フランスと日本にある共通性がこれからの日仏関係の鍵になる
第3部は、ピエール・ムルルヴァ公使と片岡氏の対談。片岡氏は11年の駐在経験から感じた日仏の関係強化の難しさを語った。しかし、世界情勢が大きく動く中で日本とフランスの関係が日本とヨーロッパの架け橋になることが重要であり、今回のような講演によって日仏関係に光が当たるのは歓迎すると述べた。良好な関係を築くための鍵となるのは、ものづくりや食文化へのこだわりなど基本的な精神構造の共通性だと指摘。フランスでもアニメーションやコスプレなどの日本のコンテンツが流行しているのを見てもその共通性を見出せるのではないかという。片岡氏からは、日仏協力の要因となるのはどこにあるかという質問がなされた。
それに対して、文化は違えどアートや創造性に共通点が多いと考えていると公使は答えた。映画、小説、音楽、絵画、アニメーション、建築などの分野でとても類似性があるのではないかと。日本の文化はフランスでも支持されているし、こういった類似性が技術の分野でもよい連携を生み出すだろうと述べた。
対談は、フランスと日本の共通性について議論がなされ、今後もお互いの文化の情報発信や人的交流を積極的に進めコミュニケーションを深め、文化や技術のイノベーションでの連携が進んでいくだろうという認識をお互いに確認した。
そして、トピックはフランスのスタートアップ企業について。片岡氏はここ数年、フランスで次々にスタートアップ企業が生まれていることに注目。この背景にはどんな政策があるのかについて質問した。それに対しては、フランスがイノベーションを支援するための様々な制度やファンドなどの政策を実施しており、ここ数年でその成果が出てきていると公使は答えた。日本政府もこの状況に注目しており、フランスのようなスタートアップのエコシステムを参考にした政策を実現することが大切だと片岡氏も応じた。
最後は、経済連携協定(EPA) について。TPPの大筋合意が実現しグローバルなバリューチェーンが構築される中で、日本とヨーロッパのEPAの締結が重要ではないかと片岡氏は指摘。フランスのスタンスについて公使に質問した。それに対してEUと貿易協定を結ぶことは重要であり、米国主導のTPPとのバランスをとった連携が必要であり、その交渉を着実に前進させることは重要であると述べた。
その後の参加者からの質問でも日仏間におけるさまざまなスタンダードの制定、フランスにおけるスタートアップ育成とその産業化について、両国の産業構造の違いやトップ人材の交流についてなどさまざまな質問が出て、公使も片岡氏も丁寧にそれに答え白熱した議論が交わされた。