講演会「グローバル経済の行方」

日仏経済交流会(パリクラブ)主催
在日フランス商工会議所(CCIFJ)、財団法人日仏会館 共催

【フィリップ・ルフルニエ氏】

ジャーナリスト、Club de l’Expansion 創設者・名誉会長、CAMDESSUS委員会メンバー。
1939年、ルマン生まれ。パリ大学法学部卒業。1967年にクラブ・ドゥ・レクスパンシオンを創設、現在名誉会長を勤める。ユネスコのコンサルタント、 フランス統計委員会メンバー、フランス経済コミッション委員会メンバー、日本経済新聞パネリスト、サルコジフランス経済大臣の諮問に答え、フランス経済の 成長戦略報告書(LE SURSAUT)をまとめた省が推進するCAMSESSUS委員会メンバー(2004年)等を歴任。フランス共和国よりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリ エと国家功労勲章シュヴァリエを叙勲。
1968年発行の著書「Les problèmes du développement économique」、1996年発行の「Ecodigest」の他、フランス、アメリカ、日本、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ポーランド 等世界各国のメディアに記事が掲載されている。

日時 2006年10月30日(月)18時30分~21時
会場 日仏会館ホール
ゲストスピーカー フィリップ・ルフルニエ氏
 

1030-global-110月30日(月)夜、日仏会館で50名強の参加者を得て頭書講演会が開催されました。ルフルニエ氏は Expansion 経済予測センターの創設者であり、 Expansion クラブ会長を務めておられる国際的に高名なエコノミストです。最近では2004年にサルコジ仏国経済大臣(当時)の諮問委員会であるカムドゥシュ委員会の メンバーとして、仏国成長戦略レポートの作成に当たられました。

短時間ながら、グローバル経済の主要プレイヤーの現状と課題についての、簡潔且つ丁寧な分析・説明でした。

米国では政府/企業/家計での過剰債務、特に家計の過剰信用が米国の景気を支えてきた消費を減速させる恐れが大であるとの指摘でした。また、製造業の供給力の衰えも大きな懸念材料とのことでした。

成長著しい中国は米国とは逆に、供給サイドが急成長をしているものの、人/物/金の過剰投入により過剰生産体制となっており、世界経済の紊乱要因にもなっているとの説明でした。決して健全な成長とはいえないとの辛口コメントでした。

1030-global-2《 Choc d’offre 》という言葉が何度も出てきました。中国のようなエマージング大国が急速に工業製品の供給力をつけ、生産のためのエネルギーや原材料の国際価格が高騰、一 方で過剰生産のため製品価格は上昇しない。米国を筆頭とする往年の供給大国は、ものづくりはやめて借金しながらの消費大国を決め込む。こんな構図が 《 Choc d’offre 》なんでしょう。大変興味深く伺いました。

先進国クラブの中でも、ものづくりで経済のリバウンドに成功した国があり、それが日本とドイツだということです。超ハイテク分野や、特定の(たとえ ば自動車)高付加価値分野での技術革新により、質的に他の追随を許さない堅固な供給力をつけているとの分析です。少子高齢化や膨大な公的債務という日本経 済の問題点の指摘も当然ありました。

《 Choc d’offre 》現象の中で、独日型の強固な供給体制というのも先進工業国の一つのありかただというのが、ルフルニエ氏の教えだと思います。

ユーロ圏経済については英国、オランダをはじめ、順調な成長を遂げている国が多いこと、またドイツについては上述の通りものづくり大国として外需中心に、回復基調が著しいとの説明でした。

さてわれらがフランスはどうかというと、まず独日型ではなく消費が景気を牽引するアングロサクソン型経済になっているとの説明でした。消費依存型経 済の特性として、政府/企業/家計の夫々の債務が増えているとのことです。フランスの一人当たりの生産性(製造部門)は非常に高い一方、労働力化の弱さが これを相殺しているとの説明がありました。

フランスの失業率の高さ、特に若年層や高齢層の雇用率は非常に低く、これを何とか労働力化しないとフランス経済の将来は明るくないとの指摘です。フランス国民は官民挙げてこの問題に取り組んでいるとのことです。

1030-global-3誰がグローバリゼーションの勝者かというような、(我々がひそかに期待していたような)どこかの TV 番組の経済評論家のような話し方はされませんでした。正統派のエコノミストの客観的な分析に基づくお話の中から、グローバリゼーションの流れへの適応力と 技術革新への努力が最低限不可欠であることを汲み取ることができたと思います。

ユーロ高に関する質問や、米国経済の実力評価についてのコメントや質問が相次ぎました。

大変活発な質疑応答で時間一杯となり、(司会者特権で質問しようとしていた)筆者の出番はありませんでした。一般に既得権を重視し変化を嫌うフラン ス国民相手に、痛みを伴う改革を強行できるんですかという質問をしたかったのです。また、ロワイヤル氏の評価についても聞いてみたかったですね

2006年10月31日
パリクラブ 副会長 増渕 文規

※ルフルニエ氏がレジュメとして作成した資料を別添します
1030-resume_interview.doc【フランス語:ワードファイル】