第20回パリクラブ輝く会特別講演会 小篠ゆま「世界で活躍し続けるためのマインド~三世代に渡って受け継がれていること~」

素顔のコシノファミリーは?

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輝く会の20回目のイベントは、今年からスタートした「パリで輝く日本女性シリーズ」の第1回イベントとして、東京日比谷ビル17階で開催されました。講師にお招きしたのは、パリのみならず世界で知られる「コシノブランド」の精神を受け継ぐデザイナーの小篠ゆまさん。NHKの朝ドラ「カーネーション」のモデルにもなったお婆様(小篠綾子さん)やお母様(コシノヒロコさん)との知られざるエピソード、ファッションに対する熱い思いなどを、パリクラブの児玉常任理事が司会進行役を務める形で伺いました。

最初の話題は「カーネーション」について。「パリでも放送され、『おしん』に続く視聴率を誇り、日本では数多くの賞を受賞するなど国民的ドラマとなりました。なぜか私は赤いジャージ姿のヤンキーになっていましたが、実際は四角四面なマジメ人間ではなかったものの、不良少女ではありません」と話され、笑いを誘っていました。これはドラマのような少女が多かった時代背景を意識しての演出で、実際のゆまさんは、お母様の洋服を次々とクローゼットから出し、一日中遊んでいたというファッションに夢中な少女。綾子さん、ヒロコさん、ジュンコさん、ミチコさん三姉妹の遺伝子を受け継ぎ、この業界を志向されたのは、必然の運命だったのかもしれません。

綾子さんの実像については、出身が「だんじり」で有名な大阪の岸和田ということもあり、仕事においても遊びにおいても大変にエネルギッシュな方で、93歳の誕生日の目前で亡くなる数日前まで「クルマを買うで~」などと話されていたそうです。生前にゆまさんと一緒にディスコへ行ったり、パリやロンドンで飲みに行ったりと、多くの時間を共有できたことが、ゆまさんにとって大きな財産となりました。デザイナーとなったゆまさんに、綾子さんは細かく指示することもなく、「あなたはコシノの精神を受け継ぎなさい」との思いを託され、ゆまさんは「それが一番ありがたかった言葉です」と偉大な祖母からの叱咤激励に感謝されていました。元気なのはコシノファミリーの血筋で、もちろん、ゆまさんも例外ではありません。

バラ色ではなかった若き日のパリ時代

大学生の頃からモデル、アートディレクター、スタイリストなど、ファッションに関わるさまざまなジャンルで精力的に活躍されていたゆまさん。卒業後は、お母様の会社のスタッフとしてパリで働くことになったのですが、日々の多忙な業務に追われるなか、これでいいのかとの思いが強くなり、ファッションデザイナー高田賢三氏の事務所で“武者修行”することとなりました。しかし、当時のパリはまだ若いゆまさんにとって「大人でないと楽しめない街」であり、フランス語もそれなりに話せたものの、コミュニケーションもままならず、次第に居心地の悪さを感じるように。そこで、1年半後、心機一転、叔母のミチコさんが拠点にしていたロンドンへ移ったのです。「思い立ったらすぐ行動という家系」と当時を振り返っていましたが、イギリスは学生時代からサマースクールで来ていたなじみの土地。新天地のイギリスでゆまさんは、クラブ文化が根付き、音楽があって芸術があってそのあとにファッションがある、ファッションありきのフランスとは異なる文化などを、クラブファッションの第一人者であるミチコさんのもとで学びました。ちなみに、後年に訪れたときのパリの印象は変わり、今はその魅力を十分に理解し、楽しまれているそうです。現在ファッションの主要なマーケットはアジア。しかし、パリは「世界のショールーム」であり、そこから発信することに意味がある。やはりパリは最先端のファッションの街といえるのでしょう。

3年間のロンドン生活を経て帰国。海外を経験すると、日本のマーケットは特殊であるとの印象を受けました。「日本にいると分かりませんが、アキバ文化みたいなムーブメントは海外ではみられないもの。島国ならではの文化で、外国人目線に立つと面白いと思いました」

