【レポート】第13回パリクラブ輝く会コンサート「花咲く文化の交差点」中世フランスの音楽

刻を超え、“貴婦人に騎士が愛を囁く歌”を奏でる現代の吟遊詩人たち

演奏会の後、トルブールの皆さんにお話を伺いました。「19世紀のパリ等をモチーフにした立体模型を制作している芳賀一洋さんのギャラリーで演奏したときに、当時のパリクラブ会長の瀬藤さんがいらしていたのがきっかけで、今回の催しが実現しました」と話してくれたのは、中世ハープ担当の小坂理江さん。今回の演目については、「貴婦人に騎士が愛を囁く歌「Fin’amor洗練された愛」は、12-13世紀の中世世俗音楽の主題で、ここをベースに演奏していけば、そこから先の時代の音楽の勉強にも繋がると思っています」と述べました。また、中世フィドル担当の上田みさこさんは、「当時どんな音が鳴っていたか実際には判らない。基本的に旋律しか譜面が残っていないんです。何拍子とか残っている譜面もあれば、全然残っていない譜面もある。私たちの楽器で、いかに面白く見せられるかを追究しています」と述べました。パーカッションの立岩潤三さんは、「正解がないところに面白さがある。振り幅があるところに、編成でどう持って行くかが醍醐味なんです」と付け加えてくれました。今後の活動としては、11月12月にこの日演奏されたレパートリーの勉強会、イギリスのクリスマスの曲の演奏会があるとのことなので、要注目です。

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ゴシック・ハープ(演奏中の写真で小坂さん持っている、上部が尖ったハープ)が出現した15世紀以前に主流だったロマネスク・ハープ。そして、よりポータブルなアングロサクソン・ライアー。


その起源は、800年前といわれるフィドル。バイオリンと違い、設計図が残っていないフィドルは、壁画に描かれたものなどを元に寸法を起こして作っています。バイオリンが5度調弦になっているのに対し、5度と4度が交じっている調弦が特徴。今の音階とは違って教会旋法に乗りやすい楽器だそうです。


シンプルな木枠に革が片面だけ付いているフレームドラム。奥のものは北アフリカ・マグレブで使われるベンディール。起源はメソポタミアにあるともいわれ、四大元素を四つの音で表現。四大元素が治癒力を持つという考えに基づき、病気の治療などにも使われました。

(本文中の年代表記は、「ブリタニカ国際大百科事典」、ジュール・ミシュレ著・篠田浩一郎訳「魔女」、Ch‑E.デュフルク著・芝修身、芝紘子訳「イスラーム治下のヨーロッパ」を参考にしました)