Pariscope 消える

Pariscope 消える

浦田 良一

 毎週水曜日発行のパリの劇場、映画、展覧会など催しの週刊ガイドブックPariscope が10月26日に消えた。
思えば、その兆候は少し前からあった。2,3年前に0.40€が0.50€になっていたが、昨年0.90€に値上げされていて、(似たようなガイドブック L’officiel des spectalesは0.80から1€になっていた。)今年10月末に突然、1.90ユーロに値上げされた。
「51周年記念日を目前にしてのPariscopeの記念碑的な値上げに拍手喝采と同時に祝福申し上げます。52年目には何%の値上げを考えられているのでしょうか?しかし、私はあと1年生き永らえるかどうかとても心配しています。」という皮肉たっぷりのメールを編集長氏あてに送った。
 まさか返信など来ないだろうと思っていたら、この編集長氏から「私は貴殿の驚愕と不満が理解できます。
貴殿の言葉は私の心を痛めますが、不幸にもこの値上げは存続させるために必要なのです。0.90€では到底存続し得ないのです。」
との返事をもらった。10月6日だった。それから2週発行したけれどそれで終わってしまった。

おそらくその2週間の売上は半減以下だったのだろう。当然予測していたと思うが、誕生日とおなじころに閉じようとの隠された
意図があったのだろうが、それならそんな値上げなどせずに休刊としますだけで良かったのではなかったか。
住所を調べていたらなんとBoulogne-Billancourtで、我が家から7~800メートルのところではないか。
そのことは全く気がついていなかった。引っ越ししてきて8年、近くを散策していなかったということか。

思えば、出版界の不振が各方面に表れていて、日本も例外ではないのだ。
パリに長くあったBook off店が昨年暮に店仕舞いした。古本が売れなくなったと言う前に、古本を売りに来る人が極減したことが大きな理由だと聞く、本を買うことが減り、所蔵の本が少なくなり、Book off 店に持っていくほどのものでなくなった事が原因なのだ。大きな理由だと聞く、本を買うことが減り、所蔵の本が少なくなり、Bookoff 店に持っていくほどのものでなくなった事が原因なのだ。
ところが、パリのBookoff店にはフランス語の本を中心とした洋書専門店があり、ここは目下隆盛。本、CDを持ってくるフランス人が多く、店内は活況を呈しているが、今のフランス出版界の不況から容易に察しがつくことだが、いつまで続くだろうか。

日本でも新聞の購読者が減り、週刊誌も2週合併号が目につくようになったとか。Dokomoが、そうした週刊誌のネット配信を始めている。
売れなくなってきた週刊誌が最後の生き残りをかけて、ネット配信に参画しているのだ。この先、どうなるのだろう。
紙に印刷された本という媒体に慣れ親しんで来た私は、電子図書にはまだ馴染めないが、こうした趨勢に屈する日がくるのだろうか。
蔵書とか積読とか言う語は死語になるのだろうか、寂しい限りである。面白い本が減った訳でもないのに、インターネットの普及がなせるワザが書物の概念を変えていくことになるのだろうか。手で書かなくなって、殆どすべてインターネットに依存していることの弊害に早く目覚めなければいかないのではないかと思うこの頃である。(と言いながら、これを保存し友人たちに送る簡便さからPCワードの力を借りています。)

後日談;この拙文を多くの方に送っていたら、友人の一人から、Pariscopeの最後のこの仰天値上げのアクションは、“移り行く世の中の価値観への抗議の気持ちを表したものだと思います“とのコメントをもらった。

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