【レポート】輝く会 第6回「フランス人を魅了する京町家再生プロジェクト」

古い京町家の再生事例をビフォーアフターで金子さんが解説

2016年現在、京町家モナムールとして金子さんが改修を手がけたのは5つの作品。その一つ一つの作品にはアーティスト金子さんの深い思い、それぞれに込められたメッセージ性、そして建築デザイナー金子さんとしての住みやすくするためのアイデア、それを実現する京都の職人たちの魂が集まってできています。

このセミナーでは、その一つ一つの作品を詳しく紹介していただきました。例えば、町家建築ではおなじみのうなぎの寝床と呼ばれる細長い間取り。あるイギリス詩人は、他人の部屋を通って自分の寝室に行きたくないというリクエストを出したそうです。元々あった図面、そして金子さんのラフスケッチ、建築図面と完成した写真を紹介しながら、古い町家が生まれ変わっていく様を目の前で活き活きとした表現で見せていただけました。西陣織の帯を使った建具など伝統を生かしたデザイン、送り火が見える部屋など、それぞれの作品のこだわりを詳しく説明。金子さんの豊富なアイデアとセンスに会場からは驚きのため息が漏れていました。

そして、シリーズ最新の作品である「詩宝箱」は彼女にとって印象深いチャレンジだったそうです。

「大工さんにも“こんなにボロボロの建物は恐ろしくて手がだせません”、と言われたくらいの物件でした。私も最初は千年の古の都、伝統の都の路地奥にこんなにも貧しいトイレさえもない長家が。と茫然自失、一目散に逃げ帰りました、ただ半分傾き見捨てられた小さなマッチ箱のような町家に、落ち着いて考えると私の創作意欲を逆にかきたてられました。これは偶然が私に与えたチャレンジ!と。“小さな箱をどうしたしたら?”“アッと驚くような面白い箱にできるか?”と。その空間に身を奥だけで気持ち良く、自然とゆたかな詩が紡ぎ出されていくような“驚きの空間にしよう!“と決心—これは、私にとって大きな挑戦でした。その為にはどんなディテール迄もおろそかにできません、全てがアートピースのように!と自分に言い聞かせながら。こうしてうだる様な夏の間、資材、木材、大鋸屑、埃と脚の踏み場もない極小空間での工事現場は、訪れた人々も逃げ帰るほど。
それが竣工した「詩宝箱」を前にして一様に皆の顔が輝き、驚く顔と共に思わず発する気持ちが良いという言葉に、してやったり(笑)!の何ともいえない高揚感はすばらしかったです!」

そんな金子さんが手がけた作品は、ネット無しの口コミで世界中からゲストが訪れ、また前述の英国詩人の「アート・ハウス」はセレブリティの予約が殺到して、ご本人が泊れないほどだそうです。

そして、セミナーを締めくくったのは、音楽と映像をバックに、詩を朗読するように京町家モナムールシリーズという自らの建築を紹介する美しい仕掛けでした。建築を音楽のように語る金子さんならではでした。

京町家がこのように、モダンで使いやすく再生される様子を目の当たりにすることができました。

京町家がこのように、モダンで使いやすく再生される様子を目の当たりにすることができました。