救いの手を差し伸べてくれた母

有名デザイナーの仕事というと、ファッションモデルが着る華やかな衣装や、ブランドショップに並んでいるおしゃれな洋服のイメージがあるのですが、ゆまさんは多彩なジャンルを手掛け、高い評価を得ています。そのひとつがフィギュアスケーター無良崇人選手の衣装。「スケート界は衣装デザイナーが不在の特殊な世界で、みなさん自分で用意されているのです。あの荒川静香さんでさえ、お母様が縫っていたほど。ボランティア精神でお引き受けしたのですが、決まりきった衣装のルールを崩したいとの思いもあったので、楽しいお仕事でした」

また、小田急の新型ロマンスカー運行(2016年12月)にあわせ、乗務員やアテンダントの新ユニフォームを手掛けられました。この日は小田急のスタッフの方が参加されており、後段の質疑応答の際、「スタッフの動きをしっかり観察され、デザインだけではなく機能性も重視してくださり、素晴らしいユニフォームでアテンダントのモチベーションがアップしました。お客様からも好評です」と、スタッフの喜びの声を代弁されていました。

小田急の仕事を振り返るゆまさん

小田急の仕事を振り返るゆまさん

このほか、宮本亜門さんの舞台衣装も担当されました。片岡愛之助さん主演のコメディーで、通常、色や構成が決まってから衣装デザインという流れになるのですが、この作品では、ゆまさんが先に色を提案するという逆の形で進んでいったそうです。

このように現在は多方面で活躍されているゆまさんですが、かつてはコシノ家のプレッシャーを背負い、どう評価されるか、どう数字を作っていけばいいのか、スランプに苦しんだ時期もあったそうです。そんなとき、救いの手を差し伸べてくれたのがお母様でした。「まさにぐっと掴んで救い上げてくれたという感じでしたね。同じ苦労をしてきたデザイナーとして、私の気持ちを分かってくれたのではないでしょうか。きっと母も祖母に対して同じ思いを抱いていたのだと思います。母に救ってもらってからは、突っ走って進んでいくことができました」

「コシノの精神」と理想のデザイナー像

「スプリングサマーコレクション」のDVDも上映され、みなさん華麗なステージにうっとり

「スプリングサマーコレクション」のDVDも上映され、みなさん華麗なステージにうっとり

綾子さんから受け継がれる「コシノの精神」とはどういったものでしょうか。ゆまさんは「根底にあるのは岸和田の『いてまえ精神』。エネルギー、スピード、腰のすわり方。常にポジティブであり、自ら道を切り拓いていかなければ前へは進めません」と話されていました。

時代の変化に伴い、デザイナーのあるべき姿も変わっているようです。「ファッションは世の中の流れと共に変化します。どんなところでも対応できるのがブランディング。いまの時代は洋服だけのデザインではダメで、(お客様の)ライフスタイルまでも想定し、提案していくというプロデュース能力も必要。『モノ』を売るには、『コト』がないと浸透しないのです」

ゆまさんのブランドは、40~50代のキャリア層が中心ですが、なかには3世代で来店される方も。「女性のデザイナーズブランドにありがちなのは、デザイナーと共にお客様の年代も上がってしまうこと」というジレンマがあるため、「常に40~50代をキープできる普遍性が必要で、年齢層を広げるよう意識しています」とのこと。また、ヨーロッパとの社会背景の違いにも触れ、「本来、ファッションとは年齢ではなく属性で区別するもの。ヨーロッパのように階級がない日本では、年齢が階級になってしまうでしょう」と分析されていました。

講演あとは、「2018スプリングサマーコレクション」の様子をDVDで紹介。テーマは「変幻自在」で、プロジェクションマッピングを多用した絢爛なステージに、参加者の視線が釘付けになっていました。後半にはコシノヒロコさんも元気に登場されたのですが、82歳という年齢を聞いて,会場のみなさんはその若々しさにビックリ! さすがトレンドに敏感なお仕事をされている方は、気持ちも見た目も若いと感心させられました。

