【レポート】講演会『欧州新経済地図の展望』

フィリップ・ルフルニエ氏と磯村尚徳氏が
欧州経済の展望を語り合う

前回のセミナーに引き続いてフィリップ・ルフルニエ氏が登壇した。今回はミスターNHKと言われ、勇退後、1995年からパリ日本文化会館初代館長に就任。1996年フランス大統領より“レジオン・ドヌール勲章オフィシエ賞”を受賞するなどパリとも深い関わりを持つ磯村尚徳氏との対談形式によるセミナーであった。

前回のセミナーで混迷する世界経済の展望を述べたフィリップ・ルフルニエ氏がヨーロッパ経済にフォーカスして経済の動向を語った。

ルフルニエ氏はいつものように豊富なデータをスライドにして欧州の経済を世界の経済圏と比較しながら分析。

フィリップ・ルフルニエ氏と談笑する磯村尚徳氏。

フィリップ・ルフルニエ氏と談笑する磯村尚徳氏。

グローバルに見た世界の地域・国別の経済成長率のなかで、もっとも成長しているのはBRICs諸国であるが、欧州は人口も増えていないと同時にGDPの成長率は高くない。一人当たりの所得が最も高いのはアメリカであると指摘した。

世界各国の指標を比較して分かってくるのは、欧州と日本は経済状態が非常に似ていること。所得水準は高いけれども成長率が低い。

そして内需の動向を見ると、欧州経済が2008年の経済危機から立ち直っていないことを示している。ユーロ圏は低迷しているのにイギリスとアメリカの内需は回復してきており、日本も低迷しているようだが実は内需が増えていることをデータが示している。

さらに各国の民間投資、公共投資などを分析。回復基調にある民間投資や抑制されている欧州の公共投資について比較を行った。問題は欧州のデフレ傾向である。過度の公的債務によって国家も民間も家計が圧迫され、債務返済に追われてばかりで投資に回ってない。それがさらにデフレを引き起こす悪循環に陥り、経済にブレーキをかけているのが欧州経済の現状だと指摘した。