるといくぶん宗教性が薄いように思っていたが、富士山はなんといっても最高峰であり、9世紀なかばの貞観や江戸の宝永年間(1707年)に大爆発、そのコヨーデ型の景観も加わって、冨士講などの山岳信仰の対象となっている。

7年前のバス旅行では甲府の美術館で山寺の仏像や夢窓国師の作った庭、そして湧き水で発達した山梨を知ったが、今回は神道の施設を訪問した。北口本宮富士浅間神社は千年の杉と二本の巨木が合体した檜の神木があり、女神コノハナサクヤヒメを祀ってある。清涼な小川が山に抱かれた境内を流れる。参道を少し歩き、同じバスにのる遅い夏休みでパリの人事サービス会社からきたフランスの女性二人と話をする。入り口のそばやの紅葉は少し色づいている。

家二軒とうもろこしを高く干し

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そこからさらに参道をくだったところが、御師(おし)の家である。かつては冨士山に登る白い行衣、手甲脚絆の団体客を泊め、出発前にお祓いをした神官の家が、参道の両側に多数並んでいた。訪問した家は千葉方面からの富士講の人たちの定宿で、奥まった庭には古木がある。幕末から明治の初めに活躍したベアトは、この町の入口の鳥居と雲の上に富士が顔を出すころを写真にとった。鉄道馬車が走って居た時代もある。京都の上賀茂神社のまわりにも神官が住んでいる一角があり、社家といっていた。

色葉散る冨士講泊めし御師の家