【レポート】講演会『2016年の世界経済予測と展望』

リスクを抱える新興国、収縮しつつある中国経済

新興国の経済に関してはエネルギー価格の下落という要素によって世界経済のブレーキ役になってしまっている状態を説明しました。このBRICs経済の低迷がアメリカの金利を上げられないことの原因でもあるため、IMFも世界経済の回復はなかなか達成できないと予測していることにも言及しました。

中国経済については多くの経済指標が成長を示していないことから、過剰投資のツケが回ってきて経済が収縮するときに差し掛かってきたとしています。GDPの半分が貯蓄にまわり、賃金が高くなりコスト高の状態に進む中で中国経済は、生産性を上げて投資を抑制する状態に転換させて「新常態」(New Normal)にもっていく必要性があるとルフルニエ氏は指摘。しかし、フランスのエコノミスト、パトリック・アルチュスの試算によれば中国の実質経済成長率は6~7%どころか2.%台だろうとさえ予測しています。

最後に世界経済を俯瞰すると今後しばらくの間スタグフレーションが続き回復していくことは難しいと述べています。2008年以降、世界中すべての国において生産性向上が実現できておらず投資が増えてこない。インドを除いて公的債務ばかりが増えている中では、問題の先送りだけが実行され、金融のサイクルに支配されている。そして調整局面を迎えるという過去の問題が再現するだろうと。だからこそ、IMFのオリバー・ブランシャールやラリー・サマーズはここで金融政策を変えなくてはいけないと言っている。通貨供給量を増やすだけの方針は転換すべきだと強く主張しました。

最初のスライドに戻ります。この「盲人の寓話」のように、世界経済が誤った方向に導かれてはいけない。頭を明晰に保って穴に落ちてはいけないと締めくくりました。