【レポート】第15回パリクラブ輝く会&第4回日仏経済フォーラム共同講演会「あなたも狙われている 世界的サイバーエスピオナージ時代 日本とフランスの課題と展望」

サイバーエスピオナージの脅威にもっと関心を持つ必要がある

世界が今直面するそうしたサイバーエスピオナージの脅威を語った新田氏に、多くの質問が来場者から投げかけられました。その多くは、我が国の現状に関するものでした。
まず、「日本では、防衛のためでもマルウェアを作ると犯罪になるというが、ディフェンスは攻撃能力があって初めて成り立つもので、専守防衛のみではディフェンスにならないのではないか?」という意見について新田氏は、「現在の国際社会において、情報を抜かれる脅威に対し、情報を抜くことで先手を打つ、所謂『エスカレーション』が過熱している状態は歓迎できません」とした上で、「しかし、ディフェンスのための攻撃の手法は開発していく必要があります」と言い、「フランスで間もなく、サイバーエスピオナージに対する制度が改正されます。これはディフェンスを主眼にしたものですが、日本と違い、どんどん予算を付けることを打ち出しています」とも言いました。
次の質問者の、「日本が防衛に徹して攻撃に踏み込めない真の理由はどこにあるのか?」という問いに対しては、「一言で言うと国民の心情です」と新田氏は述べ、「戦時中、特攻隊など、国民に対するやり方があまりにもひどかったので、スパイとかインテリジェンスといった言葉に対してネガティブなイメージが出来てしまったのです 。又、敗戦後、米国から大きく日本のインテリジェンスキャパシティを物理的にそがれてしまったことも大きな要因です」と説明、さらに、「かつては、経済と安全保障とは切り離された項目でした。しかし、現在はアメリカにおいても、貿易の問題を扱う機関であるUSTR (米通商代表部)ですら、現実的には現在サイバーエスピオナージの駆逐に乗り出している。私たちは、もう少しサイバーエスピオナージの脅威に関心を持つ必要があります」と付け加えました。
また、「アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといったアングロサクソンの国々が主として軍事機密情報を共有しているエシュロンなる団体があるが、これに日本が加入出来ないのは何故なのか?日本国内の機密保持の体勢が不十分なことも一因なのか?」という質問には、「アングロサクソンの中にアジアを入れたくないという気持ちもあるでしょう。しかし、仰る通り、日本は脇が甘いと思われているのも確か。日本の政府高官の中に、海外の会合の場で、大事なことをポンポン喋ったりする方がいるのです。こういう人たちとインテリジェンスを共有することは到底出来ないと思われてしまうわけです」と答えました。
さらに、「中国には、ZTEという電子機器メーカーがあり、これらはコンピューターやサーバーに組み込んだ仕掛けがアクティベイトされると、情報を中国に送ってしまうと聞いています。もしそうであるとすると、日本などでは既にZTEは沢山使われているが……?」という質問には、「残念ながら、現在世界経済は中国抜きでは成り立たない実情があります。ZTEだけでなく、Huaweiにしても中国のメーカーは中国共産党の体制下に入っていますから、それを使った企業の情報が流出したとしても当然ですし、中国の法律では自国の企業が情報を上げることが義務化されてさえいるのです。中国の電子製品を『安いから』という理由だけで購入するのはいかがなものかと思います」と答えました。