「アフリカ徒然草」( AU代表部員によるアフリカに因んだエッセイ)

第1回 アフリカとは?

●2019年師走。3回目のアフリカ勤務でエチオピアの首都アディスアベバのボレ国際空港に着任した。最初のアフリカ勤務は1995年のコートジボワール。当時は正式には「象牙海岸」と呼ばれていた、元フランスの植民地だった西アフリカの国。次は2005年に東アフリカのエチオピア。よって、今回は2度目のエチオピア勤務 となった。

●勤務と出張と旅行を合わせ、筆者はアフリカの約30か国に渡航した。日本人にしては多い方かもしれないが、アフリカ大陸には54の国があり、よって20余の未知の国がある。
すなわち、アフリカは広い。そして、深い。更にいうと実に多様である。
この大陸は、面積約3020㎢で、地球表面の6%、陸地全体の20.4%を占め、人口は約13億人で、世界人口比でいうと約15%を占める。
スケールが大き過ぎて、かえって分かりづらいかもしれない。
日本の国土と比較すると、アフリカは日本の80倍。アフリカ大陸の中に、米国、中国、インド 、欧州主要国、日本を含むアジア・大洋州の一部が入った有名な図( The True Size of Africa)は、そのサイズ感を把握するのに便利である。インターネットで検索すると、すぐ見つかる筈だ。

●一つの国・国民の中に、多数の民族や言語があり、その数は無数、と言わざるを得ない。経済成長も著しい。コロナ禍以前の2019年の大陸全体の実質 GDP成長率は3.3%。コロナ禍の影響をもろに受けた2020年はマイナス2.1%だが、2021年は3.4%、2022年は4.6%とプラス成長が見込まれている(アフリカ開発 銀行経済観測2021年版)。
国連等が報告する人口動態観測では、30年後の2050年の世界全体の人口は97億人に増加し、中でもアフリカでは顕著に増加(サブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)では倍増)すると指摘。世界人口の実に4人に1人はアフリカ人となる計算である。

「ステレオタイプなアフリカのイメージ」
ところで、読者の皆さんのアフリカに対するイメージはどのようなものだろうか。
ライオンやキリンといった野生動物が主役のサファリをイメージする方もいるだろうし、昭和生まれの筆者の同世代だと、80 年代に、エチオピアの飢餓を救うために英米のミュージシャンが集まって作成した Band Aidの「 Do They know it s Christmas?」や USA for Africa の「 We are the world」を想起する方もいるだろう。
開発が遅れた地域、貧困、紛争といった負のイメージが強いかもしれない。あるいは世界中で活躍するアフリカ系アスリートから、身体能力の高さに印象付けられる方もいるだろう。
そうした情報を基に、ステレオタイプなアフリカ(人)が定着しているかもしれない。筆者は、一般に、ス テレオタイプについては、それなりの時間や情報量や経験が費やされた結果だろうから、その存在意義には一定の根拠と意味があると考える。
しかし同時に、一側面からの価値判断から導かれる結論には危険が伴うだろう。やはり、基本に立ち返り、事実情報( facts)に基づく考察が必要である。

「ファクトフルネス( FACTFULNESS)」
このベストセラー本を読まれた方も多いと思うが、ここにアフリカや世界の現状に関する興味深い情報が掲載されている。
例えば、アフリカの新生児の平均寿命は65歳、そのうち、北アフリカ5か国のそれは世界平均の72歳を上回っている、サブサハラ諸国は、スウェーデンより速いペースで乳幼児の死亡率を改善させた。こうした記述に現実の世界を再認識させられた読者は少なくないだろう。もっとも、アフリカの中でも格差は大きく、また、アフリカ全体として、依然として様々な課題に直面していることは事実である。

●ファクトフルネスでは、世界の学校教育、電力アクセス、1歳児の予防接種、極度の貧困にある人口等のテーマについて、三択のクイズ形式で世界の有識者に出題し、その結果を公表している。面白いのは、無作為に回答を選ぶ「チンパンジー」の正解 率を33%(3分の1)として、有識者の正解率と比較しているところである。「たった3つの選択肢の中から正しい1つを選ぶだけ」な筈だが、有識者がチンパンジーに勝ったのは、何と僅か10%である。我こそは、と思う読者は是非挑戦して頂きたい。( https://factfulnessquiz.com

●偉そうに書いている筆者も、軽い気持ちでクイズに臨んだところ、チンパンに敗北を喫した項目が複数あった。それがどの項目であったか開示せよ、との声が聞こえてきそうだが、そこはどうか御勘弁を。

(AU代森本)

(本エッセイは、AU代表部員個人の見解を記したものであり、必ずしも当代表部または日本政府の立場を反映したものではありません。)

(本文と直接関係はないが、リベリアのジョージ・ウェア大統領とガッチリ握手する筆者。大統領は、筆者がフランスに留学中、フランスのクラブチームのパリ・サンジェルマン(PSG)で大活躍していたサッカー界のヒーロー。「リベリアの怪人」の異名を持つ。大統領就任式の直後にお会いできたので、思わず「試合観てました!」と話しかけた。筆者の同僚が撮影。)

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