【レポート】「ブラッセルから見た欧州連合の内幕~その組織的実態と展望」開催

質疑応答で見えてきた、欧州連合の課題

ここで質疑応答。
「英国議会選挙が5月にあるが、英国の欧州連合離脱の可能性は」との問いに対し、バサール氏は、「英国の見通しは大変予測しにくい。欧州懐疑派も増えてはいるが、ビジネス面では残留したほうがいいという意見もあるので未知数だ。キャメロン首相がどのような文言で問題提起をするかが重要」と、欧州の最前線で活動される氏ならではの視点が披露されました。
また、「バルカン半島の国々の加盟を欧州連合は望んでいるか」との質問に対しては、「ポテンシャルのある加盟申請国を、アキ・コミノテール(欧州連合の遵守すべき法体系)のレベルにまで引き上げる必要がある。とくに税関・行政のレベルを引き上げるのには時間がかかる。また28以上増えていいのかという議論もある」との回答があり、すんなり加盟するということができない現状を語りました。
また、「欧州連合は欧州統合を理念としているが、将来はどうなるか?」との質問に対しては、「大変楽観的。一緒にならねばならないと加盟各国が感じているからこそ、欧州連合が機能している」とし、「欧州連合内の日本の評判については?」との質問には、「このところ、日本への関心は下がっていたのは事実。通商交渉のあったカナダや韓国のほうが関心は高かった。しかし、日本との通商交渉が始まるので、日本の動向にも注目が行くだろうし、一部の国には、日本のファンもいる」と語り、今後は日本の関心が高まるだろうとの見通しを示しました。

来場動機も目的も様々。でも皆「勉強になった」「来てよかった」

さて、質疑応答が終わって懇親会に。皆さん、ワインを片手に、おしゃべりが始まりました。旧交を温める方、初対面でも話が盛り上がっている方、会議室全体がおしゃべりの輪に包まれました。

そんな懇親会の合間をぬって、来場された方にインタビューをしました。

「経済の分析を仕事にしていますが、なかなか欧州の経済や政治状況についての現場の声は聞くことができないので、参加できてよかったです」と語る金田さん。

「経済の分析を仕事にしていますが、なかなか欧州の経済や政治状況についての現場の声は聞くことができないので、参加できてよかったです」と語る金田さん。

会社の上司の紹介で来場された、金田麻希さん。
金田さんは、勤務されている会社の上司の方がフランス商工会議所のウェブサイトでこの講演を知り、「行ってきてくれ」と背中を押されて来場されたそうです。

「証券会社のエコノミストとして経済を分析しており、ユーロ危機などで欧州経済にも関心がありましたので来ました。講演を聴いて、欧州連合のシステムがどのようなものか、ユーロ危機の可能性について大変クリアになりました。以前、イスラム国に関する講演でも参加させていただいており、親しみは持っておりました」と語っておられました。

つぎは、文房具メーカーで企画の仕事をされておられる髙橋稔さん。

「欧州連合の内部の話は大変興味深いものでした。今度は若年層にも関心のあるテーマに期待します」知的な雰囲気の髙橋さん

「欧州連合の内部の話は大変興味深いものでした。今度は若年層にも関心のあるテーマに期待します」知的な雰囲気の髙橋さん

「フランス商工会議所の理事の方に紹介されて来場しました。欧州のマクロ経済は、日本でもなかなか報道されないので、知ることができたらいいなと思い参加しました。もともと、ロンドンやオセアニアに留学などで住んでいて欧州には関心があったんです」とその動機を語っていただきました。
「私がロンドンにいたころも、欧州連合脱退の話題が出ていて、いつ脱退するんだという話もありましたので、今回の話は大変参考になりました」
今後の期待するテーマは?「テーマというより、マクロの話が多いと、20代、30代の人の実感もなく、テーマへの関心も薄れると思いますので、ヨーロッパでしたら若年層の失業率の問題とか、同世代の社会的、経済的な環境を知りたいですね。また、フランスにモノを売りたいという人に向けたテーマもぜひお願いします」
髙橋さん、貴重なご意見をありがとうございました。

最後に、前田篤穂さん。前田さんは、ジェトロで欧州課長の職に就かれています。

「大変面白い話が聞けました。今後のテーマとしては、日本に進出する仏企業の本音が聞けるようなものを期待します」と前田さん。

「大変面白い話が聞けました。今後のテーマとしては、日本に進出する仏企業の本音が聞けるようなものを期待します」と前田さん。

質疑応答では、英国の欧州連合脱退の可能性について質問されていました。
「英国は、自動車関連を中心に日系メーカーが数多く進出しています。各メーカーは、英国だけでなく、欧州全体を市場としてとらえていますから、今後英国が脱退するかどうかは関心を持っています。2年前には、瀬藤会長のアレンジで欧州債務危機についてのテーマで講演する機会を頂きました。今回も瀬藤会長のお勧めで参加させていただきました」と今回参加された経緯をお話していただきました。
「今回の講演は、欧州連合の内側におられる方の講演ということで、通常なかなか聞けない、貴重な機会となりました。参加者の皆様にとっても、大変面白かったのではないでしょうか。

会場を退出するぎりぎりの時間まで、盛り上がりをみせていた今回の講演。参加者の皆さんも満足そうにお帰りになりました。