颯爽と登場されたコシノヒロコさん

颯爽と登場されたコシノヒロコさん

ところで、みなさんはモデルが着ているような洋服など自分には無理、と諦めてはいませんか? 決してそんなことはありません。モデル並みの体型でなくても、「中身が細く」「足が長く」「顔が小さく」みえるよう、誰もが着こなせるようにデザインされているのです。ゆまさんは「洋服は着てみなければ分かりません。とにかくお袖を通してみてください。洋服は一番近い住空間。素敵な洋服を着ればモチベーションが上がり、どんどん綺麗になっていきます。そして、見る人にも影響を与え、心を動かすのも洋服の魅力で、相手に褒められれば、ますます気持ちが高揚しますし、(気に入った洋服を着ることは)自分を向上させるチャンスでもあるのです。それは男性も同じです」と、おしゃれの楽しさを力説されていました。

DVD上映後は、ゆまさんから嬉しいプレゼントが。抽選の結果、玉木さんと小池さんに3月22日に恵比寿ガーデンホールで開催されるコレクションの招待券が贈られました。

玉木さん

玉木さん

小池さん

小池さん

最後は質疑応答タイム。さまざまな質問が寄せられたなかで特に印象的だったのが、「どのように感性を磨き続けているのか」ということ。「アスリートと同じで一日でもトレーニングを休むとダメ。常にファッションに関連することに触れることが大事なのです。たとえば、産休や育休で長期間休んでいたスタッフが会社に戻ってきたとき、それまでの間、資料などをみていたかどうか、明らかな差が出るのです。自分の仕事に対するプライドを維持する努力は必要だと思います」とのお話を聞き、これはファッション業界に限らず、どんな仕事にも当てはまることだと感じました。

参加者の声

2組の参加者に、感想を伺いました。まずは大房さんとラコーさん。お二人ともこの日のため、ゆまさんのブランドを着て来られたとのこと。

ラコーさん(左)と大房さん

ラコーさん(左)と大房さん

「(コレクションの映像をみて)欲しい!と思いました。私にも着れそうなラインがあったので。ファッションのこだわりは体型を隠すことでしょうか(笑) 好きなものを着ています。ゆまさんのお洋服を着ていると、『それ、どこのブランド?』と声をかけられるのですよ」(大房さん)

「(コレクションの映像をみて)こういう色づかいや表現があるのか、と刺激を受けました。まさにアーティストの域ですよね。好きだからこそ、常に走り続けて、いいものに触れるというお話を聞き、素敵だと思いました」(ラコーさん)

続いては中谷幸俊さんと、巴留菜(はるな)さん親子。巴留菜さんのお名前の「巴」は、パリ(巴里)で生まれたことに因むそうで、ゆまさんと同じ文化服装学院を卒業後、現在はデザイナーの卵として日々勉強中とのこと。

中谷幸俊さんと娘の巴留菜さん

中谷幸俊さんと娘の巴留菜さん

「私はIT関係で、まったくの畑違いなのですが、先生のお話は通常のビジネスと共通する部分が多いと感じました。特に先生のお話のなかで出てきた、コトづくり、感性といったことは、我々のビジネスにおいても非常に重要なのです。あと『いてまえ精神』、これは松下幸之助の『やってみなはれ』と通じるもので、そうだねと言いたくなる場面が多かったです、違った世界のお話が聞けて大変に勉強になりました」

「就職先がヨーロッパのトレンドを重視するブランドなので、私もいつか先生のようにヨーロッパで活躍したいと思いました。コレクションのなかで、1枚を多角的にみせる立体裁断でリボンを作ったシーンがあったのですが、これは学生時代に学んだことで、自分もリボンを作ったことがあるので、親近感と同時にプロの凄さを感じました」

ゆまさんのお話を聞き、改めてファッションの楽しさを感じられた方が多かったのではないでしょうか。店頭でゆまさんがコーディネートアドバイスをしてくださる大好評のイベントもあるので、興味のある方は、ぜひHPをチェックしてみてください!

YUMA KOSHINO
http://yumakoshino.com/

小篠ゆまさんとパリクラブ輝く会のみなさん

小篠ゆまさんとパリクラブ輝く会理事