【レポート】成嶋志保 レクチャー・コンサート

フランツ・リスト シューベルト歌曲より
「水面に寄せて」「魔王」

最後の曲は、フランツ・リストです。技巧的な曲が多いイメージのあるリストですが、それとはまた違ったリストを演奏していただきました。

「フランツ・リストはショパンに比べると技巧的な曲が多くて非常にスポーティ-なイメージがあります。私が今日ご紹介するリストはどちらかというと、編曲に長けていたリストの表情をご紹介したいと思います。

リストは15歳でピアニストとして生計を立てており、何千回もの公演をヨーロッパ中でこなしていました。彼の腕力に耐えきれず、当時のデリケートなピアノは弦が切れてしまい。予備のピアノが何台もあったそう。そんなピアノの可能性を探っていたのがリストではなかったのだろうかと考えています。また、ハンガリー出身でドイツ、フランス、イタリアを行き来しながら、少年時代から青年時代にパリの文化と社交の中でどのように生きていったらいいのか思い悩んだ経験が彼の作品に影響を与えていることを意識しながら曲を味わうと興味深いと思います。

リストは大きなホールでもピアノの音が届く曲を書いています。また、ベートベンの1番から9番をピアノ一台で弾けるように編曲したのもリストですし、当時、ピアノは室内楽か歌の伴奏でしか使われなかったのを、彼はたった一人で まるで王様のように最初から最後まで演奏するというリサイタルという形式を作ったのです。

今日の「水面に寄せて」と「魔王」は、もともとシューベルトの歌曲です。
それをリストがピアノソロでも演奏できるように編曲しました。左手で歌が出てきて、右手で二番の歌詞が出てきて、だんだんとピアノ全体でモチーフを演奏するという流れを聞いていただけると嬉しいです。「魔王」は、実は優しい存在で優しく子どもたちに「こっちにおいで」と呼びかけるのですが、それをピアノでどう表現するか。ナレーターと子供と大人と魔王という四役を1台のピアノで表現したいと思います。

成嶋志保さん


 

最後は、参加者の皆さんに今回のレクチャーコンサートの感想をうかがいました。

向後さんは、成嶋さんの高校の先輩だそう。

「私はあまり音楽に詳しいわけではないのですが、それでも楽しめました。その演奏からパリを感じることができましたし、演奏後のこの会食はまさにパリの香りですね」

高橋さんは成嶋さんと共通のお知り合いが複数いて、奥様が現代音楽の作曲家だそう。そんな高橋様の感想はいかがでしょう。

「とても楽しい演奏でした。後半のショパンがとっても良かったです」

次は、お二人でご参加している河野さんと玉木さんの感想。

「セシル・シャミナードの「孤独」の演奏がすごく良かったです。今日、この女性の作曲家に出会えたのは、成嶋さんのおかげですね。私はシューベルトが好きなのですが、シューベルトの曲を編曲しているのは今回、初めて知って興味深かったです」

成嶋さんの演奏はもちろん、作曲家の生き様や、曲ができた背景などのレクチャーを受けることでより深く曲を鑑賞できます。19世紀のフランス、そしてパリの街の雰囲気を味わいながら、その時代を生きた作曲家の楽曲に酔いしれる夕べとなりました。