【レポート】講演シンポジム「ル・コルビュジエの浮かぶ建築」〜セーヌ川洪水による災害を克服しようとする桟橋プロジェクト~

100年の時空を超えた思いを伝えるプロジェクトに、参加者も感嘆

討論会の後は、立食パーティーが開かれました。
株式会社アロイの西田社長が声を掛けてくださったので、さっそく今回のシンポジウムの感想を聞いてみることに。先述の通り、アロイはステンレス鋼を扱う国内最大級の会社として知られます。「参加者の方がとてもいい提言を投げかけていたのが印象的でした」と話す西田社長。「一人目の方は、セーヌ川からは綺麗なもの以外は撤去されてしまうから、早急に引き揚げないといけない、と危惧されており、全くその通りだと感じました。二人目の方は、専門家の立場から引き揚げの具体的な方法を提案されており、思いがよく伝わってきました」とも。今回の桟橋製作の仕事について、「ステンレスは初期投資はかかりますが、100年持つのは当たり前なんです。普通鋼は、10年に一度メンテナンスする必要がある。そんな次第で今、海外ではステンレスの構造物が増えているんです。弊社がこの仕事を任せて頂いた背景には、そうした世界的な流れがあるのかもしれません」と話してくれました。

西田社長

西田社長

今回はテーマがル・コルビジェとあって、会場には美術関係者の姿も。画商の西村さんは、「ル・コルビジェ設計による国立西洋美術館が、先日世界遺産に登録されたというニュースもあって、コルビジェの建築をもっと知りたいという気持ちになっていたんです。そんな矢先だったので、今日は“待ってました!”という気持ちで駆けつけました。最近の洪水のニュースなどをみても、外国人だけでなく、日本人もいつ何時難民になるか分からないわけで、今日のお話には、考えさせるものがありました」と話してくれました。

西村さん

西村さん

18世紀末の作家、ラクロの研究をしている仏文学専攻の大学生小黒さんは、「文学と芸術関係に以前からずっと関心があったので、知人の誘いで聞きに来ました。アジール・フロッタンの存在そのものを全く知らなかったので、今日の話は全てが新鮮でした。フランスに関する知見が一つ広がった気がします」と話してくれました。

小黒さん

小黒さん

オーストリアで人材開発の仕事をしている津波(つは)さんは、「私は建築や美術を見るのが趣味で、時々パリにも行くのですが、ああした船があるとは思ってもいなかったので驚きました。難民問題や日仏の友好など色々なことを考えさせるきっかけになるアジール・フロッタンは、後世に残していかなければならないと思いました」と話してくれました。

津波さん

津波さん

エコール・ド・パリの香気と共に私たちの胸に刻まれる1920年代パリ。その時代に、ル・コルビジェをはじめとする様々な人々の思いを繋いだアジール・フロッタンは、今2020年を迎えようとしている人々の思いを繋ごうとしています。今回のシンポジウムを聞きながら、この浮かぶ避難所がセーヌ川を100年の時空を超えて、私たちに何か大切なものを伝えに来たように思えてなりませんでした。