英国ダラム便り(その21)

  • Durham 2014/1/8

皆さま

喪中につき祝辞は控えます。
今年もよろしくお願い申し上げます。

ダラム便り(その21)をお届けします。
中国の勢いはとどまるところを知らず、このままだと世界中に中国人が溢れそうです。

われわれのあと世代は今後中国とどう付き合えば良いのでしょうか。欧州は「中国に気を遣いすぎ」ですね。英国やフランスはその最たるものでしょう。「中国におもねっている」感じが嫌ですね。もっと中国の蛮行を叱って欲しいですね。個人としては「大雑把で繊細さに欠ける」ものの、明るくて感じのよい中国人に当地で数多く出会っています。

年の初めでもあり。靖国騒ぎにもかかわらず中国との関係は年内には少しずつ良い方向に向かうと思いたいです。そう期待するのは自由ですから。

増渕 文規

英国ダラム便り(その21)

[英国の中国人]

昨年の10月半ばにオズボーン財政相がロンドン市長や実業人と共に1週間の中国訪問をしました。直後の12月初めにはキャメロン首相を団長とする経済ミッションが中国訪問。大変な力の入れ方です。中国が市場として重要な事、生産基地として重要な事は言うまでもありませんが、英国のもう一つの大きな狙いは中国マネーです。中国からの対英投資の呼び込みに力を入れています。中国人の英国入国ヴィザ条件の緩和も発表され、ダライ・ラマの件で冷えていた英中関係の再活性化に成功したようです。世界一の成長マーケットをしっかり取り込もうと、ずいぶん中国にリップ・サービスしていました。BBCの「中国人権問題をどう考えるのか?」という質問に対し、財政相は「急速に発展している社会では歪みも生じる。中国政府も人権問題にはしっかり取り組んでいる」という答え方をしていました。アングロサクソン的原理主義からは遠い、寛容な発言でした。中国との経済関係強化は重要ですからね。同じくBBCの「中国はエネルギー部門以外への投資は興味が無いのでは?」に対しては「不動産、商業地開発、英国有力企業買収等で実際に大型投資が実現されつつある」との答えです。多くの英国都市で商業地域の再開発が検討されていますが、資金問題で動き出すものが少ない。ロンドン市長が参加したのも、郊外のシャッター商店街の再開発に中国資金を流入させることが最大の目的なのでしょう。マンチェスター空港周辺再開発を北京建設エンジニアリング公司が落札したそうです。12億ドル(1,200億円)規模でオリンピック以降、英国で最大の開発工事とか。「Airport City」と名付けられた商業施設の開発です。これは純粋投資案件ではありませんが、中国企業がメインで英国企業とコンソーシアムを組み、最終的に16,000人の雇用を生むプロジェクトと期待されています。中国流の極彩色の商店街にはならないだろうかと、ちょっと心配ですし(それはいくら何でもないでしょうが)、「手抜き」工事は大丈夫かと思ってしまいます。英国企業がパートナーだから問題は無いでしょうが、相当中国色を出すだろうとも言われています。マンチェスターと言えば英国西部を代表する都市です。その玄関の空港付近の商業施設工事を中国企業が落札です。30年以上前に日本企業が英国に大挙してやってきたことを考えれば、不思議では無いのですが。中国の時代が来たということですね。1851年のロンドン万博のシンボルだったガラス張りの水晶宮(1936年に焼失)の復元建て替えも中国企業の手で行われるそうです。これも中国風にならないことを切に希望します。

英語国ですし、香港との関係もあって昔から英国には中国人が多くいます。1970年ごろまでは香港ないし香港経由の福建華僑、マレーシア、シンガポールからの華僑中心で、ロンドンや港湾大都市周辺に多く移住してきました。飲食業を中心に中国に戻らない人達か出稼ぎの就労者でした。ダラムに近い人口100万人の港湾都市ニューカッスルにも中華人街があります。アジアや中国が発展するにつれ、この流れがぐんと減りました。80年代以降替わって増えたのが留学生です。大半は本国へ戻る学生で、語学校や予備校も入れると7万人程度の中国人留学生が英国に滞在しているようです。英国内外国人留学生の1/3ないし1/4だそうです(米国でも同じような比率らしい)。ちなみに日本に居る中国人留学生は8万人以上です。英国の大学留学はおカネがかかります。英国人でも学費だけで年間9,000ポンド(140万円)、これに寮費その他の生活費で、年間250万円はかかりましょう。外国人学生に対する学費は9,000ポンド以上に設定できますので、英国の大学にとって外国人留学生はドル箱でもあります。中国人留学生の場合年間300万円はかかるのではないでしょうか。彼らの9割以上は自費留学です。英国人学生のほとんどは奨学金利用で、就職してからローンで割賦返済すればよいし、色々返済免除の道もあるようです。中国人にはこれが無い。幸運にも奨学金をもらっても、帰国時には一括返済です。親は富裕層でしょうが、それにしても年間300万円は半端な金額ではありません。ビジネススクールだとさらに100万円は加算です。どんなに無理をしても子供に高い教育を受けさせるという中国流教育投資の考え方が徹底しているのだと思います。中国人留学生は群れる、英国社会に入っていかない、礼儀作法がなっていないと英国での評判は悪いのですが、昔の日本人海外旅行客も散々な評判でしたから、そのうち変わっていくでしょう。ダラム大留学の中国人学生、皆英語は流暢ですよ、たいしたものです。良く勉強しているようです。そもそも余程できないとダラム大学には入れないのです。何か凄いエネルギーを感じますね。英米その他世界各国で、英語力はもちろん一流の学力・国際力を身に付けた優秀な中国人学生が毎年5万人以上(もしかしたら10万人?)のオーダーで中国へ戻って、社会で活躍するわけです。日本は本当にぼやぼやできないです。やばいですね。勝てませんね。日本の大学に十分な国際力があるなら心配はしないのですが、産業界以上にガラパゴスですからね。

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英・仏に日本流のコインロッカーは存在しません。パリの北駅に半自動ロッカーがありますが、入り口で荷物のセキュリティー・チェックがあり、中へ入ってロッカーを利用するにはコインのみ利用可で1ユーロ6枚。旅行者に多量のコインの手持ちがあるわけはなく、両替機に行ったら良くあることで2台とも故障。ひどい目にあいました。英国では昔ながらの一時預かり方式ですが、これもセキュリティー・チェックで時間がかかり、いつも行列。大体両国とも駅のどこにあるのか表示が非常に不親切です。すべてに言えますが、「お客様が神様」なのは日本だけです。売り手の都合が優先します。防犯の問題もありますね。

2014年1月6日

増渕 文規

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