【レポート】第3回日仏経済フォーラム 講演討論会「日本・EU(欧州連合)経済連携協定の内容と展望~新たな世界通商体制に向けて」

「成長性の高い航空宇宙関連にも日本側は注視を」
在日フランス商工会議所理事&在日欧州ビジネス協議会委員 ギィ・ボノー氏

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まず、私が所属するフランス商工会議所は、欧州ビジネス協議会を通じてEUと日本とのEPAに対して間接的に参加しています。渡邊先生からもご紹介がありましたように、日本とEUのビジネス界は自動車、同部品、建設、エネルギーなど分野別に委員会を設け、従来から実現に向けた働きかけを行ってきました。

私は、フランスの航空宇宙企業であるサフラン・ジャパンの社長をしていて感じることですが、日本とEU間の戦略的パートナーシップ協定において防衛面での協力関係はまだ弱いところがあります。EUの防衛産業が日本の防衛産業に協力をする形で発展を図るべきですが、まだこのテーマは交渉のテーブルにのっていません。今回のテーマであるEPAについては、様々な議論がなされており、とくに双方の国にあった従来のルール(規制)をどのように回避して、双方の利益とするかが大切です。

(この分野の)成長による利益は地域に安定をもたらし、東アジアの地政学的な点からもその効果は大きいと思います。

これまでの議論で、日本とEUのEPAは日系自動車関連企業に寄与するという議論がありました。しかし、電気自動車がこれから自動車のメインになってくることが予想され、従来の車種は、伸びが止まってくるでしょう。

一方で大きく市場が伸びるのは航空市場です。航空機についてはエアバスもボーイングも生産能力に限界があり、これを補うものとして日本の協力が不可欠です。グローバルなサプライチェーンを念頭に置くべきであり、その中でエアバスの日本への輸入がもっとあってもいいと思いますし、三菱重工によるMRJの開発は航空機分野での日本の能力の高まりを示すものであり、これも協力機会の拡大と捉えるべきでしょう。

イノベーションこそが欧州の成長のカギを握っています。最近、欧州では保護主義的な政策、それは選挙の結果でも見受けられますが、日本はEUと協力し保護主義を打破しなければなりません。大きな変革期を迎えている現在、日本とEU双方は相互の成長戦略のためにもです。すでに、国境というのは意味をなしません。

これからも欧州と日本はEPAを通じて、世界経済のためにイノベーションを起こすための深い協力をしていく必要があります。