【レポート】第16回パリクラブ輝く会 講演会「松平家から学ぶ和のおもてなし」

“武士の覚悟”の大切さ

茶筅が竹で出来ているのは、身を削って人のために尽くすという意味がある、と説明する松平氏

茶筅が竹で出来ているのは、身を削って人のために尽くすという意味がある、と説明する松平氏

最後にご自身がプロデュースした茶道具「I for You 宙(そら)」を用いて、茶の湯の所作を披露した松平氏。その際、戦国時代の武士が茶箱を戦場に持って行き、出陣前にお茶を点てた話になったのですが、陣点と呼ばれるそうした場において、武将は一服のお茶を自らの覚悟として服し、丹田の中に収めてから出陣したそうです。そんな話を粛然と語った後、「テレビを見ていると、今の男性はペラペラペラペラ喋っては『ごめんなさい』をしていますが、あれは駄目なんです。『謝るくらいなら喋るな!』と言いたい」と付け加え、笑いを誘います。続いて「刀をいかに収めるかを知らなければ、絶対抜いてはならない。それが武士なのです」と述べた一言は、男女問わず考えさせられる言葉でした。
松平氏の話は、その凛とした声の響きと共に、全てが優美な所作と一体になっており、彼女が語る「お屋敷の中」の生活の知恵や工夫は、一見取り立てて何でもない些事でありながらも、それらが重なることで、やがてひとつの小宇宙が立ち現れてきます。仏教にいう五輪(地輪・水輪・火輪・風輪・空輪)のその向こうに宇宙があり、松平氏は「捜し物をするときは、その宇宙を探すようになさい」と幼少期より教えられていたそうですが、その「小宇宙」にこそ、人生を楽しむ秘訣があり、それこそが人をもてなす心ではないか――。そんなことを松平家の「教え」に感じたひとときでした。

茶道具「I for You 宙(ルビ・そら)」

茶道具「I for You 宙(そら)」


会場には、柳生新陰流の関係者も。質疑応答の時間、「本日の松平先生の一挙手一投足には、柳生新陰流の所作を感じました」と話し、松平氏が驚く場面も

会場には、柳生新陰流の関係者も。質疑応答の時間、「本日の松平先生の一挙手一投足には、柳生新陰流の所作を感じました」と話し、松平氏が驚く場面も

散会後も、場内のあちこちで参加者による雑談の花が咲いたので、お邪魔して感想を聞いてみました。ジュエリー・デザイナーの華宝(ルビ・かほう)さんは、「先生の著書『心の作法』(講談社刊)は以前から愛読していまして、是非お話を一度お聞きしたいなと思って参りました。お茶の話で、『相手を信じて覚悟の一服を飲む』と仰っていましたが、人をもてなすときの裏表のなさという部分にとても共感しました」と話してくれました。

モデルの育成をしている辻本さんは、「先日パリで開かれたジャパンエキスポで、モデルたちを連れてファッションショーに参加させて頂いたばかりだったんです。そんなときだったので、凄く勉強になりました。『丹田に力を込める』など、今日の聴いたお話は、モデルの仕事では大切なことばかりです」と話してくれました。

歴史の中で伝えられてきた松平家の心は、この日会場を訪れた人々の血肉となり、また新たに受け継がれていくに違いありません。

講演終了後、松平氏を囲んで「輝く会」実行委員も記念撮影

講演終了後、松平氏を囲んで「輝く会」実行委員も記念撮影