古代より地中海貿易の要所として栄えたアフリカ北端の国アルジェリア。わが国では、ジャン・ギャバン主演の映画「望郷」やカミュの小説「異邦人」などの舞台として親しまれ、マグリブへのエキゾチックな憧憬を掻き立ててきました。しかしローマ帝国、イスラーム帝国、オスマン帝国の支配を受け、1830年にフランスの植民地を経て1962年独立したこの国は、エキゾチズムのみでは語れません。宗教も人種も異なる様々な文化が長い歴史の中で出会い、重層的に醸成された独特な魅力がそこにはあるのです。その魅力の全貌とは?日本との関係の今後は?わが国と友好関係を結んで55年目となる節目に、ベンシェリフ駐日特命全権大使が、語ってくれました。
《大使のご講演レジメは HPフランス語版の方でご覧いただけます。》
講演終了後、来場者にお話を伺いました。まずは欧州滞在歴が長かったという小西さんご夫妻。奥様は「私自身はアルジェリアに行ったことはないんですが、パリにいた頃はアルジェリア出身の人たちとはよく話したりしたんですよ。マグレブ(北アフリカ)の人って、ヨーロッパ人そっくりの顔立ちをしている。彼らのルーツはどこなのかずっと興味があったので、今日の大使のお話の中でもベルベル人の話のくだりなどはとても面白く聞きました」と話してくれました。隣でご主人が、「家内の父親はアルジェリアにずっと医薬品援助をしていたんです」とニコニコしながら付け加えます。奥様のお父様は、旧社会党の結成メンバーでもあった故・岡田宗司参議院議員で、その慈善活動によってアルジェリアから勲章までいただいたとのことでした。
弁護士の仕事でフランスやベルギーに滞在したことのある須田さんは、「仕事仲間の奥さんがアルジェリア人だったりと、僕自身アルジェリアには人間関係で繋がりがあって以前から興味を持っていたんです。今のアルジェリアという国が単なるアラブ圏というだけでなく、色んな文化が積み重なった上にあるということが判って凄く勉強になりました」とのこと。
企業取締役の飯尾さんは、「アルジェリアは天然ガスのイメージが強かったので、大使の講演を聞いて印象が変わりました。色んなカルチャーがミックスしてるんだなと感じましたね。また、テロリズムが吹き荒れる中、今アルジェリアがどのように進んでいくべきかという話は興味深く聞きました」と話してくれました。
講演の後は、アルジェリアの軽食やお茶菓子を囲んでティーパーティーが開かれました。砂糖を使ったお菓子と揚げ物、そしてレモンの香りに包まれて、心はすっかり異境の地へ。来場者も「揚げ物系が多いのに、美味しいからどんどん食べてしまう」と舌鼓を打っています。日本では、未だお伽の国のようなイメージが根強いアルジェリア。しかし、遠かった筈のこの国が、素敵な講演と美味しい料理を通して、一挙に身近になりました。