【レポート】第1回 Salon de Paris Club

自分のcomfort zoneから飛び出しなさい

講演の最後の質疑応答では硬軟入り混じった質問が出ました。とんかつ定食と寿司が好きなルレさんは、納豆が苦手だったそうですが、相馬市のLVMH子どもアートメゾン(震災を経験した子どもたちのメンタルケアを兼ねたワークショップとしての場)に出席した際に、会食で食べた納豆巻きが美味しくて、それ以来納豆への苦手意識がなくなったそうです。
また日本の伝統工芸品では九谷焼や西陣などが好きで、ねぶた祭りなどに代表される日本の祭りも大好きとのこと。また「もしフランスの大統領をどこかに連れて行くとしたら?」という質問に対して「新宿のゴールデン街」と答えたのは大変ユーモアがあって印象的でした。ほかにも京都の永観堂や根津・千駄木といった地名も次々と出てきて、ルレさんの日本への造詣の深さを窺い知ることができました。

ユーモアを交えた内容で会場の雰囲気を和ませるルレさん

ユーモアを交えた内容で会場の雰囲気を和ませるルレさん

今でもご自身を外国人だと意識する瞬間はあるそうです。タクシーに乗るとき、運転手が少し怖がっている様子がわかるからです。そしてその後ルレさんが流暢な日本語を話すと「お客さん、日本に来て長いんですか?」と驚かれるそうです。
それとかかわらず、気持ちはすっかり日本に馴染んでいるようで、パリに出張に行くたび、10日もいると後半には「早く日本に帰りたい」と思ってしまうとのことです。
もしフランスに留学しようと思っている学生がいたら、ルレさんは「自分のcomfort zoneから飛び出しなさい」と声をかけるそうです。彼は「ゆでがえる」が大嫌いで、日本国内にずっと留まって親の庇護を受けたままでは過保護になりかねないと指摘します。ZARAジャパンの経営者時代、ルレさんは大学に行かずに就職した新入社員たちをオーストラリアなどに半年間送り出しました。みんな、最初は英語もできなかったけれども、半年後帰ってきたときには立派に成長していたそうです。だから日本の若者たちには日本から飛び立ち、シニアの方とたくさん話をして、ルーティンでは得られない知見を獲得し、そしてまた、日本に帰ってきてほしい。そう語るルレさんの中には確かに若者への熱いEmotionを感じ取ることができました。