【レポート】第16回パリクラブ輝く会 講演会「松平家から学ぶ和のおもてなし」

丹田に力を込める意味

「丹田とその真後ろとに力を入れて姿勢を押さえると、(姿勢が)ブレません」

「丹田とその真後ろとに力を入れて姿勢を押さえると、(姿勢が)ブレません」

こうした話を、肩肘張ることなく、ユーモアさえ漂わせながら話すのが松平氏の面白さであり、そのユーモアにも皮肉や警句ではなく、どこかフェミニンな楽天性を感じさせるのが不思議な魅力です。
「『お皿は裏から洗う』と私が本に書いたのを読んだ櫻井よしこさんが、『私は色んなことを知っているけど、お皿を裏から洗うなんて初めて知りました』と驚かれて、私も『え?お皿って表から洗うものなの?』って驚いて、意気投合しました」という逸話などは、お二人の“ガールズ・トーク”が目に浮かんでくるようです。ちなみに、お皿を裏から洗う理由について松平家では一切教えてくれなかったそうですが、松平氏によれば、「表から洗うと単に片付けることになっちゃう。でも裏から洗うことで、お皿だってそこにちゃんと存在していることが判る。洗うという意味が出来てくるのです」と解釈し、現在に至るとのこと。
それはそうと、松平氏のお話の中で繰り返し出てきたのが、丹田という言葉でした。丹田というのは、東洋医学において臍の下の辺りにあるとされ、ここに力を入れることで、「健康と勇気を保つことが出来る」(「旺文社国語辞典」より)といわれます。松平家では5歳になったときより、雑巾を絞る際丹田に力を込める訓練をさせられたこともあり、中学の林間学校で気合一声、丹田に力を込めた松平氏の姿に同級生たちが大騒ぎになったそうです。「丹田に力を込めて姿勢を正し、挨拶すれば、大概の人が“この人の話を聴いてみよう”と思うのです」という話には、成程と思わせるものがあります。また、嫌なことや言いたいことがあったらその場で文句を言うのでなく、お風呂場で深呼吸してから言いなさいということを祖母(松平俊子)より常日頃から聞かされていた松平氏は、あるとき夫婦喧嘩の場で、祖母の言いつけ通りお風呂場で一旦深呼吸したら言いたいことをすっかり忘れてしまったそうです。「深呼吸して忘れてしまったら、大したことではないんです。それでも覚えていたら言いなさい、ということなのです」そんなエピソードには、来場者も頷いていました。

「(名刺や肩書きではなく)自分の心の目=心眼(しんがん)で人間を見なさい、ということを幼少時から教えられました」と話す松平氏

「(名刺や肩書きではなく)自分の心の目=心眼(しんがん)で人間を見なさい、ということを幼少時から教えられました」と話す松平氏


「嫌なことや言いたいことがあったらその場で文句を言うのでなく、お風呂場で深呼吸してから言うことを、お祖母様から学びました」

「嫌なことや言いたいことがあったらその場で文句を言うのでなく、お風呂場で深呼吸してから言うことを、お祖母様から学びました」