英国ダラム便り(その4)

  • 東京 2012年8月13日
  • 増渕 文規

皆様

残暑見舞い申し上げます。

今年はダラムに夏は来ないようです。猛暑の東京に一時帰国中です。数日だけですので、この暑さも「懐かしい暑さ」と耐えられます。今年はじめて夏用衣類が活躍できて良かったです。

拙文お読みください。パリの劣化は気になります。最近とみにパリ嫌いが増えているような気がします。世界一の観光大国の座にあぐらをかいて何の努力もしていないのではないでしょうか。

英国ダラム便り(その4)

[ロンドン・オリンピック2012]

ホストカントリー英国(Team GB)は絶好調で金メダルラッシュに沸きました。金29個とこれまでの記録だった前回北京の19個を大きく上回りました。先進国の常で、開催前は無駄な出費であるとか何やら、とかく批判やシラケも目立ちましたが、TeamGBの快進撃でそんなものはすべて吹き飛んでしまいました。特に8月6日はSuper Sundayで金6個、しかも陸上の基本競技で3個取っています。特に女子7種競技で勝ったJessica Ennisは今回のTeam GBの顔で、ポスターやTVで国民は毎日彼女の笑顔に接していました。英国人としては165cmと小柄なスポーツ美人で皆のアイドルです。彼女が7種目目もぶっちぎりで勝った瞬間の、観衆やTVアナウンサーの興奮ぶりはすごかった。オリンピックの効果ですね。国が一つになっているようです。こういう時に増税のような「国のためだから我慢してくれ」的な政策をだすと、国民の賛成を得やすいかもしれません。

なんでこんなにTeam GBは強かったのか?最大の理由は15年近く前から行われているスポーツ強化策のようです。要はコーチや施設や遠征・合宿費などに金を使ってきました。宝くじの一部をスポーツ強化に回しているそうです。1984年のロスアンゼルス・オリンピックで英国の金メダルはたったの一個だったことで、このころの絶不調の反省から将来のオリンピック招致もにらみ、強化策を取ったのだと思います。そもそも北京での金19個というのも驚異的な数字で、今回それを知って「あの英国がいつそんなに強くなったの?」とビックリしました。自然体で無理をしない国民性ですから、オリンピックの金メダル競争とは無縁だと思っていました。
元々、世界で行われている多くのスポーツの発祥の国ですし、英国人はフランス人などと比べてよほどスポーツ好きに見えます。都会ではないせいもあるでしょうが、ダラム大学の学生も授業が終わると何かスポーツをやっています。いろんな競技に
顔を出しますし、自転車とジョギングに精を出しています。雨が降れば夏でも寒いダラムで、ずぶ濡れになりながら良く走っています。スポーツ大好き民族がスポーツインフラを整備してもらって、潜在能力が花開いたということでしょうか。

日本でも報道されているでしょうか?ウィリアム王子とケイト夫人が英国選手の金メダル勝利の瞬間に抱き合って喜んでいる写真です。日本よりはよほど開かれた王室ですが、こういう人間的な喜びが発露された瞬間写真は初めてだそうです。大衆紙はどの金メダルより価値のある「金メダル」だと報じています。ウィリアム王子ご夫妻はほとんど毎日何かの競技を観戦しています。ケイトさんは美人で人気がありますから、ウィリアム王子ご夫妻はオリンピックで王室の広告塔を務めています。エリザベス女王の長女のアン王女はその昔馬術のオリンピック選手でした。アン王女の娘さんが今回のオリンピックに参加Team GBとしてメダルを獲得しています。

トライしましたが、(全く興味のない)ビーチバレーの券しか残っておらず断念しました。帝京の学生は「なでしこ」の券などを入手しています。若い人はしっかりしています。4日(金)ロンドンで一泊しましたが、中心部の瀟洒なホテルに格安で泊まれました。中心部のホテルは満杯でオリンピック・レートであろうと皆が敬遠したようで、ラスト・ミニットで思わず得をしました。ロンドン中心部のホテルや高級レストラン、市内観光ツアー等の通常観光業はオリンピックのあおりで打撃を被っているそうです。どうせ混むからと観光客は来ないし、オリンピック観戦の客は中心部を避け郊外ホテルをとることが多いとのことです。今回の滞在時にロンドンとは思えないHospitalityを経験しました。オリンピック関連で約7万人のボランティアが動員されており、ロンドン中心部のあちこちで親切に案内してくれます。
何しろ7万人ですから街角の要所には必ずオリンピック蛍光塗料ジャンパーをはおった数人の案内人が「親切に説明したくてしようが無い」風情で客待ちをしています。これだけの目があれば犯罪も起きないだろうし、いつもこうだと外国人観光客は助かります。

[パリは3Kか?]

帝京の学生が2週間パリ、バルセロナ、フィレンツェに研修旅行に行ってきました。帰ってきた学生のほとんどが「パリは美術館やルーブルなどすごく感激したけれど、きたなくて、臭くて、怖くていやだった」と感想を述べています。街中ゴミがあってきたない、地下鉄などトイレの臭いがするしゴミのにおいもくさい、黒人がすごく多いしスリも多く怖いという3Kです。参加学生36人中未遂も含めて3人がスリにやられました。パリでは毎年必ず被害にあいます。フランス大好き人間として放っておけない気持ちです。この3Kは昔からだけれど、最近ひどくなっている気がします。ロンドンの方がぐんと安全で清潔な感じがあります。黒人の件は学生が慣れてないだけで特に危険なわけはありませんが、あとの3Kは良くしようと思えばできることです。フランス政府には少し金を使って何とかして欲しい。改善努力を全然していない。

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