日本との交渉成立に期待感の強いEU委員会 ~日欧経済連携協定について欧州委員会及び欧州対外行動庁の交渉当事者にインタビュー

(2)欧州対外行動庁対日交渉担当官とのインタビュー

日時 2014年3月13日(木)午前11時―12時
場所 欧州対外行動庁(EEAS)政策局2(EEAS : European External Action Service)
出席者 ファブリス・バレーユ
    欧州委員会対外政策部(EEAS)・日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランド担当局次長
    クリストフ・ダシュウッド
    EEAS)日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランド担当局・デスクオフィサー
    クリストフ・ビースナー EEAS 日本調整デスク 主席アドミニストレーター
    イバン・バサール フランスEU経済財政省EU代表部 中南米担当官
    エリック・セイエッタ フランスEU経済財政省代表部 ユーラシア担当官

増改築中のEU本部横で バサール担当官とセイエッタ担当官

増改築中のEU本部横で バサール担当官とセイエッタ担当官

瀬藤 日本とEUの間で今回の交渉の名称の仕方に違いあるようにであるが、どういう風に考えているか。

バレーユ 確かに欧州連合側は自由貿易協定、日本側は経済連携協定という呼び方をしていて いる。自由貿易協定という呼び方は古典的な概念で関税、市場アクセス、規則、などをカーバーする。経済連携協定という表現はもっとカバーする分野も多く、戦略的な意味が込められているはずである。この意見の隔たりについてはこれまでは両者間で暗黙(Tacite)の了解のようなものがあった。今後は取り扱うテーマや分野について話し合う必要もある。我々はFTAという自由貿易協定と併行して戦略協定(Accord stratégique)を締結することを条件にしている。この戦略協定は50章にわたる分野について両国地域間で締結されるものである。労働力、観光、外交、文化、科学技術、軍縮、防衛、などの項目に関して10年位の長期協定である。日本にはまだこの先例がない。FTAと戦略協定はひとつのパッケージでセットである。環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)協定では貿易関連だけの分野に限定されている。しかし、韓国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとは貿易と戦略の2つの面で協定を結んでいる。外交の原則としてこれらの戦略協定が経済貿易協定に対して優先するものである。

瀬藤 日本では対欧州経済連携協定交渉においてそのような外交戦略面の協定がより重要であると言う原則は、日本では一般に紹介されていない。

バレーユ 是非、この機会に貴殿の報告などを通じて日本に啓蒙するようにしていただきたい。日本はこの戦略協定交渉についても合意した。韓国との間でも危機管理について我々は合意した経緯がある。5月上旬に安倍首相の訪欧の際、日EU首脳会談が予定されている。ここで交渉の進展が期待されている。韓国と同様の面があるが、自動車などの基準についていわゆる「ゴールデン・テーラー」という言い方があるが、我々には「西欧的価値」基準に基づ九部分があり、もっと複合的である。戦略協定はEUの2020年戦略目標との整合性が問われる。

 

この欧州対外行動庁(EEAS)は2009年12月発効のリスボン条約(改正基本条約)により設立された。EU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長(現職キャサリン・アシュトン)の指揮の下、EUの対外行動を司る新しい外交機関。EEASは、対外関係分野で欧州理事会議長と欧州委員会委員長も補佐している。欧州連合の外交担当部門である。とりわけキャサリン・アシュトン氏率いるEU外務・安全保障政策上級代表を支えている。EEASは他のEU機関に比して独立性がある。2009年12月に発効したリスボン条約によって創設されたEU外交部門を補佐するために2011年1月に誕生した。インタビューでもバレーユ次長はEUの対外関係のなかで戦略協定の重要性を強調した。日本は単に経済連携協定だけにEUとの関係を限定せずに、政治、安保、文化など幅広い分野で交渉するという意識を持ってもらいたいと言明した。

インタビュー・取りまとめ 瀬藤澄彦