【レポート】講演会『欧州新経済地図の展望』

磯村尚徳氏からの質問、そして会場からの質問に答えるルフルニエ氏

ルフルニエ氏の講演が終わると次は磯村氏との対談。欧州、特にフランスでの知見が豊かな磯村氏は、日本のジャーナリストが欧州やフランスの経済を理解しておらず、日本のマスコミが欧州を語るとき、それはフィナンシャルタイムズを見ているだけで自分からモノを見ようとしないことをチクリと批判してスタート。フランス語が堪能な磯村氏は、ご自身でルフルニエ氏にフランス語で質問。その答えを日本語にご自身で訳していくというスタイルを取った。

欧州における債務の問題を切り口に対談はスタートした。経済の治療薬として借り入れて投資をする方法に問題があり、金融サイクルに支配されていることが欧州経済の問題であるとルフルニエ氏は指摘。しかし、それは解決不可能な問題ではなく、金融政策に依存した経済を正常化すればEUの経済は決して死んでいないと述べた。過去にもスペイン、ポルトガル、アイルランドがこのような危機を経験しており、それを乗り切っている。ギリシャ危機があったくらいでEUがダメになることはないと強調した。

トピックはEU統合の問題。危機だとも言われている統合についての質問を磯村氏が投げかけると、EUの歴史について言及。ド・ゴールが導いた欧州の経済共同体は、かつて敵同士だった国々が敵対関係を修復し統一ヨーロッパを作り上げた。この壮大で豊かな歴史は、新しいヨーロッパを作っていくだろうと。一方で一部の国がコアヨーロッパを形成していく思想には警鐘を鳴らしました。

EUの未来について熱っぽい議論が交わされました。

EUの未来について熱っぽい議論が交わされました。

さらに質問はフランスの政治について。ソーシャルリベラリズムが主流(メジャー)になりつつある現状や現実主義(レアリズム)に回帰している状態を説明しました。そして、独仏の関係は新しい局面を迎えると指摘した。

その後、会場からの質問にもEUの崩壊についての質問がなされました。フランスにおいてもジャン=マリー・ル・ペンといったEU反対派の候補者が台頭し、フランスがEUを脱退することについての質問。これに対して、選挙の結果を予測するのは難しいが決選投票に残る可能性は低いのではないかと述べた。会場からのEUの危機に関する質問に答えていく中で、ルフルニエ氏はEUの歴史は続くだろうというスタンスを示した。

まだまだ時間が足りないという熱気に包まれた会場であった。元アナウンサーの磯村氏がモデレーターだけあって、その収め方もお見事。ユーモアを交えて、今回のイベントを締めくくった。