【レポート】フランス生まれの画期的ケア技法 「ユマニチュード」の本格的普及に向けて

人間は愛し合うために作られている

ユマニチュードを脳科学の面から研究する竹林教授

ユマニチュードを脳科学の面から研究する竹林教授

ユマニチュードの可能性を強く感じさせるジネスト氏の講演の後、静岡大学・竹林洋一教授から、ケアを受けた方の脳の中でどのような変化がおこっているかについての興味深い研究報告がありました。研究は現在も続き、エビデンスを積み重ねて情報を知識に変えることで、ユマニチュードのより広い普及につながることを期待されていました。

最後の質疑応答で、ジネスト氏から語られた言葉も感動的で深く考えさせられるものでした。
質問者:
「これまでの経験や試行錯誤を踏まえ、人間とはこういうものだ、という考えがあれば聞かせてください。」
ジネスト氏:
「私は神を信じることができない人間ですが、神を信じてもいいかなと思うくらい、人間は愛のために作られていると思います。人間は人と人とのポジティブな関係がないと生きられないことが条件づけられています。愛を持って皆で手と手を取り合えば、武器を持つために使う手は、もうありませんよね。」

会場で聴講された方に感想をお聞きしました。

ケア施設に勤務する菅井さん

ケア施設に勤務する菅井さん

菅井さん:
勤務するケア施設でユマニチュードを実践できたらと思い、研修も受けて勉強しています。
はじめは半信半疑でしたが、日常のケアで実践すると認知症の方の反応が違ってくるので、今は確信に変わりました。他の職員がアプローチすると拒否をする方も、私がユマニチュードの技術を使って接するとすんなり受け入れてくれることが多くあります。施設の上司にも実践を見ていただいて、今は私がユマニチュードの考えでケアすることを承認してもらえるようになりました。

人工知能の研究をしている石山さん、柄川さん

人工知能の研究をしている石山さん、柄川さん

石山さん:
生でジネスト先生、本田先生を拝見することができ、またユマニチュードについて体系的に語っていただき、参加できてよかったです。
私は人工知能の研究をしていてその学会でユマニチュードについて知りました。竹林先生もおっしゃっていたように、ユマニチュードと人工知能の関わりは深く、ケアを受けた方の脳の中で何が起きているかを知ることは研究に役立ちます。
ユマニチュードの研究がされることで、多くの方が安心して使えるものになるのであれば科学者として本望なので、自分もそうした関わり方ができればと思っています。

ユマニチュードへの関心の高まりを表すように、満員の会場には熱気が満ち、終了後にはジネスト氏と言葉を交わそうと列を作る様子も見られました。ケアが必要な人たちとどのように関わりあうことができるのか、また自分が老いたときにどのように生きることができるのか、とても考えさせられる刺激的な講演でした。

ジネスト氏の新刊のご案内

ユマニチュードを開発したジネスト氏とマレスコッティ氏による新刊本が8月3日に発売されます。ユマニチュードに興味を持たれた方は必読です!
本の詳細が以下のリンクからご覧いただけます。

フランスで生み出された、認知症高齢者が穏やかな人生を取り戻すケア方法「ユマニチュード」とは?(ダ・ヴィンチニュース)
http://ddnavi.com/news/311979/a/

『「ユマニチュード」という革命:なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか』

著:イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ
監修:本田美和子
価格:1,512円(税込)
発売日:2016年8月3日(水)
出版社:誠文堂新光社
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