【レポート】講演会『2016年の世界経済予測と展望』

2016年は挑戦の年。それを紐解くため過去を振り返る

2016年から経済は回復傾向を見せるという予測もありますが、ルフルニエ氏の見解としてはまだまだカッコ付きの回復であり、IMFがコメントするようにエアポケットに落ちる可能性も指摘しています。景気循環面だけでは予測の根拠として乏しいとし、2016年を予測するにあたって大切なのが2008年のリーマンショックを分析することだと述べました。ここから、当時の経済状況を詳しく解説。

図式などを用いて分かりやすく解説する中で強調していたのは、実態経済よりも膨らんでしまった金融経済。米国経済は2007年に金融やデリバティブが実態掲載の規模を逆転。その翌年の2008年には経済危機に陥ってしまいました。フィリップ氏はこのことについて当時から危機 の可能性を警告しており、その予測が現実のものとなってしまったのです。

通貨の流通量を増やすことは、金融危機を乗り越える魔法の杖ではない

その金融危機の対策として FRBが取った対策についても深く考察します。経済学者のハイマン・ミンスキーも予測したように過剰な債務はキャッシュ不足による株価の暴落を引き起こす。信用によって膨らみ切った資産価格が急落するミンスキー・モーメントにさしかかる最大のリスクも予想されている。このミンスキー・モーメントと呼ばれる現象がアメリカでも起き、株価や住宅価格が暴落して経済危機を起こしたと指摘。

さらに、その金融危機に対してFRBが取った対策が問題だと言います。当時の議長は解決策は金利を下げることであると提唱。そのようなの行為をルフルニエ氏はこう表現しました。

「金融危機は乗り越えられます。なぜなら、我々にはお金を刷る技術がある」と言っているのと同じではありませんか!

ウィットに富んだユーモアでFRBの金融危機対策を批評しながらも、フィリップ氏は過剰債務から脱出するために債務を増やすことは解決策にならないと主張しました。

2016年の経済を予測するには、この金融サイクルが支配している問題に対処することが重要になるとおっしゃいます。この過去を踏まえた考察から世界の経済の予測を行うことが重要であるとしました。